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    役立つコラムに新しい記事「遺族年金の改正」を投稿しました。遺族厚生年金では、子のない配偶者が年金を受給できる年齢要件について、男女の差が解消されます。また、遺族基礎年金では、配偶者が年金を受給できない場合でも、子が受給できるようになります。詳しくは記事をお読みください。

    役立つコラムに新しい記事「遺族年金の改正」を投稿しました。遺族厚生年金では、子のない配偶者が年金を受給できる年齢要件について、男女の差が解消されます。また、遺族基礎年金では、配偶者が年金を受給できない場合でも、子が受給できるようになります。詳しくは記事をお読みください。

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126

遺族年金の改正


 2025/08/02

 [年金・退職金]

124

社会保険料の壁の撤廃と上限の引上げ


 2025/07/17

 [年金・退職金]

123

iDeCoの拠出限度額、加入年齢の引上げ


 2025/06/27

 [年金・退職金]

122

大学生の年収の壁の引上げ


 2025/05/27

 [税金]

121

税金の年収の壁の引上げ


 2025/05/19

 [税金]

119

遺族基礎年金の受給要件と受給対象者


 2025/03/22

 [年金・退職金]

8件/全126件

遺族年金の改正
拡大可

 令和7年度の年金制度改正により、遺族年金制度が改正されます。遺族厚生年金では、18歳年度末までの子(障害の状態にある場合は20歳未満の子)のない配偶者が、遺族厚生年金を受給できる年齢要件について、男女の差が解消されます。また、遺族基礎年金では、配偶者が遺族基礎年金を受給できない場合でも、子が受給できるようになります。

遺族厚生年金の改正

 厚生年金に加入して一定の要件を満たす方の死亡時、生計を同じくする遺族が一定の要件を満たせば、遺族厚生年金を受給できます。ただし、遺族が子のない配偶者のケースでは、男女間でその年齢要件に大きな差があります。記事「遺族厚生年金の受給要件と受給対象者」 に詳細は譲りますが、現行制度における子のない配偶者での男女間の差は、概ね以下の通りです。

《改正前》
・死亡時、子のない55歳未満の夫:給付なし
・死亡時、子のない55歳以上の夫:60歳から無期限給付
・死亡時、子のない30歳未満の妻:5年間の有期給付
・死亡時、子のない30歳以上の妻:無期限給付

 今回の改正では、最終的に2048年4月には男女の差なく次のようになります。なお、男性については2028年4月から実施されますが、女性については2028年4月から40歳に引上げられ、その後5年ごとに5歳づつ、20年後に60歳に引上げられます。

《改正後》
・死亡時、子のない60歳未満の配偶者:原則5年間の有期給付
・有期給付の収入要件(前年の年収850万円未満)を廃止
・所得や障害の状態により配慮が必要な場合は、5年目以降も給付を継続(最長65歳まで)
・5年間の有期給付には新たに有期給付加算を付加し、現行の約1.3倍に
・老齢厚生年金の受給時に、新たに死亡分割※を付加して増額する

(※死亡分割:亡くなった方の報酬が高かった場合には、亡くなった方の厚生年金記録を分割し、遺族の記録に上乗せ)

 一方、現行制度で子がいる配偶者には、子の年齢が18歳年度末まで(障害の状態にある場合は20歳未満)は遺族基礎年金が給付され、遺族厚生年金が無期限給付(死亡時、55歳未満の夫の場合、子に遺族厚生年金を有期給付)されます。子が前述の年齢を超えて遺族基礎年金の給付終了時点で、40歳以上65歳未満の妻の場合のみ中高齢寡婦加算が付加されます。

 改正後は、遺族基礎年金の給付終了後、男女関係なく5年間の有期給付(有期給付加算を含む)となり、配慮が必要な場合は65歳まで継続給付となります。同時に、中高齢寡婦加算については、新規受給者への給付額が段階的に減額され、最終的には25年後に廃止されます。

 また、遺族が亡くなった方の父母、祖父母の場合は、子のない55歳以上の夫と同様でしたが、改正後は60歳以上で死別した方のみに無期限給付されます。

 なお、60歳以上で死別した方、改正前から遺族厚生年金を受け取っていた方、2028年度に40歳以上になる女性については、改正の影響を受けません。

遺族基礎年金の改正

 遺族基礎年金は、一定の要件を満たせば、18歳年度末までの子(障害の状態にある場合は20歳未満)がいる配偶者に給付されます。しかし、この一定の要件を満たさない場合、例えば収入要件である配偶者の前年の年収が850万円以上の場合は、遺族基礎年金は給付されません。

 今回の改正では、配偶者が遺族基礎年金を受給できない場合に、子がその配偶者(子の父または母)と生計を同じくしていても、子に遺族基礎年金が給付されます(2028年4月から)。以下のようなケースが該当します。

・元夫の死亡後、妻(子の母)が遺族基礎年金を受給していたが、妻が再婚したため、妻は遺族基礎年金を受給できなくなった。
・夫の死亡時、妻(子の母)の前年の収入が850万円を超えているため、妻は遺族基礎年金を受給できない。
・離婚後、子を養育していた元夫が死亡したが、元妻(子の母)は元夫の死亡前に離婚していたため、遺族基礎年金を受給できない。

 ⇒上記3例について、受給できない妻(元妻)と生計を同じくしていても、子が遺族基礎年金を受給できる。(妻が死亡して、夫が受給する場合も同様)

・父親(母親)の死亡後、受給できる子が祖父(祖母)などの直系血族(または直系姻族)の養子となったため、祖父(祖母)が遺族基礎年金を受給し、子は受給できない。

 ⇒祖父(祖母)などの養子となり、生計を同じくしていても、子が遺族基礎年金を受給できる。

(出典:「年金制度改正法が成立しました-法律説明資料(詳細版)」(厚労省)(https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/001510607.pdf)を元にライフプラン・シム作成)


在職老齢年金の基準額の引上げ、加給年金などの子の加算額の引上げ
拡大可

1.在職老齢年金の基準額の引上げ

 在職老齢年金は、働いて給与を受取りながら老齢厚生年金を受給する場合に、給与月額と年金受給月額の合計額が一定の基準額を超えると、超えた金額の半分の額が、年金受給額から減額(支給停止)される仕組みです。老齢基礎年金は支給停止されません。

 基準額は毎年見直され、令和6年度の基準額は50万円でしたが、令和7年度の年金制度改正で、この基準額が大幅に引上げられ、令和8年度から62万円(令和6年度年金額ベース)になります。これによって、年金が支給停止にならないよう労働時間を減らすなどの制限が和らぎ、高齢者の就労支援になると期待されます。

2.加給年金などの子の加算額の引上げ

 65歳以上の老齢厚生年金の受給者に、生計を一にする、18歳到達年度の末日までの子※(以降、子とする)がいる場合で、一定の要件を満たせば加給年金の子の加算が支給されます。また、遺族基礎年金、障害基礎年金の受給者に、生計を一にする子がいる場合も同様で、子の加算が支給されます。

 令和6年度の、2人目までの子に対する加算額は1人当たり234,800円、3人目以降の子に対する加算額は1人当たり78,300円でした。子育て世帯への支援強化のため、令和7年度の年金制度改正で、2人目までと3人目以降の子に対する加算額を同額とし、令和10年度から281,700円(令和6年度価格ベース、20%増)に引上げられます。これは、現在受給されている方も対象です。

(※障害等級1級、2級に該当する障害のある子は20歳まで)

3.子の加算の全ての年金への拡充

 これまでは、表に示すとおり、老齢厚生年金、遺族基礎年金、障害基礎年金にのみ子の加算が支給されましたが、老齢基礎年金、遺族厚生年金、障害厚生年金を受給する方にも、令和10年度から子の加算が支給されます。

 例えば、老齢基礎年金のみを受給する方でも、要件を満たせば子の加算が支給されます。なお、基礎年金と厚生年金の両方を受給している場合は、厚生年金にのみ加算が付きます。

4.老齢厚生年金の配偶者加算の減額

 老齢厚生年金には前述のとおり加給年金があり、生計を一にする65歳未満の配偶者がいる場合で、一定の要件を満たせば配偶者加算額が支給されます。配偶者加算額は、子の加算額と同額に、受給権者の年齢に応じた特別加算が上乗せされます。

 令和6年度の配偶者加算額は408,100円(昭和18年4月2日以降の受給権者の場合)となっています。今回の改正で、この配偶者加算額が減額され、367,200円(令和6年度価格ベース、10%減)となります。ただし、対象は令和10年度から新たに加給年金を受給する方で、既に加給年金を受給されている方は減額されません。

(注)本文の年金制度改正後の金額は、令和6年度の年金額を元に計算した金額であり、年金の年度改定によって見直されます。

(出典:「年金制度改正法が成立しました-法律説明資料(概要版)」(厚労省)(https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/001510606.pdf)を元にライフプラン・シム作成)


社会保険料の壁の撤廃と上限の引上げ
拡大可

 令和7年度の年金制度改正により、厚生年金保険や健康保険などの社会保険に加入となる賃金要件、いわゆる「106万円の壁(社会保険料の壁)」が3年以内に撤廃されることになりました。これによって、最低賃金の引上げに伴い、年収を気にしながら働き控えをする必要はなくなります。

 また、法人の企業規模要件も10年かけて段階的に撤廃され、個人事業所の業種制限も4年後に撤廃されることになり、社会保険への加入対象が拡大されます。これによって新たに社会保険に加入する事業主、労働者には、3年に限って保険料の支援策が用意され、移行しやすくしています。とは言え、期間は限られますので、その間に賃金を増やすなどの対策が、労使ともに求められることになります。

1.社会保険加入への賃金要件の撤廃

 これまで、パート・アルバイトや契約社員などの短時間労働者が社会保険に加入となる要件のひとつとして、月収が88,000円以上という賃金要件がありました。これを年収に換算すると1,056,000円(約106万円)となり、これを超えると社会保険料を徴収されて手取りが減ることから、「106万円の壁」と言われてきました。

 今回の改正では、全国の最低賃金の状況を見ながら、この賃金要件が3年以内に撤廃されることになりました。これによって、最低賃金が引上げられたからと言って、労働時間を減らすような働き控えは減ることが期待されます。

 学生以外で、2ヶ月を超えて継続して働く労働者側から見た社会保険加入要件としては、週の勤務が20時間以上(残業時間を除く)、が残ることになります。また、現時点では、社会保険料のもう一つの壁である扶養の壁(「130万円の壁」)は残ります。

2.社会保険加入への企業規模要件の段階的撤廃

 次に、事業主側から見た企業規模要件ですが、現在は従業員数51人以上の法人が社会保険加入の対象となっています。この企業規模要件が10年かけて段階的に緩和され、2035年10月に撤廃されます。

 具体的には、表(上)に示すように、2027年10月からは36人以上に、2029年10月からは21人以上に、2032年10月からは11人以上に、そして2035年10月には10人以下の全ての法人も対象となり、企業規模要件は撤廃されることになります。

3.個人事業所の社会保険加入対象の拡大

 現在、個人事業所については、常時5人以上の従業員がいる事業所で、法律で定める17業種のみが社会保険加入の対象となっています。2029年10月からは、この業種制限が撤廃され、これまで対象ではなかった農業、漁業、林業や、宿泊業、飲食サービス業など、すべての業種が対象となります。

 なお、2029年10月時点で既に存在している、17業種以外で5人以上の個人事業所については、当分の間、対象外になります。また、5人未満の個人事業所については、これまで通り対象外です。

4.短時間労働者の保険料に対する時限的支援

 社会保険料は基本的に労使折半ですが、今回の企業規模要件や業種制限の撤廃により、新たに社会保険の対象となる短時間労働者の保険料の一部を、事業主が3年間追加負担した場合に、国などがその全額を支援して、事業主と労働者の負担を軽減します。

 労働者の賃金によって労働者の負担率が異なり、月8.8万円(年収106万円)では、労働者は本来の負担の25/50(半分)を負担すればよく、賃金が増えるにしたがって段階的に負担率が上昇し、月13.4万円(年収161万円)では50/50(全額)を負担することになります。ただし、3年目は軽減率が半減となります。賃金レンジごとの負担率は、表(下)をご覧ください。

 例えば、標準報酬月額が88,000円の短時間労働者(40歳~64歳)は、厚生年金保険料が月額8,052円(保険料率9.15%)、健康保険料(協会健保の東京都の場合)が月額5,060円(保険料率5.75%)の合わせて13,112円(合計保険料率14.9%)が徴収されますが、これが最初の2年間は50%減の6,556円に、3年目は25%減の9,834円に軽減されます。

5.標準報酬月額の上限の段階的引上げ

 厚生年金の保険料や年金額の計算に使う標準報酬月額の上限が、65万円から75万円に引上げられます。具体的には2027年9月からは68万円、2028年9月からは71万円、2029年9月からは75万円に段階的に引上げられます。これにより、高収入の方の保険料が上がるものの、将来受け取れる年金額も増加します。

 例えば、標準報酬月額が今回の改正で上限75万円に該当する方は、現在(上限65万円)よりも保険料が月額+9,100円となりますが、この上限の引上げに10年間該当したとすると、将来受け取れる年金額は月額約+5,100円となり、終身で受け取れます。一定の前提の下での試算では、社会保険料控除を加味すると、保険料の正味の増加額は月額約+6,100円、年金額の税引き後の増加額は月額約+4,300円となります。

(出典:「年金制度改正法が成立しました」(厚労省)(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00017.html)を元に、ライフプラン・シム作成)


iDeCoの拠出限度額、加入年齢の引上げ
拡大可

 令和7年度の税制改正、年金制度改正法案が可決されました。この記事では、iDeCoに関係する改正内容について取り上げます。

拠出限度額の引上げ

 会社員や公務員の方がiDeCoに加入する場合には、他の年金制度への加入有無によって、iDeCoへの拠出額に独自の上限が設けられています。昨年(令和6年)12月には、確定給付企業年金(DB年金)にも加入する方のiDeCoへの拠出限度額が、月額12,000円から20,000円に引上げられたばかりでした。昨年12月以降のiDeCoへの拠出限度額を、上の図のピンク色の部分”iDeCo月額〇〇万円”で示しています。

 今回の改正では、このiDeCo独自の拠出限度額が、他の年金制度への加入、未加入にかかわらず撤廃され、他の年金制度と合わせた共通の拠出限度額まで拠出可能になります。図ではピンク色の下矢印で示しています。

 ただし、国民年金第3号被保険者(厚生年金被保険者の扶養配偶者)の限度額に変更はありません。また、企業型DC年金の事業主の拠出額に上乗せする加入者掛金(マッチング拠出)は、事業主の拠出額を超えられない制限がありましたが、これも撤廃されます。

 さらに、この共通の拠出限度額が一律7,000円引上げられ、国民年金1号被保険者(国民年金被保険者)は、これまでの68,000円から75,000円に、国民年金第2号被保険者(厚生年金被保険者)は、55,000円から62,000円に引上げられます。図では橙色の上矢印で示しています。

 なお、これらの拠出限度額の引上げは、今後3年以内の実施となっています。

加入(拠出)可能年齢の引き上げ

 これまでiDeCoに加入できる方は、図の左下に示すように、国民年金や厚生年金に加入している方でした。詳しくは、国民年金に加入している60歳未満の方(国民年金第1号被保険者)、または国民年金に任意加入している65歳未満の方、あるいは厚生年金に加入している65歳未満の方(同第2号被保険者)とその扶養配偶者である60歳未満の方(同第3号被保険者)で、老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付を受給していない方でした。

 iDeCoの加入可能年齢を過ぎると、新たに掛金を拠出して積立てることはできず、最長75歳未満で老齢給付を受給開始するまでは、積立てた拠出金を運用するだけ(運用指図者)でした。

 今回の改正では、図の右下に示すように、iDeCoの加入者、運用指図者であった方が、60歳、あるいは65歳を過ぎて、国民年金や厚生年金に加入していなくても、老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付を受給していなければ、70歳まで加入することができるようになります。退職に伴い、企業型DC年金などの他の年金をiDeCoに移換する方も、継続して70歳まで掛金を拠出することができるようになります。

 掛金の拠出が継続できることで、積立額を増やせるだけでなく、掛金は社会保険料控除の対象となりますし、加入月数が増えることで、一時金で受給する際の退職所得控除額が増えるなど、節税につながります。

 なお、この加入年齢の引上げも、今後3年以内の実施となっています。

一時金受給での5年ルールの延長

 確定拠出年金(企業型DC年金やiDeCo)を60歳で一時金として受給して、5年経過した65歳で退職金を受け取る場合は、別の退職所得として見なすことができ、それぞれに退職所得控除が適用されます。

 一方、65歳になる年の前年以前に受け取る場合は、同一の退職所得と見なされ、重複している勤務年数(加入年数)に相当する退職所得控除額を、後から受け取る退職金の退職所得控除額から減額しなければなりません。

 この調整規定を”5年ルール”(もしくは”前年以前4年以内”)と言います。詳しくは、記事「確定拠出年金の賢い受け取り方」 をご覧ください。

 今回の改正では、65歳までの雇用確保の義務化、さらには70歳までの雇用確保の努力目標化を受けて、この”5年ルール”が”10年ルール”に延長されます。この”10年ルール”は、2026年1月1日以降に受け取る退職金、確定拠出年金の一時金などに適用されます。

 ちなみに、今回の改正とは関係ありませんが、退職金を受け取った後に確定拠出年金を一時金で受給する場合には、”20年ルール”が適用されます。

(出典:「年金制度改正法が成立しました」(厚労省)(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00017.html)、
「令和7年度税制改正」(財務省)(https://www.mof.go.jp/tax_policy/publication/brochure/zeisei2025_pdf/zeisei25_01.pdf)、
「令和7年4月源泉所得税改正のあらまし」(国税庁)(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/2025kaisei.pdf)を元に、ライフプラン・シム作成)


大学生の年収の壁の引上げ
拡大可

 年齢が19歳以上23歳未満(大学生相当)の扶養親族がいて、その親族が所得要件を満たす場合に、扶養者(親など)の所得税の計算において、所得から「特定扶養控除」の63万円が差し引かれます。

 これまで、この扶養親族の所得要件は、所得税が非課税となる48万円以下でしたが、令和7年度の税制改正により85万円に緩和されました。これを給与収入ベースに置き換えると、いわゆる大学生のバイトの年収の壁が「103万円の壁」から「150万円の壁」に引上げられることになります。

 内訳は、税制改正により、基礎控除額が48万円から58万円に+10万円引上げられたことにより、扶養控除などの対象となる扶養親族の所得要件が一律58万円に緩和されたことと、所得が58万円を超過する場合でも、「特定親族特別控除」を創設することにより、+27万円の85万円まで緩和したことによるものです。

 さらに、給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円に+10万円引上げられたことから、これらを合計すると、給与収入ベースではこれまでより+47万円引上げられて150万円になりました。

 また、「特定親族特別控除」では、扶養親族の所得が85万円を超えたらすぐに控除額がゼロになるのではなく、所得85万円から5万円刻みで最大123万円まで、給与収入ベースでは150万円から188万円まで、控除額が63万円から段階的に減額されて控除されることになりました。具体的な所得レンジと控除額は、表をご覧ください。

 なお、大学生の他の年収の壁のうち「住民税の壁(100万円の壁)」は、給与所得控除の最低保障額の引き上げ分の+10万円のみ引上げられ「110万円の壁」になりましたが、「社会保険料の壁(106万円、130万円の壁)」は残ったままです。この社会保険料の壁は、厚生年金や健康保険への加入要件を見直して拡大し、将来的に撤廃する方向で議論が進められており、その行方と影響が注目されます。

関連記事

「税金の年収の壁の引上げ」

(出典:「令和7年度税制改正による 所得税の基礎控除の見直し等について(源泉所得税関係)」(国税庁)(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/0025004-025.pdf)を元にライフプラン・シム作成)


税金の年収の壁の引上げ
拡大可

 年収の壁には、税金の壁(100万円、103万円)、社会保険料の壁(106万円、130万円)、配偶者控除の壁(150万円、202万円)があります。これらの詳細は、記事「配偶者の年収の壁」 をお読みください。このうち「103万円の壁」、すなわち所得税の税金の壁が改正になり、令和7年の年末調整や確定申告、令和8年の源泉徴収から適用になります。

 具体的には、給与収入者の低所得者層では「103万円の壁」が「160万円の壁」に引上げられます。その内訳は、①基礎控除額の10万円引上げ、②低所得者層の基礎控除額の37万円上乗せ、③中所得者層の基礎控除額の上乗せ特例、④給与所得控除の最低保障額の10万円引上げ、となっています。それぞれ、詳しく見ていきましょう。

①基礎控除額の10万円引上げ(恒久的措置)

 所得税の計算において、収入がある全ての方の所得から非課税枠である「基礎控除」が差し引かれます。過去を振り返ると、約30年前から基礎控除額は38万円に添え置かれてきました。

 働き方改革推進による平成30年の改正(令和2年から適用)で、給与所得控除額、公的年金控除額を10万円引き下げる代わりに、基礎控除額が38万円から48万円に見直されましたが、これは単なる振替にすぎません。

 また、同年の改正で所得制限が設けられ、所得が2,400万円以下の方は48万円、2,400万円超では32万円、2,450万円超では16万円に逓減され、2,500万円超では基礎控除は受けられなくなりました。

 しかし、昨今の物価上昇や最低賃金の引上げトレンドにより、基礎控除額を引上げるべきとの気運が高まり、令和7年度の税制改正で、30年間の物価上昇率を勘案して20%の引上げ、金額ベースで+10万円の58万円に引上げられました。これは、所得が2,350万円以下の方への適用で、2,350万円超の方に変更はありません。つまり、2,350万円超の方は48万円、2,400万円超の方は前述のとおり逓減されます。

 なお、今後の物価上昇により、基礎控除をどのように見直すかは引き続き検討されています。

②低所得者層の基礎控除額の37万円上乗せ(恒久的措置)

 所得税が非課税となる年収の壁が、主婦や学生がパート・アルバイトなどで働く機会を制限していることや、生活保護の所得水準、最低賃金の水準とのバランスが取れていないなどの意見から、低所得者層の基礎控除額に37万円を恒久的に上乗せする措置が取られました。

 所得制限としては所得132万円以下の方のみに限られ、給与収入のみの方では収入200万3,999円以下、年金収入のみの65歳以上の方では収入242万円以下の場合に、基礎控除額が95万円に引上げられます。なお、この上乗せ加算は、居住者(国内に生活の本拠となる住所があるか、現在まで引き続き1年以上居所がある者)のみに適用されます。

③中所得者層の基礎控除額の上乗せ特例(令和7・8年の時限措置)

 賃金上昇が物価上昇に追いついていないことへの対応で、令和7年、8年の時限的な措置として中所得者層の基礎控除額に、所得に応じた上乗せが行われます。

 具体的には表に示すように、所得336万円以下に対して基礎控除額が88万円(30万円の上乗せ)、所得489万円以下に対して68万円(10万円の上乗せ)、所得655万円以下に対して63万円(5万円の上乗せ)となっています。所得655万円超への上乗せはありません。それぞれの所得に相当する給与収入金額は表をご覧ください。なお、この上乗せ加算は②と同様に、居住者のみに適用されます。

 これまでと比較して、①③による所得控除額は、所得に応じて40万円~15万円の引上げになり、税額ベースでは2万円~4万円の税負担軽減になります。

④給与所得控除の最低保障額の10万円引上げ

 最後は、給与所得控除額の最低保障額の引上げです。前述のように、令和2年から基礎控除額と振替で給与所得控除額が10万円引き下げられ、最低保障額は55万円となっていました。②と合わせた低所得者層への非課税枠の拡大の観点から、給与収入190万円以下の給与所得控除が65万円に引上げられました。給与収入190万円超では変更はありません。

 なお、②と④を合わせて、給与収入が約200万円以下の方の基礎控除額が95万円+給与所得控除額が65万円となり、合わせて160万円までは所得税が非課税となります。これで、「103万円の壁」が「160万円の壁」に引上げられることになります。

 また、①と④を合わせて、扶養控除の収入要件が「103万円の壁」から「123万円の壁」に引上げられます。19~22歳の扶養親族には、新たに特定親族特別控除が設けられ、①④を含めて150万円以上に引上げられます。配偶者特別控除は④により、下限では10万円引上げられ「160万円の壁」となりますが、上限の「202万円の壁」は据え置かれます。

その他の年収の壁

 今回の令和7年度の税制改正では、住民税の基礎控除額については、地方自治体の財政の状況から据え置きとなっており、もうひとつの税金の壁である「100万円の壁」は給与所得控除の引き上げ分だけ上昇して「110万円の壁」となります。

 また、社会保険料の壁では、厚生年金や健康保険への加入要件を見直して拡大し、社会保険料の壁を将来的に撤廃する方向で議論が進められています。同様に、配偶者控除の壁についても、夫婦共働き世帯の増加などにより、廃止について議論が進められています。

(出典:「令和7年度税制改正による 所得税の基礎控除の見直し等について(源泉所得税関係)」(国税庁)(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/0025004-025.pdf)を元にライフプラン・シム作成)


自己都合退職でも教育訓練の受講で失業手当がすぐにもらえる
拡大可

 令和7年4月1日以降に、リスキリングのための教育訓練等を受講すると、自己都合退職の場合でも、最短で7日間の待機期間満了後すぐに失業手当(雇用保険の基本手当)がもらえます。

 それでは、順を追って詳しく説明しましょう。

 これまでは、正当な理由なく自己都合退職した場合、基本手当の受給資格決定日(ハローワークに離職票を提出して求職を開始した日)から7日間の待機期間満了後、2ヶ月間は基本手当が給付されませんでした。これを「給付制限」といいます。ただし、離職日から遡って5年間で2回以上、正当な理由なく自己都合退職し受給資格を受けた場合、給付制限は3ヶ月となります。また、自己の責めに帰すべき重大な理由により解雇(重責解雇)された場合も、給付制限は3ヶ月となります。

 まず、この給付制限が、令和7年4月1日以降に離職した場合、1ヶ月に短縮されます。さらに、令和7年4月1日以降にリスキリングのための教育訓練等を受講すると、給付制限が短縮され、最も短いケースではゼロになります。つまり、7日間の待機期間満了後すぐに基本手当がもらえます。ただし、重責解雇の場合は対象外で、給付制限は短縮されません。

 ここで、対象の教育訓練等(令和7年4月1日以降に受講を開始したものに限る)は以下の通りです。

①教育訓練給付金の対象となる教育訓練
②公共職業訓練等
③短期訓練受講費(注1)の対象となる教育訓練
④ ①~③に準ずるものとして職業安定局長が定める訓練

(注1)短期訓練受講費とは、受給資格者がハローワークの指導により再就職のために、公的職業資格の取得を目的とする1ヶ月未満の特定の教育訓練を修了した場合に、訓練費用の一部(2割、上限10万円)が支給される制度です。

 次に、具体的なケースを図で確認してみましょう。いずれの場合も、7日間の待機期間は適用されます。

 図の1番目のケースは、教育訓練等を受けていない場合で、前述の通り令和7年4月1日以降に離職した場合の給付制限は原則1ヶ月、令和7年3月31日以前に離職した場合の給付制限は原則2ヶ月となります。

 図の2番目のケースは、離職日前1年以内に教育訓練等を受けたことがある(途中退校することなく修了したことがある、もしくは受給資格決定日の時点で受講中の)場合で、給付制限がゼロになります。受給資格決定日に、教育訓練の修了証明書(ハローワークで教育訓練給付金の受給手続きが済んでいる場合は不要なことがある)や、受講中の場合は訓練開始日が記載された領収証などを提出する必要があります。

 図の3番目のケースは、受給資格決定以降に教育訓練等を受ける場合で、訓練受講開始日から基本手当をもらうことができます。ただし、訓練受講開始日から基本手当をもらうには、訓練受講開始後、決められた期限(注2)までに申し出る必要があります。

(注2)申し出の期限は、訓練受講開始以降の初回の失業認定日、初回認定日後に受講開始の場合は、その直後の認定日まで。ただし、給付制限が2ヶ月以上の場合は、給付制限中の認定日が設定されないため、給付制限が無いと仮定した認定日の相当日まで。

 詳細は、出典の資料をご確認ください。また、不明な点はハローワークに確認してください。

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「リスキリングを支援する給付金」

(出典:「令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合、給付制限が解除され、基本手当を受給できます」(厚労省)(https://www.mhlw.go.jp/content/001441564.pdf)を元にライフプラン・シム作成)


遺族基礎年金の受給要件と受給対象者
s05prodpresidenteによるPixabayからの画像

 記事「遺族厚生年金の受給要件と受給対象者」 で、遺族厚生年金を取り上げました。遺族基礎年金は?と思われる方も多いと思いますので、その違いを整理しておきましょう。

 厚生年金が支給する遺族厚生年金は、雇用されて働く方が万一の場合に、残された家族を支援することで、安心して働ける環境を提供する制度になっています。一方、国民年金が支給する遺族基礎年金は、残された子どもの養育を中心に支援する制度になっています。

遺族基礎年金の受給要件

 次の①~⑤のいずれかの要件を満たしている場合に、遺族(受給対象者)に遺族基礎年金が支給されます。

①国民年金の被保険者である間に死亡したとき
②国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の方で、日本国内に住所を有していた方が死亡したとき
③老齢基礎年金の受給権者であった方が死亡したとき(老齢基礎年金を請求して確定した方、老齢基礎年金を受け取っている方が死亡したとき)
④老齢基礎年金の受給資格を満たした方が死亡したとき(老齢基礎年金を受け取ることができる加入期間の要件を満たしていて、まだ老齢基礎年金を請求していない方が死亡したとき)

 ここで、上記のそれぞれの要件については、遺族厚生年金と同様に、以下の保険料納付要件を満たす必要があります。

 ①②については、死亡日の前日において、国民年金の保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が、被保険者期間の3分の2以上あることが必要。(ただし、死亡日が令和8年3月末までのときは、死亡した方が65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納が無ければよいことになっています。)

 ③④については、保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間(注1)を合算した期間が25年以上ある方に限られます。

(注1)合算対象期間(カラ期間)・・・平成3(1991)年3月以前に、学生であるため国民年金に任意加入しなかった期間や、昭和36(1961)年4月以降、海外に住んでいた期間など。

 なお、遺族厚生年金は、被保険者である間に初診日がある病気やけがが原因で、初診日から5年以内に死亡したときや、1級・2級の障害厚生(共済)年金を受け取っている方が死亡したときにも支給されることが、遺族基礎年金との相違点になっています。

遺族基礎年金の受給対象者

 死亡した方に生計を維持されていた(生計を同じくし、前年の収入が850万円未満もしくは所得が655万5千円未満である)、以下の遺族の方が受け取ることができます。なお、遺族厚生年金を受給できる遺族の方は、あわせて受給できます。

①子のある配偶者
②子(18歳になった年度の3月31日までにある方、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある方で、婚姻をしていない方)

(注)子のある配偶者が遺族基礎年金を受け取っている間や、子に生計を同じくする父または母がいる間は、子には遺族基礎年金は支給されません。

 なお、遺族厚生年金と異なり、配偶者には年齢要件がありません。一方、遺族厚生年金では、上記の受給対象者がいない場合は以下順に、子のない配偶者、父母(年齢要件あり)、孫(子の年齢要件に同じ)、祖父母(年齢要件あり)も受給対象となります。

 また、遺族基礎年金を受け取れる権利(受給権)は、次の場合に失効し、支給されなくなります。受給者が婚姻したとき、養子になったとき(祖父母等を除く)、死亡した者と離縁したとき、死亡したとき、受給者が子の場合に年齢要件を満たさなくなったとき、など。

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「加給年金、遺族年金の配偶者収入要件」

「遺族年金」

(出典:「遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)」(日本年金機構)(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/izokunenkin/jukyu-yoken/20150401-04.html)を元にライフプラン・シム作成)


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