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相続における配偶者居住権の評価額と節税
PexelsによるPixabayからの画像

 令和2年4月1日から新たに認められた配偶者居住権ですが、法務省によれば「夫婦の一方が亡くなった場合に、残された配偶者が、亡くなった人(被相続人)が所有していた建物に、亡くなるまで又は一定の期間、無償で居住することができる権利」とあります。相続において、配偶者居住権は利用すべきか、どうすれば取得できるのか、評価額はどう計算するのか、相続税の節税になるのか、などについて説明します。

1. 配偶者居住権の利用

 相続人が配偶者と子で、相続財産にマイホーム(不動産)と現預金などがあり、マイホームには配偶者のみが住んでいた場合には、引き続き配偶者が住み続けることが多いと思います。しかし、配偶者と子は相続財産の1/2づつを相続するのが基本ですから、配偶者が不動産を相続すると、現預金などのほとんどは子が相続することになり、配偶者の生活費が賄えないケースも生じます。

 そんなケースでは、マイホームを所有権と居住権に分け、所有権を子に相続させ、配偶者は相続税評価額よりも安い居住権を取得すれば、配偶者が相続できる現預金などを増やすことができます。なお、建物に居住権を設定すると、それに付随して、その建物が建つ土地に対して敷地利用権が発生します。

2. 配偶者居住権の取得

 配偶者居住権を取得するには、次の3つを満たす必要があります。
(1)残された配偶者が、被相続人の法律上の配偶者であること
(2)配偶者が、被相続人が所有していた(配偶者以外の者と共有していない)建物に、亡くなった時に居住していたこと
(3)①遺産分割協議、②遺贈(遺言による贈与)、③死因贈与(死因贈与契約書による贈与)、④家庭裁判所の調停・審判(遺産分割協議が合意に至らない場合)、のいずれかにより配偶者居住権を取得したこと

 相続においてもめ事が無ければ、相続人による遺産分割協議の結果を遺産分割協議書に記載するだけで配偶者居住権を取得できるので、配偶者が残りの人生を豊かに過ごせるように遺族間で考えればよいと思います。

 なお、配偶者居住権は、設定登記を行うことで第三者に対抗することができます。将来、建物の所有権が第三者に渡るなど、予期せぬことが起きるかもしれず、基本的に登記しておいた方が安心です。登記は、配偶者(登録権利者)と居住建物の所有者(登録義務者)との共同申請となります。配偶者居住権の設定登記ができるのは建物のみで、登記には登録免許税がかかります。

3. 配偶者居住権などの評価額

 配偶者居住権の評価額は、居住建物の相続税評価額に、

 1-(耐用年数-経過年数-存続年数)/(耐用年数-経過年数)×(存続年数に応じた法定利率による複利原価率)

を掛けた額になります。耐用年数には、減価償却資産の耐用年数を1.5倍した値を用い、経過年数は築年数、存続年数は配偶者の平均余命(「完全生命表」より)を用います。令和5年時点での法定利率は3%(3年ごとに見直し)で、存続年数(n)に応じた複利現価率(将来の価値から、利率で増える分を割り引いた現在の価値を求める率)は1/((1+0.03)のn乗)になります。居住建物の所有権の評価額は、居住建物の相続税評価額-配偶者居住権の評価額となります。

 居住権に伴う敷地利用権の評価額は、居住建物の敷地の用に供される土地の相続税評価額に、

 1-(存続年数に応じた法定利率による複利原価率)

を掛けた額になります。居住建物の敷地の用に供される土地の所有権の評価額は、居住建物の敷地の用に供される土地の相続税評価額-敷地利用権の評価額となります。

4. 評価額の計算例

 例えば、以下のようなケースの配偶者居住権と敷地利用権の評価額を求めると、

相続人:配偶者、子1人
相続税評価額:建物 2,000万円、土地 5,000万円、現預金等 7,000万円
耐用年数:木造建築の法定耐用年数 22年×1.5=33年
(鉄骨鉄筋コンクリート等の法定耐用年数 47年×1.5=71年)
経過年数:10年
存続年数:12年
法定利率:3%
複利原価率:0.701
(複利原価率は、「資産運用計算ツール」 の”現価を求める計算”で終価を1000として計算し、現価を1/1000すると求められます)

配偶者居住権の評価額=2,000万円×(1- (33年-10年-12年)/(33年-10年)×0.701)=1,329万円
敷地利用権の評価額=5,000万円×(1- 0.701)=1,495万円
居住建物の所有権の評価額=671万円
土地の所有権の評価額=3,505万円

 配偶者が不動産を相続すると、相続財産は配偶者が全て不動産、子が全て現預金となりますが、配偶者居住権を取得すると、居住権等2,824万円と現預金4,176万円となります。一方、子の相続財産は不動産の所有権4,176万円と現預金2,824万円とすることができます。

5. 相続税の節税

 配偶者居住権は、配偶者が亡くなると消滅します。子は1次相続で不動産を取得していますから、配偶者が亡くなった2次相続で不動産についての相続税は発生しません。逆に、配偶者が1次相続時に配偶者居住権を取得せずに、配偶者の相続税額軽減を適用して不動産を相続し、2次相続時に子が不動産を相続すると、その時点の相続税評価額で相続税が課せられることになります。ただし、その場合でも基礎控除を受けることができます。

 ここで注意が必要なのは、小規模宅地の特例(宅地の330m2以下の相続税評価額の80%が減額される)の適用可否です。まず、配偶者居住権は建物に関する権利なので適用外ですが、敷地利用権には敷地割合に応じて小規模宅地の特例が適用されます。一方、子がマイホームを所有している場合は、1次、2次相続のどちらにも小規模宅地の特例を適用できません。1次相続で適用されるのは子が同居している場合に限られ、2次相続で適用されるのは子が同居しているか、子が別居していてマイホームを所有していない場合(家なき子)などに限られます。

 どちらが節税になるかはケースバイケースであり、実際に相続税額を計算して比較してみるとよいでしょう。複雑なケースでは、税理士に相談することをお勧めします。

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「相続税の控除、評価額と節税」

(参考:「完全生命表」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/seimei/list54-57-02.html))
(出典:「配偶者居住権とは何ですか?」(法務局)(https://houmukyoku.moj.go.jp/maebashi/page000001_00235.pdf)、
「配偶者居住権等の評価」(国税庁)(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4666.htm)を元に、ライフプラン・シム作成)


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