役立つコラムに新しい記事「配偶者控除と扶養控除」を投稿しました。話題になっている”年収の壁”のうち、納税者側の手取りを左右する”配偶者控除”と”扶養控除”について取り上げています。この機会に改めてご確認ください。
役立つコラムに新しい記事「配偶者控除と扶養控除」を投稿しました。話題になっている”年収の壁”のうち、納税者側の手取りを左右する”配偶者控除”と”扶養控除”について取り上げています。この機会に改めてご確認ください。
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話題になっている”年収の壁”(記事「配偶者の年収の壁」 をご参照)のうち、主たる収入者(以降、納税者)側の手取り額を左右する”配偶者控除”と”扶養控除”について、現状の税制をご存知でしょうか。今後、見直された場合に、どのような影響を受けるかを知るためにも、ここで整理しておきましょう。
ここでの控除は、納税者と同一生計の親族の状況によって、納税者の課税所得から一定額を差し引けることを指し、いわゆる”所得控除”と呼ばれるものです。特に、親族の状況によって控除が受けられることから、”人的控除”とも呼ばれています。人的控除には、この他に”障害者控除”、”寡婦控除”、”ひとり親控除”、”勤労学生控除”があります。
1.配偶者控除
配偶者控除は、所得税が課税されない(非課税の)範囲で配偶者が働く場合に、納税者の所得から一定額が控除される仕組みです。具体的には、配偶者の所得が基礎控除額と同額の48万円以下の場合に適用され、給与収入に換算すると、48万円に給与所得控除の55万円を加えた103万円以下ということになります。
一方、控除される納税者側にも所得制限があって、所得900万円以下となっています。給与収入に換算すると、給与所得控除の195万円を加えた1,095万円となります。この両方の所得制限を満たした場合の配偶者控除の額は、所得税で38万円、住民税で33万円となり、控除の額が異なります。
なお、配偶者控除による節税額は、納税者の給与収入が500万円~650万円程度の(所得税率に10%が適用される)場合に、所得税では38万円×10%=3.8万円、住民税では(税率10%固定で)33万円×10%=3.3万円となり、合計で7.1万円となります。
(注)所得金額調整控除(記事「子どもがいる給与収入850万円超の人、給与と年金の所得がある人の所得金額調整控除」 をご参照)の適用がある場合は、納税者の給与収入換算額に15万円を加算してください。
2.配偶者特別控除
配偶者と納税者の所得が、それぞれ48万円と900万円を超えても、一定の範囲であれば、配偶者特別控除を受けることができます。配偶者特別控除の上限は、配偶者の所得が133万円、給与収入換算で201.6万円、納税者の所得が1,000万円、給与収入換算で1,195万円となっており、これを超えると控除は受けられません。その中間は、控除額が段階的に減少します。具体的な所得額と配偶者特別控除額の関係は、グラフをご参照ください。
なお、住民税についても所得制限は所得税と同じですが、控除額に上限があり、納税者の所得により、所得900万円以下では最大33万円、所得950万円以下では最大22万円、所得1,000万円以下では最大11万円に制限されます。
グラフから分かるように、配偶者控除と配偶者特別控除をあわせて、配偶者の給与収入が150万円(所得で95万円)を超えると、配偶者控除額が減ることから、一般に”150万円の壁”と呼ばれて意識されます。
3.扶養控除
扶養控除は、納税者の子どもや親などの親族が、年齢や所得などの一定の要件を満たす場合に、納税者の課税所得から一定額が控除される仕組みです。扶養控除の対象である扶養親族とは、その年の12月31日時点(納税者が死亡または出国した場合は、それぞれその時点)において、次の4つの要件を満たす親族です。
①配偶者以外の親族(6親等内の血族もしくは3親等内の姻族)、または里子(さとご)や市町村長から養護の委託を受けた老人であること。
②納税者と生計を一にすること。
③年間の合計所得が48万円以下であること。
④青色申告者の事業専従者としてその年に一度も給与の支払いを受けていない、または白色申告者の事業専従者でないこと。
②については、必ずしも同居を要件としません。生活費や教育費を常に送金していれば、別居していても同一生計と見なせます。
③の所得については、配偶者控除と同様に、給与収入に換算すると103万円以下ということになります。特に学生がアルバイトなどをする場合に”103万円の壁”として意識されます。
以降は、扶養親族の年齢による区分を示します。全体像はグラフをご参照ください。
(1)一般の扶養控除
16歳以上の扶養親族が対象で、所得税の控除額は38万円、住民税の控除額は33万円です。ただし、後に述べる特定扶養親族、老人扶養親族については、これらの控除額に上乗せがあり、30歳以上70歳未満の扶養親族については、居住要件があります。
16歳未満については、一定額を支給する児童手当制度の導入にともない、扶養控除の対象外となりました。令和6年からの児童手当の改正により、児童手当が18歳まで延長されたことから、今後、18歳までの扶養控除が引き下げられる可能性があります。
(2)特定扶養控除
19歳以上23歳未満(大学生相当)の扶養親族が対象で、所得税の控除額は63万円(一般の扶養控除額の38万円に25万円の上乗せ)で、住民税の控除額は45万円(一般の扶養控除額の33万円の12万円の上乗せ)です。
配偶者控除と同様に計算すると、特定扶養控除による節税効果は、納税者の給与収入が500万円~650万円程度の(所得税率に10%が適用される)場合に、所得税では63万円×10%=6.3万円、住民税では(税率10%固定で)45万円×10%=4.5万円となり、合計で10.8万円となります。
(3)30歳以上70歳未満
30歳以上70歳未満の扶養親族が、国内に居住する(国内に住所を有するか、または現在まで引き続き1年以上居住する場所を有する)場合には控除対象となりますが、国内に居住しない場合(非居住者という)には、次の3つの要件のいずれかを満たす必要があります(税制改革により、令和5年分以降から要件が厳格化。)
イ)留学により非居住者になった人。
ロ)障害者である人。
ハ)納税者からその年の生活費または教育費の支払いを38万円以上受けている人。
(4)老人扶養控除
70歳以上の扶養親族には老人扶養控除が適用され、所得税の控除額は48万円(一般の扶養控除に10万円の上乗せ)、住民税の控除額は38万円(一般の扶養控除に5万円の上乗せ)です。
なお、老人扶養親族のうち、納税者または配偶者の直系尊属(父母、祖父母など)で、同居している場合は同居老親等に該当し、所得税の控除額は58万円(老人扶養控除にさらに10万円の上乗せ)、住民税の控除額は45万円(老人扶養控除にさらに7万円上乗せ)になります。
4.控除の申請
給与収入者において、配偶者、扶養親族に異動があった場合には、すみやかに、給与支払者への届け出が必要になります。また、非居住者である親族の扶養の申告を行う場合は年末調整にて、その親族への送金関係の書類など、必要な書類を添付の上、給与支払者への届け出が必要になります。詳しくは、給与支払者にご確認ください。
また、年末調整後に異動があった場合は、一定期間内であれば、給与支払者への届け出により、年末調整の修正を行うことができます。その期間を過ぎてしまった場合は、確定申告により控除分の税金を還付することもできます。関連記事「所得税の還付申告」 もご参照ください。
(出典:「家族と税」(国税庁)(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/02_2.htm)を元にライフプラン・シム作成)
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