年末年始の休業のお知らせ。12月28日(日)~1月5日(月)まで年末年始の休業とさせていただきます。この間のお問い合わせ、ならびに診断・相談への対応はできませんが、ご了承のほどお願いいたします。
年末年始の休業のお知らせ。12月28日(日)~1月5日(月)まで年末年始の休業とさせていただきます。この間のお問い合わせ、ならびに診断・相談への対応はできませんが、ご了承のほどお願いいたします。
ライフプランの検討に役立つ金融知識や、シミュレーションの結果を見て、どこを改善したらよいかわからない、そんな時のヒント になる有益な情報をご提供します。年金、保険、投資、税金、ローンなど、幅広い情報をお届けします。
[注]タイトルに含まれるキーワード(語句)を1語入力してください。
8件/全129件
老齢厚生年金を受け取りながら厚生年金に加入して働く場合、年金月額と給与月額の合計が一定の基準額を超えると、年金の一部または全額が支給停止される在職老齢年金制度があります。一方、年金には受給開始時期を66歳以降に遅らせることで、年金額を増額することができる繰下げ受給制度があります。
在職老齢年金制度によって老齢厚生年金が減額されるのであれば、働いているうちは年金を受給せずに、退職後(例えば70歳)から年金を受給開始して、年金受給額を増やしたいと考えるのは自然なことです。しかし、増やしたはずの年金が思ったほど増えなかった、ということになりかねませんので、後悔しないように制度をよく理解しておくことが必要です。
在職老齢年金制度
老齢厚生年金を受け取りながら働く場合、年金基本月額(※1)と給与の総報酬月額相当額(※2)の合計が、51万円(令和7年度の基準額で、令和8年度には62万円に引上げ)を超えると、超えた金額の半分が年金基本月額から減額される制度です。なお、老齢基礎年金(国民年金)は在職老齢年金制度の対象外で、支給停止になることはありません。
在職老齢年金月額=年金基本月額―(年金基本月額+総報酬月額相当額―基準額)÷2
この式から、総報酬月額相当額が(基準額+年金基本月額)を超えると、在職老齢年金月額は全額支給停止となります。また、老齢厚生年金を受給しながら厚生年金に加入して働いている65歳以上70歳未満の方は、厚生年金保険料を納めているため、毎年10月からの年金額が見直されます。これを在職定時改定といいます。したがって、在職老齢年金月額も、年金額と給与額双方の変動の影響を受けることになります。
(※1)年金基本月額:加給年金額を除いた老齢厚生年金の月額
(※2)総報酬月額相当額:その月の標準報酬月額+(その月以前1年間の標準賞与額)÷12
年金の繰下げ受給制度
老齢年金は65歳から受給できますが、65歳で受け取らずに、66歳以降75歳までの間に繰下げて(66歳未満までの繰下げはできない)、受け取る年金額を増やすことができる制度です。
1ヶ月繰下げるごとに年金額が0.7%増加し、75歳まで繰下げた場合には84%の増加となり、増加率は一生変わりません。また、老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰下げを選択することができます。なお、特別支給の厚生年金には繰下げ制度はありません。
ただし、年金の繰下げ制度には注意点が多々あります。厚生年金の加給年金額や振替加算額は増額の対象にならず、繰下げ待期期間中(年金を受け取っていない期間中)は加給年金も振替加算も受け取れません。また、他の公的年金(遺族年金など)の受給権を得た場合には、その時期が66歳未満の場合は繰下げることはできず、66歳以降の場合はその時点で増加率が固定され、以後年金請求を遅らせても増額されない(※3)、などです。
(※3)このうち、遺族厚生年金については、令和7年の法改正により、令和10年4月1日以降次のように改善されます。
・老齢厚生年金は、遺族厚生年金の請求を行っていない場合に限り、繰下げ請求することができるようになります。
・老齢基礎年金は、遺族厚生年金の請求の有無にかかわらず、繰下げ請求することができるようになります。
背景として、老齢厚生年金額が遺族厚生年金額を上回ると遺族厚生年金を受け取れないにもかかわらず、遺族厚生年金の受給権を得た時点で老齢厚生年金の繰下げができないという制限があり、これを改善するものです。
在職老齢年金制度と年金繰下げ受給制度
65歳以降に厚生年金に加入して働いていた場合で、在職老齢年金制度により支給停止になった老齢厚生年金額は、繰下げをして待期期間により年金を受け取っていなくても、繰下げによる増額の対象外となります。上の図に、詳細を図示していますのでご参照ください。在職老齢年金制度の方が繰下げ受給制度よりも適用される優先度が高いということになります。
例えば、在職老齢年金制度で老齢厚生年金が全額支給停止になる場合、繰下げても増額されません。増額になると期待していると大変がっかりすることになります。一部支給停止の場合は、繰下げにより増額になりますが、支給停止の割合に応じて増加率が下がります。それによって、支給停止されない場合と比較して損益分岐年齢が高くなりますので、注意してください。
関連記事
「在職老齢年金の基準額の引上げ、加給年金などの子の加算額の引上げ」
(出典:「在職老齢年金の計算方法」(日本年金機構)(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/roureinenkin/zaishoku/20150401-01.html)、
「年金の繰下げ受給」(日本年金機構)(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/roureinenkin/kuriage-kurisage/20140421-02.html)を元にライフプラン・シム作成)
出産・育児を支援する給付金は、出産育児一時金や出産手当金などの健康保険からの支給で始まりましたが、その後、女性が産後も働き続けやすい環境整備のため、雇用保険から育児休業給付金が創設され、少子化対策の強化のために、この令和7年からさらなる給付金が創設されています。
この記事では、妊娠期から、子が2歳までの期間に支給される給付金を総括しています。
出産・子育て応援給付金(ギフト)
妊娠期からの相談支援と経済的支援を組み合わせて実施する施策で、このうち経済的支援は、妊婦のための支援給付(子ども・子育て支援法)として令和7年度から法制化されています。
自治体は、妊婦であることの認定後に5万円を支給し(出産応援ギフト)、その後、妊娠しているこどもの人数の届け出を受けた後に、5万円×子どもの人数を支給します(子育て応援ギフト)。なお、独自に給付金を上乗せしている自治体も少なくありません。
(出典:「妊産婦への伴走型相談支援と経済的支援の一体的実施」(こども家庭庁)(https://www.cfa.go.jp/policies/shussan-kosodate)を元にライフプラン・シム作成)
産前・産後休業と出産手当金
働く女性が出産する場合は労働基準法が適用され、出産予定日の6週間前(双子以上の場合は14週間前)から、雇用主に請求すれば産前休業を取得することができます。また、出産の翌日から8週間は就業することができません(産後休業)。ただし、産後6週間が経過後に本人が請求し、医師が認めた業務には就業することができます。
産前・産後休業中の厚生年金保険料、健康保険保険料は、雇用主、被保険者双方の負担が免除されます。また、国民年金、国民健康保険に加入している方の場合は、出産月(予定月)の前月から翌々月までの4ヶ月間の保険料が、多胎妊娠の場合は3ヶ月前から6ヶ月間の保険料が免除されます。厚生年金、国民年金ともに、将来の年金額を計算する際には、保険料を納めた期間として扱われます。
また、雇用主に産前・産後休業中の賃金を支払う義務はありませんが、健康保険に加入していて一定の要件を満たせば、健康保険から出産手当金が支給されます。1日に支給される手当は、支給開始日以前の12ヶ月間の標準報酬月額を平均した額÷30日×2/3で計算される額になります。
(出典:「働く女性の心と体の応援サイト>妊娠出産・母性健康管理サポート」(厚生労働省)(https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/index_bosei.html)を元にライフプラン・シム作成)
出産育児一時金
国民健康保険の被保険者、健康保険の被保険者およびその扶養者が出産した場合には、子ども1人当たり原則50万円(令和7年時点)が医療保険から支給されます。申請期間は出産日の翌日から2年以内です。
なお、直接支払制度を利用する場合は、病院などの出産施設が医療保険に請求し、施設に直接一時金が支払われるため、窓口では不足分のみ支払います。費用が一時金を下回る場合は、差額を医療保険から受け取ることができます。
(出典:「出産育児一時金等について」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/shussan/index.html)を元にライフプラン・シム作成)
出生時育児休業給付金(産後パパ育休)
産後パパ育休は、産後8週以内に4週間(28日間)を限度として2回に分けて取得でき、1歳までの育児休業とは別に取得できる制度で、令和4年10月1日から導入されました。なお、労使協定により、休業期間中に就業させることができると定められた労働者は、申し出ることにより一定の条件のもと就業することができます。
産後パパ育休取得期間中は、休業開始時賃金日額(原則、育児休業開始前6ヶ月間の賞与を除く総支給額を180で割った金額)の67%相当額の出生時育児休業給付金が支給されます。
育児休業給付
原則1歳未満の子を養育するために育児休業を取得した場合、一定の要件を満たすと育児休業給付金が支給されます。育児休業は2回に分割して取得することができます。
夫婦ともに育児休業を取得する場合(パパママ育休)、子が1歳2ヶ月になるまで育児休業を取得することができます。ただし、育児休業の取得可能期間は夫婦それぞれ最長1年に限られますので、夫婦で取得時期をずらす必要があります。
職場復帰のために保育所等の利用申し込みを行ったにもかかわらず、保育所等に入れなかったため育児休業を延長した場合に、1歳6ヶ月に達する日前まで(再延長で2歳に達する日前まで)支給を受けることができます。
育児休業取得期間中、休業開始から180日目までは休業開始時賃金日額の67%が支給されます。ただし、出生時育児休業(産後パパ育休)を取得した場合は、その取得日数が180日から差し引かれます。また、休業開始から181日目以降は50%が支給されます。
出生後休業支援給付金
原則、産後8週まで(産後休業を取得する母親の場合は16週まで)の期間において、夫婦ともに14日以上の育児休業(産後パパ育休を含む)を取得した場合、夫婦それぞれ28日間を上限として、育児休業給付額が13%上乗せされる制度で、令和7年4月1日から創設されました。
このため、上乗せ中は休業開始時賃金日額の80%の給付率となり、育児休業給付などの給付金は非課税のため、実質手取り10割相当の給付となります。
育児時短就業給付金
2歳に満たない子を養育するために時短勤務を選択した場合に、低下する賃金を支援する制度で、これも令和7年4月1日から創設されました。育児休業から引き続いて時短勤務を開始した場合、もしくは時短勤務前の2年間に、雇用保険への加入期間が12ヶ月以上あることが要件となっています。
原則として、時短勤務前の賃金水準よりも時短勤務中に支払われた賃金が低い場合に支給され、時短勤務中の賃金額の10%相当額が支給されます。ただし、時短勤務開始前の賃金水準を超えないよう調整されます。
また、賃金(月額)には支給限度額(令和7年8月1日以降471,393円、毎年改定)があり、賃金がこれを超えた場合には支給されず、賃金額と支給額の合計がこれを超えた場合には超えた部分が減額されます。一方、支給額が最低限度額(令和7年8月1日以降2,411円、毎年改定)以下の場合にも支給されません。
給付金は、原則として時短勤務を開始した日の属する月から、終了した日(子が2歳に達する日の前日など)の属する月までの各月に支給されます。
(出典:「育児休業等給付について」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000135090_00001.html)を元にライフプラン・シム作成)
この他、子育てに関係する支援策として児童手当や、幼児教育・保育の無償化などがありますが、詳しくは下記の関連記事をご覧ください。また、それぞれの給付金の詳細な要件や申請方法については、お住まいの自治体や雇用主、勤務先最寄りのハローワークなどにご確認ください。
関連記事
子育て世帯への経済的支援を目的として、所得税や贈与税の優遇措置が講じられていますが、いずれも時限措置となっており、経済状況などを踏まえて、これまで期限が延長されてきました。
少子化対策として、さらなる拡充や延長が期待されますので、今後の税制改正の動きが注目されます。
住宅ローン控除の借入限度額の上乗せ
表に示すように、所得税の住宅ローン控除が適用される借入限度額について、子育て世帯、若者夫婦世帯が、令和7年に新築住宅に入居する場合は、令和6年の優遇措置が継続され、令和4年、5年に入居の場合の水準が維持されます。
ここで、子育て世帯とは、年齢が19歳未満の扶養親族を有する者で、若者夫婦世帯とは、夫婦いずれかが40歳未満の者となっています。
借入限度額は、令和4年、5年に入居の場合には、長期優良住宅・低炭素住宅で5,000万円、ZEH水準省エネ住宅で4,500万円、省エネ基準適合住宅で4,000万円、その他の住宅で3,000万円でしたが、令和6年、7年に入居の場合は、それぞれ4,500万円、3,500万円、3,000万円、0円(2023年末までに建築確認を受けた場合は2,000万円)に減額されます。
但し、令和6年の税制改正で、子育て世帯、若者夫婦世帯については、令和4年、5年入居の場合の水準が維持されることになりました。
子育て対応リフォームでの所得税控除
令和6年の税制改正で、子育て世帯、若者夫婦世帯が、マイホームに子育て対応のリフォーム(一定の改修工事)を行った場合に、所得税の控除が受けられる特例が創設されました。この特例は、令和7年12月31日まで継続されます。
子育て対応リフォーム工事(以降、対象工事)にかかった標準的な工事費(控除対象限度額250万円)の10%が所得税から控除され、住宅ローンの利用が無くても適用されます。
また、対象工事費のうち限度額を超過した分と、同時に行うその他のリフォーム工事費(対象工事費を含めて控除対象限度額1,000万円)の5%が所得税から控除されます。
子育て世帯の生命保険料控除額の上乗せ
2012年1月以降契約(新制度)の一般生命保険料については、所得税の課税所得から、納付した保険料に応じて最大4万円が控除されます。
子育て世帯を支援する目的で、23歳未満の扶養親族を有する場合には、控除限度額を2万円上乗せして6万円とする特例が設けられます。
ただし、現時点では令和8年の時限措置となっています。また、一時払いの生命保険は適用対象から除外されるとともに、地方税についての上乗せはありません。
直系尊属からの結婚・子育て資金の一括贈与にかかる贈与税の特例
直系尊属(父母・祖父母)から、一括して子・孫(18歳~50歳)へ結婚・子育て資金の贈与を行った場合に、贈与税が非課税となる特例(1,000万円まで、うち結婚資金は300万円まで)が、令和9年3月末まで延長されました。
ただし、非課税となるためには、金融機関で信託するなどの所定の手続きを行うことや、支払いの確証を金融機関に提示することなどが必要となります。
(出典:「令和7年度税制改正の概要」(子ども家庭庁)(https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/88749a20-e454-4a5b-9da8-3a32e1788a23/5ae229f2/20241227_policies_budget_52.pdf)を元にライフプラン・シム作成)
令和7年度の年金制度改正により、遺族年金制度が改正されます。遺族厚生年金では、18歳年度末までの子(障害の状態にある場合は20歳未満の子)のない配偶者が、遺族厚生年金を受給できる年齢要件について、男女の差が解消されます。また、遺族基礎年金では、配偶者が遺族基礎年金を受給できない場合でも、子が受給できるようになります。
遺族厚生年金の改正
厚生年金に加入して一定の要件を満たす方の死亡時、生計を同じくする遺族が一定の要件を満たせば、遺族厚生年金を受給できます。ただし、遺族が子のない配偶者のケースでは、男女間でその年齢要件に大きな差があります。記事「遺族厚生年金の受給要件と受給対象者」 に詳細は譲りますが、現行制度における子のない配偶者での男女間の差は、概ね以下の通りです。
《改正前》
・死亡時、子のない55歳未満の夫:給付なし
・死亡時、子のない55歳以上の夫:60歳から無期限給付
・死亡時、子のない30歳未満の妻:5年間の有期給付
・死亡時、子のない30歳以上の妻:無期限給付
今回の改正では、最終的に2048年4月には男女の差なく次のようになります。なお、男性については2028年4月から実施されますが、女性については2028年4月から40歳に引上げられ、その後5年ごとに5歳づつ、20年後に60歳に引上げられます。
《改正後》
・死亡時、子のない60歳未満の配偶者:原則5年間の有期給付
・有期給付の収入要件(前年の年収850万円未満)を廃止
・所得や障害の状態により配慮が必要な場合は、5年目以降も給付を継続(最長65歳まで)
・5年間の有期給付には新たに有期給付加算を付加し、現行の約1.3倍に
・老齢厚生年金の受給時に、新たに死亡分割※を付加して増額する
(※死亡分割:亡くなった方の報酬が高かった場合には、亡くなった方の厚生年金記録を分割し、遺族の記録に上乗せ)
一方、現行制度で子がいる配偶者には、子の年齢が18歳年度末まで(障害の状態にある場合は20歳未満)は遺族基礎年金が給付され、遺族厚生年金が無期限給付(死亡時、55歳未満の夫の場合、子に遺族厚生年金を有期給付)されます。子が前述の年齢を超えて遺族基礎年金の給付終了時点で、40歳以上65歳未満の妻の場合のみ中高齢寡婦加算が付加されます。
改正後は、遺族基礎年金の給付終了後、男女関係なく5年間の有期給付(有期給付加算を含む)となり、配慮が必要な場合は65歳まで継続給付となります。同時に、中高齢寡婦加算については、新規受給者への給付額が段階的に減額され、最終的には25年後に廃止されます。
また、遺族が亡くなった方の父母、祖父母の場合は、子のない55歳以上の夫と同様でしたが、改正後は60歳以上で死別した方のみに無期限給付されます。
なお、60歳以上で死別した方、改正前から遺族厚生年金を受け取っていた方、2028年度に40歳以上になる女性については、改正の影響を受けません。
遺族基礎年金の改正
遺族基礎年金は、一定の要件を満たせば、18歳年度末までの子(障害の状態にある場合は20歳未満)がいる配偶者に給付されます。しかし、この一定の要件を満たさない場合、例えば収入要件である配偶者の前年の年収が850万円以上の場合は、遺族基礎年金は給付されません。
今回の改正では、配偶者が遺族基礎年金を受給できない場合に、子がその配偶者(子の父または母)と生計を同じくしていても、子に遺族基礎年金が給付されます(2028年4月から)。以下のようなケースが該当します。
・元夫の死亡後、妻(子の母)が遺族基礎年金を受給していたが、妻が再婚したため、妻は遺族基礎年金を受給できなくなった。
・夫の死亡時、妻(子の母)の前年の収入が850万円を超えているため、妻は遺族基礎年金を受給できない。
・離婚後、子を養育していた元夫が死亡したが、元妻(子の母)は元夫の死亡前に離婚していたため、遺族基礎年金を受給できない。
⇒上記3例について、受給できない妻(元妻)と生計を同じくしていても、子が遺族基礎年金を受給できる。(妻が死亡して、夫が受給する場合も同様)
・父親(母親)の死亡後、受給できる子が祖父(祖母)などの直系血族(または直系姻族)の養子となったため、祖父(祖母)が遺族基礎年金を受給し、子は受給できない。
⇒祖父(祖母)などの養子となり、生計を同じくしていても、子が遺族基礎年金を受給できる。
(出典:「年金制度改正法が成立しました-法律説明資料(詳細版)」(厚労省)(https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/001510607.pdf)を元にライフプラン・シム作成)
1.在職老齢年金の基準額の引上げ
在職老齢年金は、働いて給与を受取りながら老齢厚生年金を受給する場合に、給与月額と年金受給月額の合計額が一定の基準額を超えると、超えた金額の半分の額が、年金受給額から減額(支給停止)される仕組みです。老齢基礎年金は支給停止されません。
基準額は毎年見直され、令和6年度の基準額は50万円でしたが、令和7年度の年金制度改正で、この基準額が大幅に引上げられ、令和8年度から62万円(令和6年度年金額ベース)になります。これによって、年金が支給停止にならないよう労働時間を減らすなどの制限が和らぎ、高齢者の就労支援になると期待されます。
2.加給年金などの子の加算額の引上げ
65歳以上の老齢厚生年金の受給者に、生計を一にする、18歳到達年度の末日までの子※(以降、子とする)がいる場合で、一定の要件を満たせば加給年金の子の加算が支給されます。また、遺族基礎年金、障害基礎年金の受給者に、生計を一にする子がいる場合も同様で、子の加算が支給されます。
令和6年度の、2人目までの子に対する加算額は1人当たり234,800円、3人目以降の子に対する加算額は1人当たり78,300円でした。子育て世帯への支援強化のため、令和7年度の年金制度改正で、2人目までと3人目以降の子に対する加算額を同額とし、令和10年度から281,700円(令和6年度価格ベース、20%増)に引上げられます。これは、現在受給されている方も対象です。
(※障害等級1級、2級に該当する障害のある子は20歳まで)
3.子の加算の全ての年金への拡充
これまでは、表に示すとおり、老齢厚生年金、遺族基礎年金、障害基礎年金にのみ子の加算が支給されましたが、老齢基礎年金、遺族厚生年金、障害厚生年金を受給する方にも、令和10年度から子の加算が支給されます。
例えば、老齢基礎年金のみを受給する方でも、要件を満たせば子の加算が支給されます。なお、基礎年金と厚生年金の両方を受給している場合は、厚生年金にのみ加算が付きます。
4.老齢厚生年金の配偶者加算の減額
老齢厚生年金には前述のとおり加給年金があり、生計を一にする65歳未満の配偶者がいる場合で、一定の要件を満たせば配偶者加算額が支給されます。配偶者加算額は、子の加算額と同額に、受給権者の年齢に応じた特別加算が上乗せされます。
令和6年度の配偶者加算額は408,100円(昭和18年4月2日以降の受給権者の場合)となっています。今回の改正で、この配偶者加算額が減額され、367,200円(令和6年度価格ベース、10%減)となります。ただし、対象は令和10年度から新たに加給年金を受給する方で、既に加給年金を受給されている方は減額されません。
(注)本文の年金制度改正後の金額は、令和6年度の年金額を元に計算した金額であり、年金の年度改定によって見直されます。
(出典:「年金制度改正法が成立しました-法律説明資料(概要版)」(厚労省)(https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/001510606.pdf)を元にライフプラン・シム作成)
令和7年度の年金制度改正により、厚生年金保険や健康保険などの社会保険に加入となる賃金要件、いわゆる「106万円の壁(社会保険料の壁)」が3年以内に撤廃されることになりました。これによって、最低賃金の引上げに伴い、年収を気にしながら働き控えをする必要はなくなります。
また、法人の企業規模要件も10年かけて段階的に撤廃され、個人事業所の業種制限も4年後に撤廃されることになり、社会保険への加入対象が拡大されます。これによって新たに社会保険に加入する事業主、労働者には、3年に限って保険料の支援策が用意され、移行しやすくしています。とは言え、期間は限られますので、その間に賃金を増やすなどの対策が、労使ともに求められることになります。
1.社会保険加入への賃金要件の撤廃
これまで、パート・アルバイトや契約社員などの短時間労働者が社会保険に加入となる要件のひとつとして、月収が88,000円以上という賃金要件がありました。これを年収に換算すると1,056,000円(約106万円)となり、これを超えると社会保険料を徴収されて手取りが減ることから、「106万円の壁」と言われてきました。
今回の改正では、全国の最低賃金の状況を見ながら、この賃金要件が3年以内に撤廃されることになりました。これによって、最低賃金が引上げられたからと言って、労働時間を減らすような働き控えは減ることが期待されます。
学生以外で、2ヶ月を超えて継続して働く労働者側から見た社会保険加入要件としては、週の勤務が20時間以上(残業時間を除く)、が残ることになります。また、現時点では、社会保険料のもう一つの壁である扶養の壁(「130万円の壁」)は残ります。
2.社会保険加入への企業規模要件の段階的撤廃
次に、事業主側から見た企業規模要件ですが、現在は従業員数51人以上の法人が社会保険加入の対象となっています。この企業規模要件が10年かけて段階的に緩和され、2035年10月に撤廃されます。
具体的には、表(上)に示すように、2027年10月からは36人以上に、2029年10月からは21人以上に、2032年10月からは11人以上に、そして2035年10月には10人以下の全ての法人も対象となり、企業規模要件は撤廃されることになります。
3.個人事業所の社会保険加入対象の拡大
現在、個人事業所については、常時5人以上の従業員がいる事業所で、法律で定める17業種のみが社会保険加入の対象となっています。2029年10月からは、この業種制限が撤廃され、これまで対象ではなかった農業、漁業、林業や、宿泊業、飲食サービス業など、すべての業種が対象となります。
なお、2029年10月時点で既に存在している、17業種以外で5人以上の個人事業所については、当分の間、対象外になります。また、5人未満の個人事業所については、これまで通り対象外です。
4.短時間労働者の保険料に対する時限的支援
社会保険料は基本的に労使折半ですが、今回の企業規模要件や業種制限の撤廃により、新たに社会保険の対象となる短時間労働者の保険料の一部を、事業主が3年間追加負担した場合に、国などがその全額を支援して、事業主と労働者の負担を軽減します。
労働者の賃金によって労働者の負担率が異なり、月8.8万円(年収106万円)では、労働者は本来の負担の25/50(半分)を負担すればよく、賃金が増えるにしたがって段階的に負担率が上昇し、月13.4万円(年収161万円)では50/50(全額)を負担することになります。ただし、3年目は軽減率が半減となります。賃金レンジごとの負担率は、表(下)をご覧ください。
例えば、標準報酬月額が88,000円の短時間労働者(40歳~64歳)は、厚生年金保険料が月額8,052円(保険料率9.15%)、健康保険料(協会健保の東京都の場合)が月額5,060円(保険料率5.75%)の合わせて13,112円(合計保険料率14.9%)が徴収されますが、これが最初の2年間は50%減の6,556円に、3年目は25%減の9,834円に軽減されます。
5.標準報酬月額の上限の段階的引上げ
厚生年金の保険料や年金額の計算に使う標準報酬月額の上限が、65万円から75万円に引上げられます。具体的には2027年9月からは68万円、2028年9月からは71万円、2029年9月からは75万円に段階的に引上げられます。これにより、高収入の方の保険料が上がるものの、将来受け取れる年金額も増加します。
例えば、標準報酬月額が今回の改正で上限75万円に該当する方は、現在(上限65万円)よりも保険料が月額+9,100円となりますが、この上限の引上げに10年間該当したとすると、将来受け取れる年金額は月額約+5,100円となり、終身で受け取れます。一定の前提の下での試算では、社会保険料控除を加味すると、保険料の正味の増加額は月額約+6,100円、年金額の税引き後の増加額は月額約+4,300円となります。
(出典:「年金制度改正法が成立しました」(厚労省)(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00017.html)を元に、ライフプラン・シム作成)
令和7年度の税制改正、年金制度改正法案が可決されました。この記事では、iDeCoに関係する改正内容について取り上げます。
拠出限度額の引上げ
会社員や公務員の方がiDeCoに加入する場合には、他の年金制度への加入有無によって、iDeCoへの拠出額に独自の上限が設けられています。昨年(令和6年)12月には、確定給付企業年金(DB年金)にも加入する方のiDeCoへの拠出限度額が、月額12,000円から20,000円に引上げられたばかりでした。昨年12月以降のiDeCoへの拠出限度額を、上の図のピンク色の部分”iDeCo月額〇〇万円”で示しています。
今回の改正では、このiDeCo独自の拠出限度額が、他の年金制度への加入、未加入にかかわらず撤廃され、他の年金制度と合わせた共通の拠出限度額まで拠出可能になります。図ではピンク色の下矢印で示しています。
ただし、国民年金第3号被保険者(厚生年金被保険者の扶養配偶者)の限度額に変更はありません。また、企業型DC年金の事業主の拠出額に上乗せする加入者掛金(マッチング拠出)は、事業主の拠出額を超えられない制限がありましたが、これも撤廃されます。
さらに、この共通の拠出限度額が一律7,000円引上げられ、国民年金1号被保険者(国民年金被保険者)は、これまでの68,000円から75,000円に、国民年金第2号被保険者(厚生年金被保険者)は、55,000円から62,000円に引上げられます。図では橙色の上矢印で示しています。
なお、これらの拠出限度額の引上げは、今後3年以内の実施となっています。
加入(拠出)可能年齢の引き上げ
これまでiDeCoに加入できる方は、図の左下に示すように、国民年金や厚生年金に加入している方でした。詳しくは、国民年金に加入している60歳未満の方(国民年金第1号被保険者)、または国民年金に任意加入している65歳未満の方、あるいは厚生年金に加入している65歳未満の方(同第2号被保険者)とその扶養配偶者である60歳未満の方(同第3号被保険者)で、老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付を受給していない方でした。
iDeCoの加入可能年齢を過ぎると、新たに掛金を拠出して積立てることはできず、最長75歳未満で老齢給付を受給開始するまでは、積立てた拠出金を運用するだけ(運用指図者)でした。
今回の改正では、図の右下に示すように、iDeCoの加入者、運用指図者であった方が、60歳、あるいは65歳を過ぎて、国民年金や厚生年金に加入していなくても、老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付を受給していなければ、70歳まで加入することができるようになります。退職に伴い、企業型DC年金などの他の年金をiDeCoに移換する方も、継続して70歳まで掛金を拠出することができるようになります。
掛金の拠出が継続できることで、積立額を増やせるだけでなく、掛金は社会保険料控除の対象となりますし、加入月数が増えることで、一時金で受給する際の退職所得控除額が増えるなど、節税につながります。
なお、この加入年齢の引上げも、今後3年以内の実施となっています。
一時金受給での5年ルールの延長
確定拠出年金(企業型DC年金やiDeCo)を60歳で一時金として受給して、5年経過した65歳で退職金を受け取る場合は、別の退職所得として見なすことができ、それぞれに退職所得控除が適用されます。
一方、65歳になる年の前年以前に受け取る場合は、同一の退職所得と見なされ、重複している勤務年数(加入年数)に相当する退職所得控除額を、後から受け取る退職金の退職所得控除額から減額しなければなりません。
この調整規定を”5年ルール”(もしくは”前年以前4年以内”)と言います。詳しくは、記事「確定拠出年金の賢い受け取り方」 をご覧ください。
今回の改正では、65歳までの雇用確保の義務化、さらには70歳までの雇用確保の努力目標化を受けて、この”5年ルール”が”10年ルール”に延長されます。この”10年ルール”は、2026年1月1日以降に受け取る退職金、確定拠出年金の一時金などに適用されます。
ちなみに、今回の改正とは関係ありませんが、退職金を受け取った後に確定拠出年金を一時金で受給する場合には、”20年ルール”が適用されます。
(出典:「年金制度改正法が成立しました」(厚労省)(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00017.html)、
「令和7年度税制改正」(財務省)(https://www.mof.go.jp/tax_policy/publication/brochure/zeisei2025_pdf/zeisei25_01.pdf)、
「令和7年4月源泉所得税改正のあらまし」(国税庁)(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/2025kaisei.pdf)を元に、ライフプラン・シム作成)
年齢が19歳以上23歳未満(大学生相当)の扶養親族がいて、その親族が所得要件を満たす場合に、扶養者(親など)の所得税の計算において、所得から「特定扶養控除」の63万円が差し引かれます。
これまで、この扶養親族の所得要件は、所得税が非課税となる48万円以下でしたが、令和7年度の税制改正により85万円に緩和されました。これを給与収入ベースに置き換えると、いわゆる大学生のバイトの年収の壁が「103万円の壁」から「150万円の壁」に引上げられることになります。
内訳は、税制改正により、基礎控除額が48万円から58万円に+10万円引上げられたことにより、扶養控除などの対象となる扶養親族の所得要件が一律58万円に緩和されたことと、所得が58万円を超過する場合でも、「特定親族特別控除」を創設することにより、+27万円の85万円まで緩和したことによるものです。
さらに、給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円に+10万円引上げられたことから、これらを合計すると、給与収入ベースではこれまでより+47万円引上げられて150万円になりました。
また、「特定親族特別控除」では、扶養親族の所得が85万円を超えたらすぐに控除額がゼロになるのではなく、所得85万円から5万円刻みで最大123万円まで、給与収入ベースでは150万円から188万円まで、控除額が63万円から段階的に減額されて控除されることになりました。具体的な所得レンジと控除額は、表をご覧ください。
なお、大学生の他の年収の壁のうち「住民税の壁(100万円の壁)」は、給与所得控除の最低保障額の引き上げ分の+10万円のみ引上げられ「110万円の壁」になりましたが、「社会保険料の壁(106万円、130万円の壁)」は残ったままです。この社会保険料の壁は、厚生年金や健康保険への加入要件を見直して拡大し、将来的に撤廃する方向で議論が進められており、その行方と影響が注目されます。
関連記事
(出典:「令和7年度税制改正による 所得税の基礎控除の見直し等について(源泉所得税関係)」(国税庁)(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/0025004-025.pdf)を元にライフプラン・シム作成)
8件/全129件
カテゴリ選択