役立つコラムに新しい記事「男女別年金受給額の分布」を投稿しました。 あくまでも事実を客観的に示したものですが、ご自分の将来の年金額やライフプランに目を向けるきっかけになれば幸いです。
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グラフは、上が厚生年金、下が国民年金の、令和5年度末時点での男女別年金受給額(月額)の分布を示しています。
厚生年金のグラフは、対象が厚生年金1号被保険者だった人で、民間企業に勤めて厚生年金保険に25年以上※加入し、年金を受給している人です。男性の総数が10,601,923人で、女性の総数が5,452,806人となっています。この中には、特別支給の厚生年金(報酬比例部分のみ)を受給している65歳未満の人も含まれます。なお、共済組合等にも加入したことのある人も含まれますが、共済組合等から支給される分は含んでいません。また、年金受給月額には、基礎年金部分も含まれます。
(※昭和27年4月1日以前生まれの人は20年以上。昭和27年4月2日以降生まれの人は段階的に引き上がり、昭和31年4月2日以降生まれの人は25年以上。年金改革により、受給年齢が段階的に引上げられたり、受給資格期間が短縮されたことから、旧制度で受給される人と新制度で受給される人を、同等の条件の下で分析するため。)
グラフから分かるように、男性の受給額が高く、分布のピークは17万円~18万円、平均は166,606円となっています。一方、女性の受給額の分布のピークは9万円~10万円で、平均は107,200円となっています。厚生年金の受給額は、加入期間内の標準報酬月額の平均値と加入月数に比例するため、男女での受給額の違いは、男女の賃金格差および勤続年数の差から生じていると考えられます。
なお、一般的には、夫婦のモデルケースでの厚生年金受給額が示されますが、モデルケースでは配偶者が扶養されている(国民年金3号被保険者の)条件となっており、グラフの厚生年金受給額に、配偶者の基礎年金受給額を加えた金額が、夫婦モデルケースでの年金受給額になります。
国民年金のグラフは、対象が国民年金被保険者だった人だけでなく、厚生年金(共済組合等を含む)が上乗せされている人の基礎年金部分や、国民年金3号被保険者だった人を含みます。ただし、前述の通り、年金制度に25年以上加入した人に限られます。男性の総数が14,434,673人、女性の総数が19,021,113人で、女性の方が多くなっています。これは、3号被保険者も含めて、就業率、就業形態の違いなどによるものと考えられます。
国民年金の受給額は、加入月数にのみ比例することから、男女での受給額の差は厚生年金ほど大きくありません。ピークは男女とも6万円~7万円で、平均は男性が59,965円、女性が55,777円となっています。
ご自分の年金受給額の概算を知りたい方は、記事「年金受給額の計算の仕方」 をご覧ください。
関連記事
「年金受給額の推移とインフレ下で低下する将来価値(将来の年金受給額)」
(出典:「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」(厚労省)(https://www.mhlw.go.jp/content/001359541.pdf)を元に、ライフプラン・シム作成)
記事「上場株式、投資信託等の損益通算(確定申告)」 では、上場株式や投資信託などの範囲内で損益通算や繰越控除ができることを説明しましたが、ここでは範囲を広げて、さまざまな所得の間での損益通算について取り上げます。
図は、国税庁の「所得税計算の仕組み(イメージ)」(出典を参照)を元に作成したものです。図の見方ですが、一番左が「収入」で、そこから「経費」や「控除」が差し引かれて、一番右の「税額」の計算に至る流れになっています。途中で、「損益通算」や「繰越控除」がされていますが、その対象範囲が一つのポイントになります。
ただし、本図には所得税計算の全てが記載されている訳ではありませんのでご注意ください。また、図に付けられた(注)、(※)については、末尾の説明文をご参照ください。また、大きな損失が生じた場合や、どこまで損益通算可能であるか分からない場合などは、税理士などにご相談ください。
損益通算
基本的に、同一の所得内での損益通算(内部通算)は可能ですが、不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得については、損失が同一所得内で相殺しきれずに残った場合に、その損失を一定の順序にしたがって他の所得から控除することができます。給与所得、一時所得、雑所得、配当所得については、計算上損失が生じることはありますが、損失を他の所得から控除することはできません。また、退職所得、利子所得については、計算上損失が生じません。
ただし、不動産所得の計算で生じた損失の金額のうち、別荘など生活に通常必要のない資産の貸し付けにかかるものや、土地を取得するための借入金の利子に相当する部分の金額などは、損失が生じなかったものとして計算されます。
また、ここでの譲渡所得は、不動産、上場株式等を除く、その他の資産の譲渡所得です。なお、趣味、娯楽、保養や鑑賞を目的とするなど、生活に通常必要でない資産や、1個または1組の価格が30万円を超える貴金属、書画、骨董などに関して生じた損失は、他の所得との損益通算はできません。
不動産の譲渡所得は分離課税(短期と長期で税率が異なる)が適用され、他の所得と損益通算できませんが、居住用財産の譲渡損失については、一定の要件を満たせば他の所得との損益通算ができ、相殺しきれない損失は翌年以降3年間繰り越すことができます。
上場株式等の譲渡損失は、申告分離課税を選択した配当所得、特定公社債等の利子所得と損益通算することができます。また、相殺しきれない損失は、翌年以降3年間繰り越すことができます。
譲渡所得の詳細については、記事「資産を売却した時の税金」 もお読みください。
純損失・雑損失の繰越控除
災害、盗難、横領などにより損害を受けた場合に、損失から一定の金額を差し引いた金額を、所得から控除することができます。これを雑損控除と言い、雑損控除で相殺しきれない損失があった場合は、翌年以降3年間繰り越すことができます。
確定申告の青色申告者(不動産、事業、山林の所得者)については、事業活動等で発生した純損失が、前述の損益通算で相殺しきれない場合、翌年以降3年間繰り越すことができます。
先物取引にかかる雑所得等
商品先物取引や金融商品先物取引などがあり、後者にはFX取引も含まれます(暗号資産の取引は含まれません)。先物取引で差金等を決済した場合に、その事業所得、譲渡所得、雑所得(これらを「先物取引にかかる雑所得等」と言う)は、他の所得と区分して、所得税15%(住民税5%)の税率による申告分離課税となります。
これらに損失が生じて、この所得区分内で相殺しきれない場合は、他の所得との損益通算はできませんが、翌年以降3年間繰り越すことができできます。繰り越した損失は、繰り越された年の同じ先物取引にかかる雑所得等から、決められた手順で控除することができます。
《図中の(注)(※)の説明》
(注1)主な収入を揚げており、この他に「先物取引にかかる雑所得等」などがある。これらは他の雑所得と異なり、繰越控除が可能であったり、比例税率が適用されるなどの特別措置がある。また、各種所得の課税方式についても、図の課税方法のほか、源泉分離課税や申告分離課税が適用される場合がある。
(注2)各種所得の金額および課税所得の金額の計算上、一定の特別控除額等が適用される場合がある。
(注3)基準所得金額(下記※3の確定申告不要制度を適用しないで計算した合計所得金額から、損失の繰越控除および土地等の譲渡所得の特別控除による控除をした後の金額)から3.3億円を控除した金額に22.5%の税率を乗じた金額が納めるべき税額を超える場合には、その超える金額に相当する所得税を課す(令和7年分以後の所得税について適用)。
(※1)「その他の資産の譲渡収入」は、土地、建物および株式等以外の資産を譲渡した場合。50万円の特別控除は、所有期間が5年以内の短期譲渡所得の譲渡益から先に控除し、控除しきれない場合は長期控除所得の譲渡益から控除する。短期譲渡所得については、合計所得金額を求める計算において1/2されない。
(※2)勤続年数5年以下の者が支払いを受ける退職金(法人役員等以外の者が支払いを受ける退職金については、退職所得控除を控除した残額のうち300万円を超える部分に限る。)については、2分の1課税を適用しない。
(※3)「配当所得」、「特定公社債等の利子所得」および「上場株式等の譲渡所得」については、一定の要件の下、源泉徴収のみで納税を完了することができる(確定申告不要)。「上場株式等の配当所得」については、申告する際、総合課税(配当控除適用可)と申告分離課税のいずれかを選択可能。「上場株式等の譲渡損失」と「上場株式等の配当所得」および「特定公社債等の利子所得」との間は損益通算可能。
(※4)23歳未満の扶養親族や特別障害者である扶養親族等を有する者等については、平成30年度改正において行われた給与所得控除額が頭打ちとなる給与収入の850万円超への引き下げによる負担増が生じないよう、所得金額調整控除により調整。給与・年金の両方を有する者については、平成30年度改正において行われた給与所得控除・公的年金等控除から基礎控除への振替による負担増が生じないよう所得金額調整控除により調整。
(※5)これらの所得に係る損失額は他の所得金額と通算することができない。
(出典:「所得税計算の仕組む(イメージ)」(国税庁)(https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/income/024.pdf)を元に、ライフプラン・シム作成)
話題になっている”年収の壁”(記事「配偶者の年収の壁」 をご参照)のうち、主たる収入者(以降、納税者)側の手取り額を左右する”配偶者控除”と”扶養控除”について、現状の税制をご存知でしょうか。今後、見直された場合に、どのような影響を受けるかを知るためにも、ここで整理しておきましょう。
ここでの控除は、納税者と同一生計の親族の状況によって、納税者の課税所得から一定額を差し引けることを指し、いわゆる”所得控除”と呼ばれるものです。特に、親族の状況によって控除が受けられることから、”人的控除”とも呼ばれています。人的控除には、この他に”障害者控除”、”寡婦控除”、”ひとり親控除”、”勤労学生控除”があります。
1.配偶者控除
配偶者控除は、所得税が課税されない(非課税の)範囲で配偶者が働く場合に、納税者の所得から一定額が控除される仕組みです。具体的には、配偶者の所得が基礎控除額と同額の48万円以下の場合に適用され、給与収入に換算すると、48万円に給与所得控除の55万円を加えた103万円以下ということになります。
一方、控除される納税者側にも所得制限があって、所得900万円以下となっています。給与収入に換算すると、給与所得控除の195万円を加えた1,095万円となります。この両方の所得制限を満たした場合の配偶者控除の額は、所得税で38万円、住民税で33万円となり、控除の額が異なります。
なお、配偶者控除による節税額は、納税者の給与収入が500万円~650万円程度の(所得税率に10%が適用される)場合に、所得税では38万円×10%=3.8万円、住民税では(税率10%固定で)33万円×10%=3.3万円となり、合計で7.1万円となります。
(注)所得金額調整控除(記事「子どもがいる給与収入850万円超の人、給与と年金の所得がある人の所得金額調整控除」 をご参照)の適用がある場合は、納税者の給与収入換算額に15万円を加算してください。
2.配偶者特別控除
配偶者と納税者の所得が、それぞれ48万円と900万円を超えても、一定の範囲であれば、配偶者特別控除を受けることができます。配偶者特別控除の上限は、配偶者の所得が133万円、給与収入換算で201.6万円、納税者の所得が1,000万円、給与収入換算で1,195万円となっており、これを超えると控除は受けられません。その中間は、控除額が段階的に減少します。具体的な所得額と配偶者特別控除額の関係は、グラフをご参照ください。
なお、住民税についても所得制限は所得税と同じですが、控除額に上限があり、納税者の所得により、所得900万円以下では最大33万円、所得950万円以下では最大22万円、所得1,000万円以下では最大11万円に制限されます。
グラフから分かるように、配偶者控除と配偶者特別控除をあわせて、配偶者の給与収入が150万円(所得で95万円)を超えると、配偶者控除額が減ることから、一般に”150万円の壁”と呼ばれて意識されます。
3.扶養控除
扶養控除は、納税者の子どもや親などの親族が、年齢や所得などの一定の要件を満たす場合に、納税者の課税所得から一定額が控除される仕組みです。扶養控除の対象である扶養親族とは、その年の12月31日時点(納税者が死亡または出国した場合は、それぞれその時点)において、次の4つの要件を満たす親族です。
①配偶者以外の親族(6親等内の血族もしくは3親等内の姻族)、または里子(さとご)や市町村長から養護の委託を受けた老人であること。
②納税者と生計を一にすること。
③年間の合計所得が48万円以下であること。
④青色申告者の事業専従者としてその年に一度も給与の支払いを受けていない、または白色申告者の事業専従者でないこと。
②については、必ずしも同居を要件としません。生活費や教育費を常に送金していれば、別居していても同一生計と見なせます。
③の所得については、配偶者控除と同様に、給与収入に換算すると103万円以下ということになります。特に学生がアルバイトなどをする場合に”103万円の壁”として意識されます。
以降は、扶養親族の年齢による区分を示します。全体像はグラフをご参照ください。
(1)一般の扶養控除
16歳以上の扶養親族が対象で、所得税の控除額は38万円、住民税の控除額は33万円です。ただし、後に述べる特定扶養親族、老人扶養親族については、これらの控除額に上乗せがあり、30歳以上70歳未満の扶養親族については、居住要件があります。
16歳未満については、一定額を支給する児童手当制度の導入にともない、扶養控除の対象外となりました。令和6年からの児童手当の改正により、児童手当が18歳まで延長されたことから、今後、18歳までの扶養控除が引き下げられる可能性があります。
(2)特定扶養控除
19歳以上23歳未満(大学生相当)の扶養親族が対象で、所得税の控除額は63万円(一般の扶養控除額の38万円に25万円の上乗せ)で、住民税の控除額は45万円(一般の扶養控除額の33万円の12万円の上乗せ)です。
配偶者控除と同様に計算すると、特定扶養控除による節税効果は、納税者の給与収入が500万円~650万円程度の(所得税率に10%が適用される)場合に、所得税では63万円×10%=6.3万円、住民税では(税率10%固定で)45万円×10%=4.5万円となり、合計で10.8万円となります。
(3)30歳以上70歳未満
30歳以上70歳未満の扶養親族が、国内に居住する(国内に住所を有するか、または現在まで引き続き1年以上居住する場所を有する)場合には控除対象となりますが、国内に居住しない場合(非居住者という)には、次の3つの要件のいずれかを満たす必要があります(税制改革により、令和5年分以降から要件が厳格化。)
イ)留学により非居住者になった人。
ロ)障害者である人。
ハ)納税者からその年の生活費または教育費の支払いを38万円以上受けている人。
(4)老人扶養控除
70歳以上の扶養親族には老人扶養控除が適用され、所得税の控除額は48万円(一般の扶養控除に10万円の上乗せ)、住民税の控除額は38万円(一般の扶養控除に5万円の上乗せ)です。
なお、老人扶養親族のうち、納税者または配偶者の直系尊属(父母、祖父母など)で、同居している場合は同居老親等に該当し、所得税の控除額は58万円(老人扶養控除にさらに10万円の上乗せ)、住民税の控除額は45万円(老人扶養控除にさらに7万円上乗せ)になります。
4.控除の申請
給与収入者において、配偶者、扶養親族に異動があった場合には、すみやかに、給与支払者への届け出が必要になります。また、非居住者である親族の扶養の申告を行う場合は年末調整にて、その親族への送金関係の書類など、必要な書類を添付の上、給与支払者への届け出が必要になります。詳しくは、給与支払者にご確認ください。
また、年末調整後に異動があった場合は、一定期間内であれば、給与支払者への届け出により、年末調整の修正を行うことができます。その期間を過ぎてしまった場合は、確定申告により控除分の税金を還付することもできます。関連記事「所得税の還付申告」 もご参照ください。
(出典:「家族と税」(国税庁)(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/02_2.htm)を元にライフプラン・シム作成)
NISA口座は非課税であるから、相続した後も引き継がれて非課税になると思われがちですが、そのようにはなりませんので、注意すべき点など詳しく見ておきましょう。
相続時の手続き
NISA口座を開設していた方が亡くなった場合、亡くなった方の財産を相続する人(相続人)がすみやかに、”非課税口座開設者死亡届出書”を、そのNISA口座が開設されている金融機関に提出しなければなりません。金融機関の口座は、口座の開設者が亡くなった場合、その口座は閉じられるということになります。
配当等にかかる税金
NISA口座を開設していた方が亡くなった日以降に、そのNISA口座にある上場株式、ETF、投資信託など(以降、上場株式等)から配当等が支払われる場合、その配当等は非課税扱いにならず、所得税、住民税が課税されます。死亡届出書の提出が遅れた場合でも、亡くなった日まで遡って課税されます。
NISA口座からの払い出し
非課税口座開設者死亡届出書を提出すると、NISA口座にある上場株式等は、NISA口座から払い出されます。NISA口座を開設した方が亡くなった日の終値で売却したものと見なされます。なお、その日までの含み益については非課税扱いになりますが、含み損についてはなかったものと見なされます。
NISA口座での損益(この場合は含み益、含み損)は、他の一般口座や特定口座と損益通算や繰越控除をすることはできないため、亡くなった方の準確定申告をする際に注意が必要です。
相続人の口座への移管
亡くなった方のNISA口座から払い出された上場株式等は、亡くなった日の終値で相続人が取得したものとして、そのNISA口座と同じ金融機関にある(無い場合は新たに開設した)相続人の一般口座や特定口座に移管されます。相続人のNISA口座には移管されません。
また、亡くなった方の一般口座や特定口座にある上場株式等は、亡くなった方の取得時期を相続人が引き継ぎますが、NISA口座の場合は亡くなった日が相続人の取得日になります。この点は、NISA口座と、一般口座や特定口座との大きな違いになりますので、注意が必要です。
相続税
上場株式等の金融資産を相続する場合は、他の相続資産とあせて相続税の対象となります。NISA口座にある上場株式等を相続する場合も同様であり、相続税の非課税措置はありません。なお、上場株式等の相続税評価額は、死亡した日の終値に加えて、死亡した日を含む月の毎日の終値の平均値と、その前月、前々月の毎日の終値の平均値の、あわせて4つの価額のうち最も低い価額となります。
売却時にかかる税金
亡くなった方のNISA口座にあった上場株式等を、相続後に売却する場合には、前述の取得日(亡くなった日)の終値が取得価額となり、譲渡損益が計算されますので注意が必要です。特に、相続した時点で含み損がある場合は、相続後の値上がりによって得た売却益に対して所得税、住民税が課税されるため、一般口座や特定口座で相続した場合よりも、多く課税されることになります。相続される側の方(被相続人)も、NISA口座で含み損が出ている上場株式等を放置しないよう気をつけましょう。
なお、記事「相続財産の売却益にかかる税金と特例」 にあるように、相続税を納めた相続人が相続してから3年10ヶ月以内に売却した場合は、売却益の計算において、その売却財産分に相当する相続税額を取得費として計上することができる特例があります。
(出典:「NISA及びつみたてNISAの手続きに関するQ&A」(国税庁)(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/nisa_qa01.pdf)を元にライフプラン・シム作成)
記事「相続税の控除、評価額と節税」 で、相続税の概要について説明していますが、相続財産が一定以上ある相続人は、申告して相続税を納めなければなりません。相続した財産が、不動産や有価証券であった場合には、それらの一部または全部を売却して現金化し、納税しなければならないケースもあるでしょう。その際に注意しなければならないことは、売却益に対して所得税・住民税がかかることです。どういうことか、詳しく見て行きましょう。
まず、資産を売却して利益が出た場合には、認められた経費などを差し引いて残った譲渡所得(売却益)に対して、所得税・住民税がかかることを記事「資産を売却した時の税金」 で説明しています。計算式にすると以下の通りです。
譲渡所得 = 収入金額 - (取得費 + 譲渡費用 + 特別控除)
ここで、相続財産の取得時期は、相続人が財産を相続した時ではなく、被相続人(亡くなった人)がその財産を取得した時期を、相続人が引き継ぐということです。したがって、取得費も被相続人が財産を取得した時に支払った費用ということになります。ただし、相続人が相続するにあたって支払った登記費用などは、取得費に加算することができます。一方で、相続財産が建物などの場合には、取得費から減価償却費(時の経過によって減少した価値)相当額を差し引かなければなりません。なお、当時の取得費が分からない場合には、売却額の5%を概算取得費とすることができますが、その場合は、譲渡所得が実際よりも大きく計算される可能性があります。
また、特別控除は、被相続人が居住していた土地・家屋(空き家)を売却する際に、最大3,000万円が控除できる特例(記事「空き家の保有、売却にかかる税金」 を参照)などです。そして、このような特別控除に該当しない場合でも、相続財産を売却した際に、その財産にかかった相続税額を、譲渡所得の取得費に含めることができる特例があります。これは、いわば相続税と、譲渡所得にかかる所得税・住民税の二重課税を軽減する特例です。
この特例を適用するには、以下の要件を満たす必要があります。
①相続や遺贈により財産を取得した者であること。
②その財産を取得した人に相続税が課税されていること。
③その財産を、相続開始のあった日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで(すなわち、3年10ヶ月以内)に譲渡していること。
取得費に加算できる相続税額=その者の相続税額×譲渡した相続財産の評価額/その者の取得財産の価額(注)
(注)取得財産の価額には、生前贈与加算分を含み、債務控除分は含まない。すなわち、債務や葬儀費用などの控除前の価額。
なお、譲渡した相続財産が複数ある場合は、財産ごとに譲渡所得を計算します。そして、確定申告する際に、”相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書”、ならびに、”譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】”や、”株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書”を提出します。
以上のように、相続税を納税して、3年以内に相続財産を売却した場合には、売却した財産に相当する相続税額を譲渡所得から差し引くことができ、所得税・住民税の節税になるという特例です。売却する相続財産が空き家の場合、前述の「空き家を売ったときの特例」とは選択適用になりますが、いずれにしても相続財産を売却処分したい場合は、売却に向けて早めに動き出しましょう。
(出典:「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」(国税庁)(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3267.htm)を元にライフプラン・シム作成)
記事「遺族年金」 で、遺族年金の概要を説明していますが、遺族年金が受け取れるかどうかは、亡くなった方の公的年金への加入状況(受給要件)と、受け取れる遺族の範囲(受給対象者)であるかに依存します。特に、比較的手厚い給付が受けられる遺族厚生年金は、万一に備えて加入する生命保険の保険金額にも大きく影響しますので、遺族厚生年金の受給要件と受給対象者について、ここで確認しておきましょう。
遺族厚生年金の受給要件
次の①~⑤のいずれかの要件を満たしている場合に、遺族(受給対象者)に遺族厚生年金が支給されます。
①厚生年金保険の被保険者である間に死亡したとき(会社員や公務員で、厚生年金保険に加入している方が死亡したとき)
②厚生年金保険の被保険者である間に初診日がある病気やけがが原因で、初診日から5年以内に死亡したとき
③1級・2級の障害厚生(共済)年金を受け取っている方が死亡したとき
④老齢厚生年金の受給権者であった方が死亡したとき(老齢厚生年金を請求して確定した方、老齢厚生年金を受け取っている方が死亡したとき)
⑤老齢厚生年金の受給資格を満たした方が死亡したとき(老齢厚生年金を受け取ることができる加入期間の要件を満たしていて、まだ老齢厚生年金を請求していない方が死亡したとき)
ここで、①②については、死亡日の前日において、厚生年金の保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が、被保険者期間の3分の2以上あることが必要。(ただし、死亡日が令和8年3月末までのときは、死亡した方が65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納が無ければよいことになっています。)
④⑤については、保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間(注1)を合算した期間が25年以上ある方に限られます。
(注1)合算対象期間(カラ期間)・・・平成3(1991)年3月以前に、学生であるため国民年金に任意加入しなかった期間や、昭和36(1961)年4月以降、海外に住んでいた期間など。
遺族厚生年金の受給対象者
死亡した方に生計を維持されていた(生計を同じくし、前年の収入が850万円未満もしくは所得が655万5千円未満である)、以下の遺族のうち、最も優先順位の高い方が受け取ることができます。なお、遺族基礎年金を受給できる遺族の方は、あわせて受給できます。
①子のある配偶者(※1)
②子(18歳になった年度の3月31日までにある方、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある方で、婚姻をしていない方)(※2)
③子のない配偶者(※3)
④父母(※4)
⑤孫(子の年齢条件に同じ)
⑥祖父母(※4)
優先順位は、①②>③>④>⑤>⑥。
(※1)子のある夫は、55歳以上である方に限り受給できます。
(※2)子のある妻、または子のある55歳以上の夫が遺族厚生年金を受け取っている間は、子には遺族厚生年金は支給されません。子のある55歳未満の夫の場合は、夫に遺族基礎年金が、子に遺族厚生年金が支給されます。
(※3)子のない30歳未満の妻は、5年間のみ受給できます。また、子のない夫は、55歳以上である方に限り受給できますが、受給開始は60歳からとなります(ただし、遺族基礎年金をあわせて受給できる場合に限り、55歳から60歳の間であっても遺族厚生年金を受給できます)。
(※4)父母または祖父母は、55歳以上である方に限り受給できますが、受給開始は60歳からとなります。
なお、遺族厚生年金を受け取れる権利(受給権)は、次の場合に失効し、支給されなくなります。婚姻したとき、子が養子となったとき(祖父母等を除く)、死亡した者と離縁したとき、受給者が死亡したとき、受給者が子や孫の場合に年齢要件を満たさなくなったとき、子のない30歳未満の妻が受給開始して5年が経過したとき、遺族基礎年金も受給していた妻が30歳未満で(子が生計を同じくしなくなったなどにより)遺族基礎年金の受給権を失ってから5年が経過したとき。
受給要件の男女差と見直しの動き
現行制度では、夫が主たる生計者で、妻は夫に生計を維持され、死別した妻が就労して生計を立てるのは困難であるとの社会経済状況のもと、受給要件に男女差が設けられました。
こうしたことから、遺族厚生年金の受給に最も制限を受けるのは「55歳未満の夫」で、遺族厚生年金は受給できません。ただし、その場合でも、子(注2)がいる場合には、子が遺族厚生年金を受給できます。次に「子のない30歳未満の妻」は、5年間のみの受給に制限されます。その次は、子のない55歳以上の夫、父母、祖父母で、受給開始が60歳からに制限されます。
また、夫が死亡したときに子(注2)のない妻の年齢、もしくは子(注2)のある妻の遺族基礎年金の受給が終了した年齢が、40歳以上65歳未満の場合に、遺族厚生年金に上乗せされる「中高齢寡婦加算」の制度があります。
(注2)18歳になった年度の3月31日までにある方、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある方で、婚姻をしていない方。
このような現行制度での受給要件に対して、女性の就労状況の変化、共働き世帯の増加などにより、特に子のない夫婦で差があるのは不公平であるとの意見から、見直しの気運が高まっています。
これにより、子のない妻が無期受給となる年齢の引上げ(30歳→60歳)や、子のない夫(60歳未満)の有期受給の設定、中高齢寡婦加算の廃止、生計維持の収入要件の廃止、有期受給額の加算などが検討されており、今後のさらなる議論に注目が集まっています。ただし、改正により、現行制度よりも受給額が大幅に減るケースもあることから、長い時間をかけて段階的に移行することが検討されています。
(出典:「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」(日本年金機構)(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/izokunenkin/jukyu-yoken/20150424.html)、
「遺族年金制度の見直しについて」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001281516.pdf)を元にライフプラン・シム作成)
医療保険には、保険料が掛け捨てタイプのものと、死亡保障がついていて、解約時に解約返戻金が戻ってくるタイプのものがあります。昭和の頃に加入した医療保険の中には、予定利率が高く、保険料がお得で、解約返戻金の返戻率も高い、いわゆるお宝保険があります。30~40年も保険料を支払っていると、返戻率が70~80%近くにもなるケースもありますが、そこをピークにその後は返戻率が下がってくるのが一般的です。
古い医療保険の保障内容は、手術給付金や入院給付金がほとんどで、放射線治療や抗がん剤治療などを通院で受けることが増えている現在の治療方法では、給付金が出ないケースもあります。そこで、古い医療保険(主契約)に通院給付金や放射線治療給付金の特約を付加するなどの保険も現れていますが、主契約の保険料と比較して、特約の保険料は高くなりがちです。
そんな場合には、古い医療保険の解約返戻金を確認してみてください。返戻率が高ければ、解約することで思わぬ一時金が得られる可能性があります。ただし、既に給付金を受け取っている場合には、解約返戻金の額が減るケースもありますのでよく確認してください。
なお、解約返戻金は一時所得として扱われますが、一般的に医療保険の解約返戻金は支払保険料を上回ることがなく、そもそも利益は生じませんので所得税はかかりません。それどころか、支払保険料が解約返戻金を上回った分の損失は、同じ年に他の満期保険金などがある場合、その一時所得との内部通算が可能ですので、満期保険金にかかる税金を節税できる可能性があります。ただし、掛け捨て保険のような収入がないものは内部通算できませんので注意してください。(2025/01/07 追記)
そして、今よりも保障を手厚くしたいのであれば、お宝保険に特約を付ける場合と、お宝保険を解約して得た返戻金も活用して、新しい医療保険に加入する場合の、保障範囲と保険料の支払総額を比較してみるとよいでしょう。逆に、今より保険料を抑えたいのであれば、お宝保険の全部または一部を解約して、解約返戻金を給付金の前払いだと思って、もしもの場合に備えてもよいでしょう。ただし、全く医療保険に加入していないと、万一の時に資産を大きく取り崩さなければならないリスクがあることは言うまでもありません。
なお、医療保険への加入や特約の付加には一般的に告知が必要であり、病歴や健康状態によっては加入できないことや、加入できても保険料が通常より高く設定されることがありますので、注意が必要です。また、がん保険には90日程度の免責期間が設けられていることが多く、保険を解約して新しい保険に加入する場合は、保障の空白期間に注意して解約するタイミングを決めると安心です。
いずれにしても、あわてて解約したりせずに、加入している保険の保障範囲や保険金額が不足しているのか、重複していたり過大なのか、保険料の支払いを減らしたいのか、まだ余裕があるのかなど、どうしたいのかをはっきりさせた上で、新しい保険に加入できるのか、保険料はどうなるのか、空白期間はないかを保険代理店などに相談して検討してください。
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「満期保険金、解約返戻金の所得控除」
被雇用者が退職後に、それまで加入していた健康保険(全国健康保険協会または健康保険組合、共済組合)に、最大2年間継続して加入することができる任意継続があります。これまで、任意継続した場合には、再就職により他の健康保険に加入するケース以外では、2年が満了するまで途中で脱退することができませんでした。このため、任意継続での2年間の保険料と、国民健康保険の2年間の保険料を比較するなどして、安い保険料になる医療保険を選択していたことと思います。
しかし、法改正により、2022年1月から任意継続における2年縛りが廃止され、任意継続の資格喪失の要件に、「任意継続被保険者でなくなることを希望する旨を申し出たとき」が追加されました。これによって、任意継続に加入後、2年経過しないうちに、前年の所得が減ったタイミングなどで国民健康保険に加入することができるようになりました。
被雇用者が退職後に選択できる医療保険は、
①再就職先の健康保険への加入、
②退職時の健康保険の任意継続、
③国民健康保険への加入、
④家族の健康保険の被扶養者になる、
の4つになります。
再就職先の健康保険に加入できるかどうかは、法人の事業所や、従業員5人以上の個人事業所(農林魚業、サービス業等を除く)でフルタイム、もしくはフルタイムの3/4以上働く方か、パート、アルバイトや非常勤でも従業員101人以上(令和6年10月からは51人以上)、週20時間以上勤務、月額88,000円以上の収入、2ヶ月以上の勤務継続見込み、学生ではないことなどが条件となります。(2024/7/3 下線部追記)
したがって、短時間のパート、アルバイトや、非常勤などの場合は、新たな健康保険に加入できない可能性があります。その場合は、②③④のどれかを選択することになりますが、他社で働いていても、②の任意継続を選択することも可能です。なお、新たな健康保険に加入した場合には、新たな標準報酬月額に応じて保険料も見直されます。
任意継続の場合の保険料は、退職時の標準報酬月額と、全国健康保険協会(協会けんぽ)の場合は標準報酬月額30万円、健康保険組合、共済組合の場合は組合毎の平均標準報酬月額(一般的には40万円前後)の、どちらか少ない方を基に算出された保険料の全額負担(雇用者との折半ではない)になりますが、賞与にかかる保険料負担はありません。ただし、協会けんぽの場合でも、都道府県によって保険料に差が生じます。
例えば、令和6年度の東京都協会けんぽの場合では、標準報酬月額30万円(22等級)の保険料は月額34,740円、年額416,880円です。退職時の標準報酬月額が30万円以上あっても、扶養家族がいても、保険料がこれ以上に増えることはありません。
一方、国民健康保険の保険料には均等割分と所得割分があり、後者は前年の所得から住民税の基礎控除である43万円を差し引いた保険料算定基礎を基に計算されますが、自治体により保険料に差が生じます。例えば東京都世田谷区に在住で、賞与を含む前年の年収が360万円の場合、妻は無収入でも均等割分が加算され、令和6年度の国民健康保険の世帯保険料は、40歳~64歳のケースで442,585円になります。
なお、介護分(40歳~64歳の場合)を合わせた保険料の世帯上限額は全ての自治体で同一で、令和6年度では、世帯年収が1,160万円以上の場合に保険料の世帯上限である106万円に達します。したがって、高所得者だった方は、任意継続を経て、年間所得が少なくなった翌年度から国民健康保険に加入するのが、トータルの保険料を少なくできるでしょう。
最後に、家族の健康保険の被扶養者になる要件を満たすのであれば、保険料を無料にすることができます。被扶養者の要件は主に収入ですが、前年の年収ではなく、これからの1年間の見込み収入で判定されます。概ね、被扶養者が60歳未満の場合は収入130万円未満、60歳以上もしくは障害者の場合は収入180万円未満であることが必要です(詳しくは、「健康保険の被扶養者(扶養家族)の要件」 をご参照ください)。したがって、年金を受給し始めたなどで、その後の収入が被扶養者の要件を満たさないことが分かった時点で、被扶養者から外れなければなりません。
いずれにしても、保険料をよく比較することが大事ですので、勤務先の健康保険で任意継続した場合の保険料、お住まいの自治体の国民健康保険の保険料などを計算してみてください。保険料にあまり差が無ければ、サービスが手厚い健康保険を選んでもよいでしょう。
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