役立つコラムに新しい記事「社会保険料の壁の撤廃と上限の引上げ」を投稿しました。今後3年以内に「106万円の壁」が撤廃されます。また、高収入者の厚生年金保険料の上限が段階的に引上げられます。詳しくは記事をお読みください。
役立つコラムに新しい記事「社会保険料の壁の撤廃と上限の引上げ」を投稿しました。今後3年以内に「106万円の壁」が撤廃されます。また、高収入者の厚生年金保険料の上限が段階的に引上げられます。詳しくは記事をお読みください。
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令和7年度の年金制度改正により、厚生年金保険や健康保険などの社会保険に加入となる賃金要件、いわゆる「106万円の壁(社会保険料の壁)」が3年以内に撤廃されることになりました。これによって、最低賃金の引上げに伴い、年収を気にしながら働き控えをする必要はなくなります。
また、法人の企業規模要件も10年かけて段階的に撤廃され、個人事業所の業種制限も4年後に撤廃されることになり、社会保険への加入対象が拡大されます。これによって新たに社会保険に加入する事業主、労働者には、3年に限って保険料の支援策が用意され、移行しやすくしています。とは言え、期間は限られますので、その間に賃金を増やすなどの対策が、労使ともに求められることになります。
1.社会保険加入への賃金要件の撤廃
これまで、パート・アルバイトや契約社員などの短時間労働者が社会保険に加入となる要件のひとつとして、月収が88,000円以上という賃金要件がありました。これを年収に換算すると1,056,000円(約106万円)となり、これを超えると社会保険料を徴収されて手取りが減ることから、「106万円の壁」と言われてきました。
今回の改正では、全国の最低賃金の状況を見ながら、この賃金要件が3年以内に撤廃されることになりました。これによって、最低賃金が引上げられたからと言って、労働時間を減らすような働き控えは減ることが期待されます。学生以外で、2ヶ月を超えて継続して働く労働者側から見た社会保険加入要件としては、週の勤務が20時間以上(残業時間を除く)、が残ることになります。
2.社会保険加入への企業規模要件の段階的撤廃
次に、事業主側から見た企業規模要件ですが、現在は従業員数51人以上の法人が社会保険加入の対象となっています。この企業規模要件が10年かけて段階的に緩和され、2035年10月に撤廃されます。
具体的には、表(上)に示すように、2027年10月からは36人以上に、2029年10月からは21人以上に、2032年10月からは11人以上に、そして2035年10月には10人以下の全ての法人も対象となり、企業規模要件は撤廃されることになります。
3.個人事業所の社会保険加入対象の拡大
現在、個人事業所については、常時5人以上の従業員がいる事業所で、法律で定める17業種のみが社会保険加入の対象となっています。2029年10月からは、この業種制限が撤廃され、これまで対象ではなかった農業、漁業、林業や、宿泊業、飲食サービス業など、すべての業種が対象となります。
なお、2029年10月時点で既に存在している、17業種以外で5人以上の個人事業所については、当分の間、対象外になります。また、5人未満の個人事業所については、これまで通り対象外です。
4.短時間労働者の保険料に対する時限的支援
社会保険料は基本的に労使折半ですが、今回の企業規模要件や業種制限の撤廃により、新たに社会保険の対象となる短時間労働者の保険料の一部を、事業主が3年間追加負担した場合に、国などがその全額を支援して、事業主と労働者の負担を軽減します。
労働者の賃金によって労働者の負担率が異なり、月8.8万円(年収106万円)では、労働者は本来の負担の25/50(半分)を負担すればよく、賃金が増えるにしたがって段階的に負担率が上昇し、月13.4万円(年収161万円)では50/50(全額)を負担することになります。ただし、3年目は軽減率が半減となります。賃金レンジごとの負担率は、表(下)をご覧ください。
例えば、標準報酬月額が88,000円の短時間労働者(40歳~64歳)は、厚生年金保険料が月額8,052円(保険料率9.15%)、健康保険料(協会健保の東京都の場合)が月額5,060円(保険料率5.75%)の合わせて13,112円(合計保険料率14.9%)が徴収されますが、これが最初の2年間は50%減の6,556円に、3年目は25%減の9,834円に軽減されます。
5.標準報酬月額の上限の段階的引上げ
厚生年金の保険料や年金額の計算に使う標準報酬月額の上限が、65万円から75万円に引上げられます。具体的には2027年9月からは68万円、2028年9月からは71万円、2029年9月からは75万円に段階的に引上げられます。これにより、高収入の方の保険料が上がるものの、将来受け取れる年金額も増加します。
例えば、標準報酬月額が今回の改正で上限75万円に該当する方は、現在(上限65万円)よりも保険料が月額+9,100円となりますが、この上限の引上げに10年間該当したとすると、将来受け取れる年金額は月額約+5,100円となり、終身で受け取れます。一定の前提の下での試算では、社会保険料控除を加味すると、保険料の正味の増加額は月額約+6,100円、年金額の税引き後の増加額は月額約+4,300円となります。
(出典:「年金制度改正法が成立しました」(厚労省)(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00017.html)を元に、ライフプラン・シム作成)
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