役立つコラムに新しい記事「大学生の年収の壁の引上げ」を投稿しました。これまで大学生など19歳以上23歳未満の子が、親の所得税の扶養控除対象となるには、子の年収は103万円以下という「103万円の壁」がありました。令和7年度の税制改革により、この壁が「150万円の壁」に引上げられました。詳しくは記事をお読みください。
役立つコラムに新しい記事「大学生の年収の壁の引上げ」を投稿しました。これまで大学生など19歳以上23歳未満の子が、親の所得税の扶養控除対象となるには、子の年収は103万円以下という「103万円の壁」がありました。令和7年度の税制改革により、この壁が「150万円の壁」に引上げられました。詳しくは記事をお読みください。
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年齢が19歳以上23歳未満(大学生相当)の扶養親族がいて、その親族が所得要件を満たす場合に、扶養者(親など)の所得税の計算において、所得から「特定扶養控除」の63万円が差し引かれます。
これまで、この扶養親族の所得要件は、所得税が非課税となる48万円以下でしたが、令和7年度の税制改正により85万円に緩和されました。これを給与収入ベースに置き換えると、いわゆる大学生のバイトの年収の壁が「103万円の壁」から「150万円の壁」に引上げられることになります。
内訳は、税制改正により、基礎控除額が48万円から58万円に+10万円引上げられたことにより、扶養控除などの対象となる扶養親族の所得要件が一律58万円に緩和されたことと、所得が58万円を超過する場合でも、「特定親族特別控除」を創設することにより、+27万円の85万円まで緩和したことによるものです。
さらに、給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円に+10万円引上げられたことから、これらを合計すると、給与収入ベースではこれまでより+47万円引上げられて150万円になりました。
また、「特定親族特別控除」では、扶養親族の所得が85万円を超えたらすぐに控除額がゼロになるのではなく、所得85万円から5万円刻みで最大123万円まで、給与収入ベースでは150万円から188万円まで、控除額が63万円から段階的に減額されて控除されることになりました。具体的な所得レンジと控除額は、表をご覧ください。
なお、大学生の他の年収の壁のうち「住民税の壁(100万円の壁)」は、給与所得控除の最低保障額の引き上げ分の+10万円のみ引上げられ「110万円の壁」になりましたが、「社会保険料の壁(106万円、130万円の壁)」は残ったままです。この社会保険料の壁は、厚生年金や健康保険への加入要件を見直して拡大し、将来的に撤廃する方向で議論が進められており、その行方と影響が注目されます。
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(出典:「令和7年度税制改正による 所得税の基礎控除の見直し等について(源泉所得税関係)」(国税庁)(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/0025004-025.pdf)を元にライフプラン・シム作成)
年収の壁には、税金の壁(100万円、103万円)、社会保険料の壁(106万円、130万円)、配偶者控除の壁(150万円、202万円)があります。これらの詳細は、記事「配偶者の年収の壁」 をお読みください。このうち「103万円の壁」、すなわち所得税の税金の壁が改正になり、令和7年の年末調整や確定申告、令和8年の源泉徴収から適用になります。
具体的には、給与収入者の低所得者層では「103万円の壁」が「160万円の壁」に引上げられます。その内訳は、①基礎控除額の10万円引上げ、②低所得者層の基礎控除額の37万円上乗せ、③中所得者層の基礎控除額の上乗せ特例、④給与所得控除の最低保障額の10万円引上げ、となっています。それぞれ、詳しく見ていきましょう。
①基礎控除額の10万円引上げ(恒久的措置)
所得税の計算において、収入がある全ての方の所得から非課税枠である「基礎控除」が差し引かれます。過去を振り返ると、約30年前から基礎控除額は38万円に添え置かれてきました。
働き方改革推進による平成30年の改正(令和2年から適用)で、給与所得控除額、公的年金控除額を10万円引き下げる代わりに、基礎控除額が38万円から48万円に見直されましたが、これは単なる振替にすぎません。
また、同年の改正で所得制限が設けられ、所得が2,400万円以下の方は48万円、2,400万円超では32万円、2,450万円超では16万円に逓減され、2,500万円超では基礎控除は受けられなくなりました。
しかし、昨今の物価上昇や最低賃金の引上げトレンドにより、基礎控除額を引上げるべきとの気運が高まり、令和7年度の税制改正で、30年間の物価上昇率を勘案して20%の引上げ、金額ベースで+10万円の58万円に引上げられました。これは、所得が2,350万円以下の方への適用で、2,350万円超の方に変更はありません。つまり、2,350万円超の方は48万円、2,400万円超の方は前述のとおり逓減されます。
なお、今後の物価上昇により、基礎控除をどのように見直すかは引き続き検討されています。
②低所得者層の基礎控除額の37万円上乗せ(恒久的措置)
所得税が非課税となる年収の壁が、主婦や学生がパート・アルバイトなどで働く機会を制限していることや、生活保護の所得水準、最低賃金の水準とのバランスが取れていないなどの意見から、低所得者層の基礎控除額に37万円を恒久的に上乗せする措置が取られました。
所得制限としては所得132万円以下の方のみに限られ、給与収入のみの方では収入200万3,999円以下、年金収入のみの65歳以上の方では収入242万円以下の場合に、基礎控除額が95万円に引上げられます。なお、この上乗せ加算は、居住者(国内に生活の本拠となる住所があるか、現在まで引き続き1年以上居所がある者)のみに適用されます。
③中所得者層の基礎控除額の上乗せ特例(令和7・8年の時限措置)
賃金上昇が物価上昇に追いついていないことへの対応で、令和7年、8年の時限的な措置として中所得者層の基礎控除額に、所得に応じた上乗せが行われます。
具体的には表に示すように、所得336万円以下に対して基礎控除額が88万円(30万円の上乗せ)、所得489万円以下に対して68万円(10万円の上乗せ)、所得655万円以下に対して63万円(5万円の上乗せ)となっています。所得655万円超への上乗せはありません。それぞれの所得に相当する給与収入金額は表をご覧ください。なお、この上乗せ加算は②と同様に、居住者のみに適用されます。
これまでと比較して、①③による所得控除額は、所得に応じて40万円~15万円の引上げになり、税額ベースでは2万円~4万円の税負担軽減になります。
④給与所得控除の最低保障額の10万円引上げ
最後は、給与所得控除額の最低保障額の引上げです。前述のように、令和2年から基礎控除額と振替で給与所得控除額が10万円引き下げられ、最低保障額は55万円となっていました。②と合わせた低所得者層への非課税枠の拡大の観点から、給与収入190万円以下の給与所得控除が65万円に引上げられました。給与収入190万円超では変更はありません。
なお、②と④を合わせて、給与収入が約200万円以下の方の基礎控除額が95万円+給与所得控除額が65万円となり、合わせて160万円までは所得税が非課税となります。これで、「103万円の壁」が「160万円の壁」に引上げられることになります。
その他の年収の壁
今回の令和7年度の税制改正では、住民税の基礎控除額については、地方自治体の財政の状況から据え置きとなっており、もうひとつの税金の壁である「100万円の壁」は給与所得控除の引き上げ分だけ上昇して「110万円の壁」となります。
また、社会保険料の壁では、厚生年金や健康保険への加入要件を見直して拡大し、社会保険料の壁を将来的に撤廃する方向で議論が進められています。同様に、配偶者控除の壁についても、夫婦共働き世帯の増加などにより、廃止について議論が進められています。
(出典:「令和7年度税制改正による 所得税の基礎控除の見直し等について(源泉所得税関係)」(国税庁)(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/0025004-025.pdf)を元にライフプラン・シム作成)
令和7年4月1日以降に、リスキリングのための教育訓練等を受講すると、自己都合退職の場合でも、最短で7日間の待機期間満了後すぐに失業手当(雇用保険の基本手当)がもらえます。
それでは、順を追って詳しく説明しましょう。
これまでは、正当な理由なく自己都合退職した場合、基本手当の受給資格決定日(ハローワークに離職票を提出して求職を開始した日)から7日間の待機期間満了後、2ヶ月間は基本手当が給付されませんでした。これを「給付制限」といいます。ただし、離職日から遡って5年間で2回以上、正当な理由なく自己都合退職し受給資格を受けた場合、給付制限は3ヶ月となります。また、自己の責めに帰すべき重大な理由により解雇(重責解雇)された場合も、給付制限は3ヶ月となります。
まず、この給付制限が、令和7年4月1日以降に離職した場合、1ヶ月に短縮されます。さらに、令和7年4月1日以降にリスキリングのための教育訓練等を受講すると、給付制限が短縮され、最も短いケースではゼロになります。つまり、7日間の待機期間満了後すぐに基本手当がもらえます。ただし、重責解雇の場合は対象外で、給付制限は短縮されません。
ここで、対象の教育訓練等(令和7年4月1日以降に受講を開始したものに限る)は以下の通りです。
①教育訓練給付金の対象となる教育訓練
②公共職業訓練等
③短期訓練受講費(注1)の対象となる教育訓練
④ ①~③に準ずるものとして職業安定局長が定める訓練
(注1)短期訓練受講費とは、受給資格者がハローワークの指導により再就職のために、公的職業資格の取得を目的とする1ヶ月未満の特定の教育訓練を修了した場合に、訓練費用の一部(2割、上限10万円)が支給される制度です。
次に、具体的なケースを図で確認してみましょう。いずれの場合も、7日間の待機期間は適用されます。
図の1番目のケースは、教育訓練等を受けていない場合で、前述の通り令和7年4月1日以降に離職した場合の給付制限は原則1ヶ月、令和7年3月31日以前に離職した場合の給付制限は原則2ヶ月となります。
図の2番目のケースは、離職日前1年以内に教育訓練等を受けたことがある(途中退校することなく修了したことがある、もしくは受給資格決定日の時点で受講中の)場合で、給付制限がゼロになります。受給資格決定日に、教育訓練の修了証明書(ハローワークで教育訓練給付金の受給手続きが済んでいる場合は不要なことがある)や、受講中の場合は訓練開始日が記載された領収証などを提出する必要があります。
図の3番目のケースは、受給資格決定以降に教育訓練等を受ける場合で、訓練受講開始日から基本手当をもらうことができます。ただし、訓練受講開始日から基本手当をもらうには、訓練受講開始後、決められた期限(注2)までに申し出る必要があります。
(注2)申し出の期限は、訓練受講開始以降の初回の失業認定日、初回認定日後に受講開始の場合は、その直後の認定日まで。ただし、給付制限が2ヶ月以上の場合は、給付制限中の認定日が設定されないため、給付制限が無いと仮定した認定日の相当日まで。
詳細は、出典の資料をご確認ください。また、不明な点はハローワークに確認してください。
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(出典:「令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合、給付制限が解除され、基本手当を受給できます」(厚労省)(https://www.mhlw.go.jp/content/001441564.pdf)を元にライフプラン・シム作成)
記事「遺族厚生年金の受給要件と受給対象者」 で、遺族厚生年金を取り上げました。遺族基礎年金は?と思われる方も多いと思いますので、その違いを整理しておきましょう。
厚生年金が支給する遺族厚生年金は、雇用されて働く方が万一の場合に、残された家族を支援することで、安心して働ける環境を提供する制度になっています。一方、国民年金が支給する遺族基礎年金は、残された子どもの養育を中心に支援する制度になっています。
遺族基礎年金の受給要件
次の①~⑤のいずれかの要件を満たしている場合に、遺族(受給対象者)に遺族基礎年金が支給されます。
①国民年金の被保険者である間に死亡したとき
②国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の方で、日本国内に住所を有していた方が死亡したとき
③老齢基礎年金の受給権者であった方が死亡したとき(老齢基礎年金を請求して確定した方、老齢基礎年金を受け取っている方が死亡したとき)
④老齢基礎年金の受給資格を満たした方が死亡したとき(老齢基礎年金を受け取ることができる加入期間の要件を満たしていて、まだ老齢基礎年金を請求していない方が死亡したとき)
ここで、上記のそれぞれの要件については、遺族厚生年金と同様に、以下の保険料納付要件を満たす必要があります。
①②については、死亡日の前日において、国民年金の保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が、被保険者期間の3分の2以上あることが必要。(ただし、死亡日が令和8年3月末までのときは、死亡した方が65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納が無ければよいことになっています。)
③④については、保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間(注1)を合算した期間が25年以上ある方に限られます。
(注1)合算対象期間(カラ期間)・・・平成3(1991)年3月以前に、学生であるため国民年金に任意加入しなかった期間や、昭和36(1961)年4月以降、海外に住んでいた期間など。
なお、遺族厚生年金は、被保険者である間に初診日がある病気やけがが原因で、初診日から5年以内に死亡したときや、1級・2級の障害厚生(共済)年金を受け取っている方が死亡したときにも支給されることが、遺族基礎年金との相違点になっています。
遺族基礎年金の受給対象者
死亡した方に生計を維持されていた(生計を同じくし、前年の収入が850万円未満もしくは所得が655万5千円未満である)、以下の遺族の方が受け取ることができます。なお、遺族厚生年金を受給できる遺族の方は、あわせて受給できます。
①子のある配偶者
②子(18歳になった年度の3月31日までにある方、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある方で、婚姻をしていない方)
(注)子のある配偶者が遺族基礎年金を受け取っている間や、子に生計を同じくする父または母がいる間は、子には遺族基礎年金は支給されません。
なお、遺族厚生年金と異なり、配偶者には年齢要件がありません。一方、遺族厚生年金では、上記の受給対象者がいない場合は以下順に、子のない配偶者、父母(年齢要件あり)、孫(子の年齢要件に同じ)、祖父母(年齢要件あり)も受給対象となります。
また、遺族基礎年金を受け取れる権利(受給権)は、次の場合に失効し、支給されなくなります。受給者が婚姻したとき、養子になったとき(祖父母等を除く)、死亡した者と離縁したとき、死亡したとき、受給者が子の場合に年齢要件を満たさなくなったとき、など。
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(出典:「遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)」(日本年金機構)(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/izokunenkin/jukyu-yoken/20150401-04.html)を元にライフプラン・シム作成)
60歳未満の雇用されて働く人が、60歳以降も継続して雇用される場合や、いったん離職して再就職する場合、一般的には賃金水準が下がります。その賃金の低下率が大きい人には、雇用保険から高年齢雇用継続給付金(以降、単に「給付金」)が、65歳になるまで支給されます。現行制度の詳細は、記事「60歳以上の雇用者への給付金」 をご覧ください。
具体的には、雇用保険への加入期間が5年以上の被保険者で、60歳以上65歳未満の各月の賃金が、受給資格発生日(60歳到達日)の賃金月額に対して、75%未満に低下した場合に支給されます。61%以下に低下した場合には各月の賃金の15%相当が支給され、61%を超えて75%未満に低下した場合は、その低下率に応じて15%より少ない額が支給されます。なお、60歳時点で雇用保険への加入期間が5年未満の場合には、加入期間が5年以上に達した時点が受給資格発生日となります。また、基準となる賃金月額には上限と下限が、各月の賃金+給付金の総額にも限度額が設けられており、これを超える給付金は支給されないなどの制限があります。
これが現行の給付金制度の概要ですが、令和7年4月1日以降に本給付金の条件を満たした人は、給付金の支給率の最大が、賃金の「15%相当」から「10%相当」に縮小されるとともに、最大の支給率が適用される賃金の低下率が、「61%以下」から「64%以下」に引上げられます。上の図は、新しい支給率が適用される被保険者と、現行の支給率が適用される被保険者の例を示しており、下のグラフは、賃金低下率ごとの給付金の支給率を、改正前と改正後で比較しています。
本給付金は、65歳までの雇用の継続を援助、促進することを目的とした制度で、当初の支給率は25%でしたが、平成15年に現在の支給率に改正されました。高年齢者雇用安定法の推進により、実際に65歳まで働く人の割合が増え、処遇も少しづつ改善してきていることから、今回の支給率の改正に至っています。今後は、雇用側に70歳までの雇用確保が求められており、給付金のさらなる縮小や廃止が検討されることになっています。
(出典:「令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します」(厚労省)(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000160564_00043.html)を元に、ライフプラン・シム作成)
グラフは、上が厚生年金、下が国民年金の、令和5年度末時点での男女別年金受給額(月額)の分布を示しています。
厚生年金のグラフは、対象が厚生年金1号被保険者だった人で、民間企業に勤めて厚生年金保険に25年以上※加入し、年金を受給している人です。男性の総数が10,601,923人で、女性の総数が5,452,806人となっています。この中には、特別支給の厚生年金(報酬比例部分のみ)を受給している65歳未満の人も含まれます。なお、共済組合等にも加入したことのある人も含まれますが、共済組合等から支給される分は含んでいません。また、年金受給月額には、基礎年金部分も含まれます。
(※昭和27年4月1日以前生まれの人は20年以上。昭和27年4月2日以降生まれの人は段階的に引き上がり、昭和31年4月2日以降生まれの人は25年以上。年金改革により、受給年齢が段階的に引上げられたり、受給資格期間が短縮されたことから、旧制度で受給される人と新制度で受給される人を、同等の条件の下で分析するため。)
グラフから分かるように、男性の受給額が高く、分布のピークは17万円~18万円、平均は166,606円となっています。一方、女性の受給額の分布のピークは9万円~10万円で、平均は107,200円となっています。厚生年金の受給額は、加入期間内の標準報酬月額の平均値と加入月数に比例するため、男女での受給額の違いは、男女の賃金格差および勤続年数の差から生じていると考えられます。
なお、一般的には、夫婦のモデルケースでの厚生年金受給額が示されますが、モデルケースでは配偶者が扶養されている(国民年金3号被保険者の)条件となっており、グラフの厚生年金受給額に、配偶者の基礎年金受給額を加えた金額が、夫婦モデルケースでの年金受給額になります。
国民年金のグラフは、対象が国民年金被保険者だった人だけでなく、厚生年金(共済組合等を含む)が上乗せされている人の基礎年金部分や、国民年金3号被保険者だった人を含みます。ただし、前述の通り、年金制度に25年以上加入した人に限られます。男性の総数が14,434,673人、女性の総数が19,021,113人で、女性の方が多くなっています。これは、3号被保険者も含めて、就業率、就業形態の違いなどによるものと考えられます。
国民年金の受給額は、加入月数にのみ比例することから、男女での受給額の差は厚生年金ほど大きくありません。ピークは男女とも6万円~7万円で、平均は男性が59,965円、女性が55,777円となっています。
ご自分の年金受給額の概算を知りたい方は、記事「年金受給額の計算の仕方」 をご覧ください。
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「年金受給額の推移とインフレ下で低下する将来価値(将来の年金受給額)」
(出典:「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」(厚労省)(https://www.mhlw.go.jp/content/001359541.pdf)を元に、ライフプラン・シム作成)
記事「上場株式、投資信託等の損益通算(確定申告)」 では、上場株式や投資信託などの範囲内で損益通算や繰越控除ができることを説明しましたが、ここでは範囲を広げて、さまざまな所得の間での損益通算について取り上げます。
図は、国税庁の「所得税計算の仕組み(イメージ)」(出典を参照)を元に作成したものです。図の見方ですが、一番左が「収入」で、そこから「経費」や「控除」が差し引かれて、一番右の「税額」の計算に至る流れになっています。途中で、「損益通算」や「繰越控除」がされていますが、その対象範囲が一つのポイントになります。
ただし、本図には所得税計算の全てが記載されている訳ではありませんのでご注意ください。また、図に付けられた(注)、(※)については、末尾の説明文をご参照ください。また、大きな損失が生じた場合や、どこまで損益通算可能であるか分からない場合などは、税理士などにご相談ください。
損益通算
基本的に、同一の所得内での損益通算(内部通算)は可能ですが、不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得については、損失が同一所得内で相殺しきれずに残った場合に、その損失を一定の順序にしたがって他の所得から控除することができます。給与所得、一時所得、雑所得、配当所得については、計算上損失が生じることはありますが、損失を他の所得から控除することはできません。また、退職所得、利子所得については、計算上損失が生じません。
ただし、不動産所得の計算で生じた損失の金額のうち、別荘など生活に通常必要のない資産の貸し付けにかかるものや、土地を取得するための借入金の利子に相当する部分の金額などは、損失が生じなかったものとして計算されます。
また、ここでの譲渡所得は、不動産、上場株式等を除く、その他の資産の譲渡所得です。なお、趣味、娯楽、保養や鑑賞を目的とするなど、生活に通常必要でない資産や、1個または1組の価格が30万円を超える貴金属、書画、骨董などに関して生じた損失は、他の所得との損益通算はできません。
不動産の譲渡所得は分離課税(短期と長期で税率が異なる)が適用され、他の所得と損益通算できませんが、居住用財産の譲渡損失については、一定の要件を満たせば他の所得との損益通算ができ、相殺しきれない損失は翌年以降3年間繰り越すことができます。
上場株式等の譲渡損失は、申告分離課税を選択した配当所得、特定公社債等の利子所得と損益通算することができます。また、相殺しきれない損失は、翌年以降3年間繰り越すことができます。
譲渡所得の詳細については、記事「資産を売却した時の税金」 もお読みください。
純損失・雑損失の繰越控除
災害、盗難、横領などにより損害を受けた場合に、損失から一定の金額を差し引いた金額を、所得から控除することができます。これを雑損控除と言い、雑損控除で相殺しきれない損失があった場合は、翌年以降3年間繰り越すことができます。
確定申告の青色申告者(不動産、事業、山林の所得者)については、事業活動等で発生した純損失が、前述の損益通算で相殺しきれない場合、翌年以降3年間繰り越すことができます。
先物取引にかかる雑所得等
商品先物取引や金融商品先物取引などがあり、後者にはFX取引も含まれます(暗号資産の取引は含まれません)。先物取引で差金等を決済した場合に、その事業所得、譲渡所得、雑所得(これらを「先物取引にかかる雑所得等」と言う)は、他の所得と区分して、所得税15%(住民税5%)の税率による申告分離課税となります。
これらに損失が生じて、この所得区分内で相殺しきれない場合は、他の所得との損益通算はできませんが、翌年以降3年間繰り越すことができできます。繰り越した損失は、繰り越された年の同じ先物取引にかかる雑所得等から、決められた手順で控除することができます。
《図中の(注)(※)の説明》
(注1)主な収入を揚げており、この他に「先物取引にかかる雑所得等」などがある。これらは他の雑所得と異なり、繰越控除が可能であったり、比例税率が適用されるなどの特別措置がある。また、各種所得の課税方式についても、図の課税方法のほか、源泉分離課税や申告分離課税が適用される場合がある。
(注2)各種所得の金額および課税所得の金額の計算上、一定の特別控除額等が適用される場合がある。
(注3)基準所得金額(下記※3の確定申告不要制度を適用しないで計算した合計所得金額から、損失の繰越控除および土地等の譲渡所得の特別控除による控除をした後の金額)から3.3億円を控除した金額に22.5%の税率を乗じた金額が納めるべき税額を超える場合には、その超える金額に相当する所得税を課す(令和7年分以後の所得税について適用)。
(※1)「その他の資産の譲渡収入」は、土地、建物および株式等以外の資産を譲渡した場合。50万円の特別控除は、所有期間が5年以内の短期譲渡所得の譲渡益から先に控除し、控除しきれない場合は長期控除所得の譲渡益から控除する。短期譲渡所得については、合計所得金額を求める計算において1/2されない。
(※2)勤続年数5年以下の者が支払いを受ける退職金(法人役員等以外の者が支払いを受ける退職金については、退職所得控除を控除した残額のうち300万円を超える部分に限る。)については、2分の1課税を適用しない。
(※3)「配当所得」、「特定公社債等の利子所得」および「上場株式等の譲渡所得」については、一定の要件の下、源泉徴収のみで納税を完了することができる(確定申告不要)。「上場株式等の配当所得」については、申告する際、総合課税(配当控除適用可)と申告分離課税のいずれかを選択可能。「上場株式等の譲渡損失」と「上場株式等の配当所得」および「特定公社債等の利子所得」との間は損益通算可能。
(※4)23歳未満の扶養親族や特別障害者である扶養親族等を有する者等については、平成30年度改正において行われた給与所得控除額が頭打ちとなる給与収入の850万円超への引き下げによる負担増が生じないよう、所得金額調整控除により調整。給与・年金の両方を有する者については、平成30年度改正において行われた給与所得控除・公的年金等控除から基礎控除への振替による負担増が生じないよう所得金額調整控除により調整。
(※5)これらの所得に係る損失額は他の所得金額と通算することができない。
(出典:「所得税計算の仕組む(イメージ)」(国税庁)(https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/income/024.pdf)を元に、ライフプラン・シム作成)
話題になっている”年収の壁”(記事「配偶者の年収の壁」 をご参照)のうち、主たる収入者(以降、納税者)側の手取り額を左右する”配偶者控除”と”扶養控除”について、現状の税制をご存知でしょうか。今後、見直された場合に、どのような影響を受けるかを知るためにも、ここで整理しておきましょう。
ここでの控除は、納税者と同一生計の親族の状況によって、納税者の課税所得から一定額を差し引けることを指し、いわゆる”所得控除”と呼ばれるものです。特に、親族の状況によって控除が受けられることから、”人的控除”とも呼ばれています。人的控除には、この他に”障害者控除”、”寡婦控除”、”ひとり親控除”、”勤労学生控除”があります。
1.配偶者控除
配偶者控除は、所得税が課税されない(非課税の)範囲で配偶者が働く場合に、納税者の所得から一定額が控除される仕組みです。具体的には、配偶者の所得が基礎控除額と同額の48万円以下の場合に適用され、給与収入に換算すると、48万円に給与所得控除の55万円を加えた103万円以下ということになります。
一方、控除される納税者側にも所得制限があって、所得900万円以下となっています。給与収入に換算すると、給与所得控除の195万円を加えた1,095万円となります。この両方の所得制限を満たした場合の配偶者控除の額は、所得税で38万円、住民税で33万円となり、控除の額が異なります。
なお、配偶者控除による節税額は、納税者の給与収入が500万円~650万円程度の(所得税率に10%が適用される)場合に、所得税では38万円×10%=3.8万円、住民税では(税率10%固定で)33万円×10%=3.3万円となり、合計で7.1万円となります。
(注)所得金額調整控除(記事「子どもがいる給与収入850万円超の人、給与と年金の所得がある人の所得金額調整控除」 をご参照)の適用がある場合は、納税者の給与収入換算額に15万円を加算してください。
2.配偶者特別控除
配偶者と納税者の所得が、それぞれ48万円と900万円を超えても、一定の範囲であれば、配偶者特別控除を受けることができます。配偶者特別控除の上限は、配偶者の所得が133万円、給与収入換算で201.6万円、納税者の所得が1,000万円、給与収入換算で1,195万円となっており、これを超えると控除は受けられません。その中間は、控除額が段階的に減少します。具体的な所得額と配偶者特別控除額の関係は、グラフをご参照ください。
なお、住民税についても所得制限は所得税と同じですが、控除額に上限があり、納税者の所得により、所得900万円以下では最大33万円、所得950万円以下では最大22万円、所得1,000万円以下では最大11万円に制限されます。
グラフから分かるように、配偶者控除と配偶者特別控除をあわせて、配偶者の給与収入が150万円(所得で95万円)を超えると、配偶者控除額が減ることから、一般に”150万円の壁”と呼ばれて意識されます。
3.扶養控除
扶養控除は、納税者の子どもや親などの親族が、年齢や所得などの一定の要件を満たす場合に、納税者の課税所得から一定額が控除される仕組みです。扶養控除の対象である扶養親族とは、その年の12月31日時点(納税者が死亡または出国した場合は、それぞれその時点)において、次の4つの要件を満たす親族です。
①配偶者以外の親族(6親等内の血族もしくは3親等内の姻族)、または里子(さとご)や市町村長から養護の委託を受けた老人であること。
②納税者と生計を一にすること。
③年間の合計所得が48万円以下であること。
④青色申告者の事業専従者としてその年に一度も給与の支払いを受けていない、または白色申告者の事業専従者でないこと。
②については、必ずしも同居を要件としません。生活費や教育費を常に送金していれば、別居していても同一生計と見なせます。
③の所得については、配偶者控除と同様に、給与収入に換算すると103万円以下ということになります。特に学生がアルバイトなどをする場合に”103万円の壁”として意識されます。
以降は、扶養親族の年齢による区分を示します。全体像はグラフをご参照ください。
(1)一般の扶養控除
16歳以上の扶養親族が対象で、所得税の控除額は38万円、住民税の控除額は33万円です。ただし、後に述べる特定扶養親族、老人扶養親族については、これらの控除額に上乗せがあり、30歳以上70歳未満の扶養親族については、居住要件があります。
16歳未満については、一定額を支給する児童手当制度の導入にともない、扶養控除の対象外となりました。令和6年からの児童手当の改正により、児童手当が18歳まで延長されたことから、今後、18歳までの扶養控除が引き下げられる可能性があります。
(2)特定扶養控除
19歳以上23歳未満(大学生相当)の扶養親族が対象で、所得税の控除額は63万円(一般の扶養控除額の38万円に25万円の上乗せ)で、住民税の控除額は45万円(一般の扶養控除額の33万円の12万円の上乗せ)です。
配偶者控除と同様に計算すると、特定扶養控除による節税効果は、納税者の給与収入が500万円~650万円程度の(所得税率に10%が適用される)場合に、所得税では63万円×10%=6.3万円、住民税では(税率10%固定で)45万円×10%=4.5万円となり、合計で10.8万円となります。
(3)30歳以上70歳未満
30歳以上70歳未満の扶養親族が、国内に居住する(国内に住所を有するか、または現在まで引き続き1年以上居住する場所を有する)場合には控除対象となりますが、国内に居住しない場合(非居住者という)には、次の3つの要件のいずれかを満たす必要があります(税制改革により、令和5年分以降から要件が厳格化。)
イ)留学により非居住者になった人。
ロ)障害者である人。
ハ)納税者からその年の生活費または教育費の支払いを38万円以上受けている人。
(4)老人扶養控除
70歳以上の扶養親族には老人扶養控除が適用され、所得税の控除額は48万円(一般の扶養控除に10万円の上乗せ)、住民税の控除額は38万円(一般の扶養控除に5万円の上乗せ)です。
なお、老人扶養親族のうち、納税者または配偶者の直系尊属(父母、祖父母など)で、同居している場合は同居老親等に該当し、所得税の控除額は58万円(老人扶養控除にさらに10万円の上乗せ)、住民税の控除額は45万円(老人扶養控除にさらに7万円上乗せ)になります。
4.控除の申請
給与収入者において、配偶者、扶養親族に異動があった場合には、すみやかに、給与支払者への届け出が必要になります。また、非居住者である親族の扶養の申告を行う場合は年末調整にて、その親族への送金関係の書類など、必要な書類を添付の上、給与支払者への届け出が必要になります。詳しくは、給与支払者にご確認ください。
また、年末調整後に異動があった場合は、一定期間内であれば、給与支払者への届け出により、年末調整の修正を行うことができます。その期間を過ぎてしまった場合は、確定申告により控除分の税金を還付することもできます。関連記事「所得税の還付申告」 もご参照ください。
(出典:「家族と税」(国税庁)(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/02_2.htm)を元にライフプラン・シム作成)
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