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遺族厚生年金の受給要件と受給対象者


 2024/08/30

 [年金・退職金]

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古い医療保険の解約返戻金に注目


 2024/07/24

 [保険・医療]

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健康保険任意継続の2年縛り廃止


 2024/06/13

 [保険・医療]

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不動産相続での新しい制度


 2024/05/14

 [不動産]

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洗濯乾燥手段のコスト比較


 2024/04/24

 [ライフプラン]

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国民年金の年金額を増やす方法


 2024/04/02

 [年金・退職金]

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年金受給額の計算の仕方


 2024/03/27

 [年金・退職金]

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外貨建保険の注意点


 2024/03/08

 [資産運用]

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遺族厚生年金の受給要件と受給対象者
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 記事「遺族年金」 で、遺族年金の概要を説明していますが、遺族年金が受け取れるかどうかは、亡くなった方の公的年金への加入状況(受給要件)と、受け取れる遺族の範囲(受給対象者)であるかに依存します。特に、比較的手厚い給付が受けられる遺族厚生年金は、万一に備えて加入する生命保険の保険金額にも大きく影響しますので、遺族厚生年金の受給要件と受給対象者について、ここで確認しておきましょう。

遺族厚生年金の受給要件

 次の①~⑤のいずれかの要件を満たしている場合に、遺族(受給対象者)に遺族厚生年金が支給されます。

①厚生年金保険の被保険者である間に死亡したとき(会社員や公務員で、厚生年金保険に加入している方が死亡したとき)
②厚生年金保険の被保険者である間に初診日がある病気やけがが原因で、初診日から5年以内に死亡したとき
③1級・2級の障害厚生(共済)年金を受け取っている方が死亡したとき
④老齢厚生年金の受給権者であった方が死亡したとき(老齢厚生年金を請求して確定した方、老齢厚生年金を受け取っている方が死亡したとき)
⑤老齢厚生年金の受給資格を満たした方が死亡したとき(老齢厚生年金を受け取ることができる加入期間の要件を満たしていて、まだ老齢厚生年金を請求していない方が死亡したとき)

 ここで、①②については、死亡日の前日において、厚生年金の保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が、被保険者期間の3分の2以上あることが必要。(ただし、死亡日が令和8年3月末までのときは、死亡した方が65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納が無ければよいことになっています。)

 ④⑤については、保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間(注1)を合算した期間が25年以上ある方に限られます。

(注1)合算対象期間(カラ期間)・・・平成3(1991)年3月以前に、学生であるため国民年金に任意加入しなかった期間や、昭和36(1961)年4月以降、海外に住んでいた期間など。

遺族厚生年金の受給対象者

 死亡した方に生計を維持されていた(生計を同じくし、前年の収入が850万円未満もしくは所得が655万5千円未満である)、以下の遺族のうち、最も優先順位の高い方が受け取ることができます。なお、遺族基礎年金を受給できる遺族の方は、あわせて受給できます。

①子のある配偶者(※1)
②子(18歳になった年度の3月31日までにある方、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある方で、婚姻をしていない方)(※2)
③子のない配偶者(※3)
④父母(※4)
⑤孫(子の年齢条件に同じ)
⑥祖父母(※4)

 優先順位は、①②>③>④>⑤>⑥。

(※1)子のある夫は、55歳以上である方に限り受給できます。
(※2)子のある妻、または子のある55歳以上の夫が遺族厚生年金を受け取っている間は、子には遺族厚生年金は支給されません。子のある55歳未満の夫の場合は、夫に遺族基礎年金が、子に遺族厚生年金が支給されます。
(※3)子のない30歳未満の妻は、5年間のみ受給できます。また、子のない夫は、55歳以上である方に限り受給できますが、受給開始は60歳からとなります(ただし、遺族基礎年金をあわせて受給できる場合に限り、55歳から60歳の間であっても遺族厚生年金を受給できます)。
(※4)父母または祖父母は、55歳以上である方に限り受給できますが、受給開始は60歳からとなります。

 なお、遺族厚生年金を受け取れる権利(受給権)は、次の場合に失効し、支給されなくなります。受給者が婚姻したとき、子が養子となったとき(祖父母等を除く)、死亡した者と離縁したとき、受給者が死亡したとき、受給者が子や孫の場合に年齢要件を満たさなくなったとき、養子となったとき(祖父母等を除く)、子のない30歳未満の妻が受給開始して5年が経過したとき、遺族基礎年金も受給していた妻が30歳未満で(子が生計を同じくしなくなったなどにより)遺族基礎年金の受給権を失ってから5年が経過したとき、など(2025/3/22 一部修正)

受給要件の男女差と見直しの動き

 現行制度では、夫が主たる生計者で、妻は夫に生計を維持され、死別した妻が就労して生計を立てるのは困難であるとの社会経済状況のもと、受給要件に男女差が設けられました。

 こうしたことから、遺族厚生年金の受給に最も制限を受けるのは「55歳未満の夫」で、遺族厚生年金は受給できません。ただし、その場合でも、子(注2)がいる場合には、子が遺族厚生年金を受給できます。次に「子のない30歳未満の妻」は、5年間のみの受給に制限されます。その次は、子のない55歳以上の夫、父母、祖父母で、受給開始が60歳からに制限されます。

 また、夫が死亡したときに子(注2)のない妻の年齢、もしくは子(注2)のある妻の遺族基礎年金の受給が終了した年齢が、40歳以上65歳未満の場合に、遺族厚生年金に上乗せされる「中高齢寡婦加算」の制度があります。

(注2)18歳になった年度の3月31日までにある方、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある方で、婚姻をしていない方。

 このような現行制度での受給要件に対して、女性の就労状況の変化、共働き世帯の増加などにより、特に子のない夫婦で差があるのは不公平であるとの意見から、見直しの気運が高まっています。

 これにより、子のない妻が無期受給となる年齢の引上げ(30歳→60歳)や、子のない夫(60歳未満)の有期受給の設定、中高齢寡婦加算の廃止、生計維持の収入要件の廃止、有期受給額の加算などが検討されており、今後のさらなる議論に注目が集まっています。ただし、改正により、現行制度よりも受給額が大幅に減るケースもあることから、長い時間をかけて段階的に移行することが検討されています。

関連記事

「遺族基礎年金の受給要件と受給対象者」

「加給年金、遺族年金の配偶者収入要件」

(出典:「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」(日本年金機構)(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/izokunenkin/jukyu-yoken/20150424.html)、
「遺族年金制度の見直しについて」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001281516.pdf)を元にライフプラン・シム作成)


古い医療保険の解約返戻金に注目
TumisuによるPixabayからの画像

 医療保険には、保険料が掛け捨てタイプのものと、死亡保障がついていて、解約時に解約返戻金が戻ってくるタイプのものがあります。昭和の頃に加入した医療保険の中には、予定利率が高く、保険料がお得で、解約返戻金の返戻率も高い、いわゆるお宝保険があります。30~40年も保険料を支払っていると、返戻率が70~80%近くにもなるケースもありますが、そこをピークにその後は返戻率が下がってくるのが一般的です。

 古い医療保険の保障内容は、手術給付金や入院給付金がほとんどで、放射線治療や抗がん剤治療などを通院で受けることが増えている現在の治療方法では、給付金が出ないケースもあります。そこで、古い医療保険(主契約)に通院給付金や放射線治療給付金の特約を付加するなどの保険も現れていますが、主契約の保険料と比較して、特約の保険料は高くなりがちです。

 そんな場合には、古い医療保険の解約返戻金を確認してみてください。返戻率が高ければ、解約することで思わぬ一時金が得られる可能性があります。ただし、既に給付金を受け取っている場合には、解約返戻金の額が減るケースもありますのでよく確認してください。

 なお、解約返戻金は一時所得として扱われますが、一般的に医療保険の解約返戻金は支払保険料を上回ることがなく、そもそも利益は生じませんので所得税はかかりません。それどころか、支払保険料が解約返戻金を上回った分の損失は、同じ年に他の満期保険金などがある場合、その一時所得との内部通算が可能ですので、満期保険金にかかる税金を節税できる可能性があります。ただし、掛け捨て保険のような収入がないものは内部通算できませんので注意してください。(2025/01/07 追記)

 そして、今よりも保障を手厚くしたいのであれば、お宝保険に特約を付ける場合と、お宝保険を解約して得た返戻金も活用して、新しい医療保険に加入する場合の、保障範囲と保険料の支払総額を比較してみるとよいでしょう。逆に、今より保険料を抑えたいのであれば、お宝保険の全部または一部を解約して、解約返戻金を給付金の前払いだと思って、もしもの場合に備えてもよいでしょう。ただし、全く医療保険に加入していないと、万一の時に資産を大きく取り崩さなければならないリスクがあることは言うまでもありません。

 なお、医療保険への加入や特約の付加には一般的に告知が必要であり、病歴や健康状態によっては加入できないことや、加入できても保険料が通常より高く設定されることがありますので、注意が必要です。また、がん保険には90日程度の免責期間が設けられていることが多く、保険を解約して新しい保険に加入する場合は、保障の空白期間に注意して解約するタイミングを決めると安心です。

 いずれにしても、あわてて解約したりせずに、加入している保険の保障範囲や保険金額が不足しているのか、重複していたり過大なのか、保険料の支払いを減らしたいのか、まだ余裕があるのかなど、どうしたいのかをはっきりさせた上で、新しい保険に加入できるのか、保険料はどうなるのか、空白期間はないかを保険代理店などに相談して検討してください。

関連記事
「満期保険金、解約返戻金の所得控除」


健康保険任意継続の2年縛り廃止
Michael SchwarzenbergerによるPixabayからの画像

 被雇用者が退職後に、それまで加入していた健康保険(全国健康保険協会または健康保険組合、共済組合)に、最大2年間継続して加入することができる任意継続があります。これまで、任意継続した場合には、再就職により他の健康保険に加入するケース以外では、2年が満了するまで途中で脱退することができませんでした。このため、任意継続での2年間の保険料と、国民健康保険の2年間の保険料を比較するなどして、安い保険料になる医療保険を選択していたことと思います。

 しかし、法改正により、2022年1月から任意継続における2年縛りが廃止され、任意継続の資格喪失の要件に、「任意継続被保険者でなくなることを希望する旨を申し出たとき」が追加されました。これによって、任意継続に加入後、2年経過しないうちに、前年の所得が減ったタイミングなどで国民健康保険に加入することができるようになりました。

 被雇用者が退職後に選択できる医療保険は、
①再就職先の健康保険への加入、
②退職時の健康保険の任意継続、
③国民健康保険への加入、
④家族の健康保険の被扶養者になる、
の4つになります。

 再就職先の健康保険に加入できるかどうかは、法人の事業所や、従業員5人以上の個人事業所(農林魚業、サービス業等を除く)でフルタイム、もしくはフルタイムの3/4以上働く方か、パート、アルバイトや非常勤でも従業員101人以上(令和6年10月からは51人以上)、週20時間以上勤務、月額88,000円以上の収入、2ヶ月以上の勤務継続見込み、学生ではないことなどが条件となります。(2024/7/3 下線部追記)

 したがって、短時間のパート、アルバイトや、非常勤などの場合は、新たな健康保険に加入できない可能性があります。その場合は、②③④のどれかを選択することになりますが、他社で働いていても、②の任意継続を選択することも可能です。なお、新たな健康保険に加入した場合には、新たな標準報酬月額に応じて保険料も見直されます。

 任意継続の場合の保険料は、退職時の標準報酬月額と、全国健康保険協会(協会けんぽ)の場合は標準報酬月額30万円、健康保険組合、共済組合の場合は組合毎の平均標準報酬月額(一般的には40万円前後)の、どちらか少ない方を基に算出された保険料の全額負担(雇用者との折半ではない)になりますが、賞与にかかる保険料負担はありません。ただし、協会けんぽの場合でも、都道府県によって保険料に差が生じます。

 例えば、令和6年度の東京都協会けんぽの場合では、標準報酬月額30万円(22等級)の保険料は月額34,740円、年額416,880円です。退職時の標準報酬月額が30万円以上あっても、扶養家族がいても、保険料がこれ以上に増えることはありません。

 一方、国民健康保険の保険料には均等割分と所得割分があり、後者は前年の所得から住民税の基礎控除である43万円を差し引いた保険料算定基礎を基に計算されますが、自治体により保険料に差が生じます。例えば東京都世田谷区に在住で、賞与を含む前年の年収が360万円の場合、妻は無収入でも均等割分が加算され、令和6年度の国民健康保険の世帯保険料は、40歳~64歳のケースで442,585円になります。

 なお、介護分(40歳~64歳の場合)を合わせた保険料の世帯上限額は全ての自治体で同一で、令和6年度では、世帯年収が1,160万円以上の場合に保険料の世帯上限である106万円に達します。したがって、高所得者だった方は、任意継続を経て、年間所得が少なくなった翌年度から国民健康保険に加入するのが、トータルの保険料を少なくできるでしょう。

 最後に、家族の健康保険の被扶養者になる要件を満たすのであれば、保険料を無料にすることができます。被扶養者の要件は主に収入ですが、前年の年収ではなく、これからの1年間の見込み収入で判定されます。概ね、被扶養者が60歳未満の場合は収入130万円未満、60歳以上もしくは障害者の場合は収入180万円未満であることが必要です(詳しくは、「健康保険の被扶養者(扶養家族)の要件」 をご参照ください)。したがって、年金を受給し始めたなどで、その後の収入が被扶養者の要件を満たさないことが分かった時点で、被扶養者から外れなければなりません。

 いずれにしても、保険料をよく比較することが大事ですので、勤務先の健康保険で任意継続した場合の保険料、お住まいの自治体の国民健康保険の保険料などを計算してみてください。保険料にあまり差が無ければ、サービスが手厚い健康保険を選んでもよいでしょう。


不動産相続での新しい制度
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 所有者が不明の不動産が増加して社会問題になっていることから、2つの新しい制度が始まりました。令和6年4月1日から開始された不動産の相続登記の義務化と、令和5年4月27日から開始された相続土地国庫帰属制度です。特に、相続登記の義務化は、不動産を相続した方すべてに関係し、正当な理由がなく登記をしないと10万円以下の過料が科せられる可能性がありますので、よく理解しておく必要があります。

不動産の相続登記の義務化

 対象は相続した不動産(土地、建物)で、2つのケースにより手続きが異なります。1つ目は、遺言で不動産を取得した相続人の場合で、取得したことを知ってから3年以内に、法務局にて相続登記(所有権移転登記)を行う必要があります。正当な理由がなく登記をしない場合には、過料が科せられる場合があります。

 2つ目は、遺言がない場合で、相続人が相続したことを知ってから3年以内に、法務局にて相続登記もしくは相続人申告登記を行う必要があります。相続人による遺産分割協議などで、不動産を取得する人が決まった場合は、その人が相続登記を行います。しかし、遺産分割協議がまとまらない、あるいは争いが起きているなどの場合は、各相続人または複数人が連名でいったん相続人申告登記をすることで、時間的猶予が与えられます。その後、遺産分割協議がまとまった日から3年以内に相続登記をすれば、過料は免れます。

 なお、1人で相続した場合は単独名義になりますが、複数人で相続した場合は共有名義になります。申請の手続きは、弁護士または司法書士に代行を依頼することもできます。単純な単独名義であれば、ご自分で手続することも難しくありません。登記には登録免許税(一定の要件を満たせば免税となる)、戸籍謄本などの必要な書類の取得にかかる費用、司法書士、弁護士に代行を依頼した場合はその費用がかかります。

 また、注意が必要なのは、令和6年4月1日以前に相続した方も義務化の対象になることです。その場合は、制度開始日から3年以内の令和9年3月31日までに相続登記を行う必要があります。

相続土地国庫帰属制度

 予期せず相続した土地などで、利用の予定が無く、負担が増していて手放したいと考えている土地の所有権を、国庫に帰属させることができる制度です。その土地が、通常の管理や処分をするよりも、多くの費用や労力がかかる土地ではないことが要件であり、一律の審査手数料と、算出された10年分の標準的な負担金(管理費用)を納付する必要があります。負担金は、おおむね面積によらず20万円ですが、市街化区域内の宅地、農地や、管理に費用がかかる森林などは面積に応じて算出されます。

 なお、土地の単独所有者だけでなく、共有持分の共有者全員で共同申請することも可能です。また、制度開始前に取得した土地も対象です。

 具体的に引き取ることができない土地とは、以下の通りです。

(1) 申請することができない土地

A 建物がある土地
B 担保権や使用収益権※1が設定されている土地
C 他人の利用が予定されている土地
D 土壌が汚染されている土地
E 境界が明らかでない土地、所有権の存否や範囲について争いがある土地

※1 使用収益権:地上権、賃借権など

(2) 承認を受けることができない土地

A 一定の勾配、高さの崖※2があって、管理に過分な費用、労力がかかる土地
B 土地の管理、処分を阻害する有体物※3が地上にある土地
C 土地の管理、処分のために、除去しなければならない有体物※4が地下にある土地
D 隣接する土地の所有者等との訴訟によらなければ管理、処分ができない土地
E その他、通常の管理、処分に当たって過分な費用、労力がかかる土地

※2 崖:勾配30度以上+高さ5メートル以上
※3 地上の有体物:工作物、車両又は樹木その他(通常の管理、処分可能な柵や森林などは除く)
※4 地下の有体物:産業廃棄物、建築資材、建物の基礎、水道管、浄化槽、井戸、大きな石など

(出典:「相続登記の申請義務化特設ページ」(法務省)(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00590.html)、
「相続土地国庫帰属制度について」(法務省)(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00454.html)を元に、ライフプラン・シム作成)


洗濯乾燥手段のコスト比較
拡大可

 我が家では、2代目のドラム式洗濯乾燥機が約12年稼働しています。異音などはなく動作するものの、劣化箇所が見つかったことから、コールセンターに確認したところ修理不能とのことで、いつ壊れるかを心配しながら買い替えを検討中です。洗濯乾燥機の機種を選定しているうちに、ドラム式でよいのか、それともタテ型がよいのか、浴室乾燥も含めてどの洗濯・乾燥のやり方が低コストなのかが気になってきました。また、場合によってはコインランドリーも利用せざるを得ないことから、参考のためコインランドリーの料金とも比較しました。

 表は、ドラム式洗濯乾燥機、タテ型洗濯乾燥機の本体価格と水道代、電気代などの運転コスト、浴室(ガス)乾燥機の運転コスト、コインランドリーの料金を、一定の条件で比較したものです。洗濯乾燥機は、機能・性能がほぼ同レベルで洗濯容量12㎏、乾燥容量6㎏の同一メーカー製品を一例として掲載しました。発売から半年以上経過した、平均的な販売価格を掲載しています。また、洗濯乾燥機の寿命は10年としました。

 1日1人あたり平均1.5㎏の洗濯物が発生することから、2人分で2日に1回(0.5回/日)、6㎏の洗濯をする条件で比較しています。10年間で洗濯回数1,825回になり、これを用いて1回あたりの機器コスト(本体価格/回)を計算しています。浴室乾燥機は、東京ガスが示している、2㎏の洗濯物が100%乾燥するまでの強運転でのコスト60円/h(電気代、ガス代の内訳は不明)を使用し、6㎏の乾燥時間を3倍の3時間としました。コインランドリーの料金も、小型洗濯乾燥機(乾燥容量4~8㎏)の一般的な料金を掲載しました。なお、水道代260円/m3、電気代31円/kwh、ガス代162円/m3の単価は、資源エネルギー庁のホームページに掲載の値を使用しました。

 まず、ドラム式とタテ型の比較ですが、第一の違いは使用水量です。ドラム式は叩き洗いで汚れを落とすのに対して、タテ型は水中でのもみ洗いで汚れを落とすため、必然的にタテ型の方が使用水量が多くなり、水道代はドラム式の1.7倍以上になっています。また、洗濯時間もタテ型の方が長めで、電気代もやや多くなります。ただし、タテ型の方が頑固な汚れも落ちるといったメリットがあります。

 第二の違いは乾燥にかかる時間とコストです。ドラム式はヒートポンプ方式という省エネ方式を採用しており、このため乾燥にかかる時間が1時間ほどと短く、電気代もかなり抑えられます。一方、タテ型はヒーター乾燥方式を採用しており、乾燥にかかる時間も3倍近い3時間弱ほどかかり、電気代も2倍以上です。なお、乾燥時に冷却のために多少の水を使用する方式もありますが、ここでは運転コストから除外しています。

 グラフは、洗濯回数に応じたドラム式とタテ型のトータルコストの差を示しています。10年で1,825回洗濯する条件であれば6割で乾燥機を使えば、10年で3,000回洗濯する条件であれば2割で乾燥機を使えば、トータルコストはほぼ同程度になります。洗濯性能重視で乾燥機の使用頻度が少ないならタテ型、乾燥機を頻繁に使用するならドラム式でしょうか。

 一方、浴室乾燥機ですが、60円/hというコストは、浴室の広さが1.6m×2.4m(1624サイズ)での条件となっており、広めの浴室での条件になっています。実際には、厚手のものと薄手のもので干す場所を選び、様子を見ながら時間を追加したり、場所を入れ替えたりすることで乾燥時間を短縮でき、6㎏が2時間で乾くとしても120円で、タテ型よりもコストがかかります。

 また、浴室乾燥機は副次的な機能で、24時間換気、サウナ、暖房、涼風などの住環境・浴室環境の快適化が主たる目的で設置される場合が多いでしょう。特に24時間換気が義務化された2003年以降のマンションでは、購入時に設置されていると思います。このため、機器コストは計算に含めていませんが、買い替え時には洗濯乾燥機が買えるくらいの費用がかかります。

 コスト高の浴室乾燥機ですが、見えない場所に干せるメリットや、吊るした状態で乾かすためしわが付きにくく、乾燥が終わった後もそのままにしておける、衣類が傷みにくいなどのメリットがあります。浴室での送風乾燥との組み合わせや、屋外での乾きが悪かったら短時間乾燥するなど、部分的に使用すると運転コストも下げられます。メインで使うというより、限定して使うという感じでしょうか。

 最後に、コインランドリーの料金を掲載しましたが、長期間コインランドリーを利用すると、洗濯乾燥機や浴室乾燥機よりもコストがかかることは間違いありません。それでも、コインランドリーを利用すると、短時間で済むメリットがあります。時間に余裕がない場合も利用する理由の一つになるでしょう。頻繁にコインランドリーを利用する場合は、なるべく大型の洗濯乾燥機でまとめて洗濯・乾燥する方がコストは抑えられます。

 これを機会に、洗濯乾燥機、浴室乾燥機、コインランドリーのそれぞれの特性を踏まえ、あなたのライフスタイルに合った最適な組み合わせ、使い方を考えてみてはいかがでしょうか。

(出典:「無理のない省エネ節約」(資源エネルギー庁)(https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/howto/cleaning/index.html)の”省エネ効果の算出根拠”にある”金額換算係数”を元に計算)


国民年金の年金額を増やす方法
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国民年金の保険料と年金額

 20歳以上60歳未満の自営業者や学生、無職の方など、雇用されていない方が国民年金に加入します(国民年金第1号被保険者という)。10年以上加入して定額の保険料を納付すると、原則65歳から、保険料を納めた月数(加入月数)に比例した年金額がもらえます。最長で40年間(480ヶ月)加入することができ、その場合の年金額が満額(上限)となります。

 保険料、および年金額の満額は、物価上昇率に応じて年度ごとに見直されます。参考までに、令和6年度の保険料は月額16,980円(年額203,760円)、年金額の満額は月額68,000円(年額816,000円)です。

付加年金

 国民年金第1号被保険者については、保険料を納付する際に付加年金を申し込んで、毎月400円の保険料を上乗せすると、毎年の年金額に200円×付加保険料納付月数が上乗せされます。

 例えば1年間で付加保険料を4,800円納付すると、毎年の年金額に2,400円が上乗せされます。すなわち、年金を2年受給すれば、付加保険料の元が取れることになります。最大40年で192,000円の付加保険料を納めれば、毎年の年金額に96,000円が上乗せされます。

 ただし、付加年金は申し込んだ時点から保険料を納付することになるため、過去にさかのぼって付加年金を増やすことはできません。また、付加年金を申し込むと、原則として途中で中止することはできません。

 国民年金第1号被保険者でも、国民年金基金に加入して年金額を上乗せする方は、付加年金を利用できません。厚生年金の被保険者(国民年金第2号被保険者)や、扶養する配偶者(国民年金第3号被保険者)も、間接的に国民年金に加入しますが、付加年金を利用できません。

保険料の免除制度、納付猶予制度

 収入が減ったり、失業するなどして保険料を納付するのが困難な場合には、申請することで保険料の一部もしくは全部を免除したり、保険料の納付を猶予する制度があります。免除、猶予された期間も受給資格期間にカウントされ、10年以上で年金を受給する権利(年金受給権)を得ることができます。

 ただし、保険料が免除された割合と期間によって年金額が減少しますが、全額免除の期間でも、保険料を納付したときの2分の1(平成21年3月までの免除期間は3分の1)が保障されます。なお、猶予の期間は受給額に反映されません。

 同様に、20歳以上の学生で保険料を納付するのが困難な場合には、学生納付特例を申請することで納付が猶予されます。この場合も、受給資格期間にカウントされますが、受給額に反映されません。

 これらの申請は、2年1ヶ月前まで遡って申請することができますが、それ以前の分は申請することができません。申請をしないで保険料を納めずにいると、万一の場合に受け取ることのできる障害年金や遺族年金が受け取れない可能性があります。年金は老後に受け取るだけのものではありませんので、注意してください。

 他に、産前産後期間の原則4ヶ月間も、届け出により保険料の納付が免除されますが、この場合は全額納付したものと見なされ、年金額に反映されます。

保険料の追納制度

 国民年金の保険料が、免除制度、納付猶予制度、学生納付特例によって免除や猶予された場合でも、10年以内であれば追納することができ、それによって年金額を増やすことができます。

任意加入制度

 60歳で雇用先を定年退職して自営業や無職となった人で、学生の時に学生納付特例を申請しなかった人は、加入月数が480ヶ月に満たないため、満額の年金額をもらうことができません。このような場合、480ヶ月に達するか65歳を迎えるまで、国民年金に任意加入する(国民年金第1号被保険者になる)ことができます。任意加入して保険料を納付すれば、年金額を増やすことができます。また、任意加入中も付加保険料を納付することができます。

最後に

 特に若い方は、年金なんて遠い先のことだと思って、制度内容を知らず、申請しないで過ごしてしまいがちです。しかし、過去にさかのぼって申請できないものもあり、年金を受け取る権利や、年金額を増やすチャンスを逃してしまうかもしれません。知らなくて損をすることはあっても、知っていて損はありません。複雑で分かりにくいところもありますが、自分の将来のお金にかかわる様々な制度に、ぜひ目を向けてみてください。

関連記事

「国民年金の任意加入」

(出典:「国民年金に加入の方(自営業・学生など)」(日本年金機構)(https://www.nenkin.go.jp/service/riyoushabetsu/kokunen/index.html)を元にライフプラン・シム作成)


年金受給額の計算の仕方
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年金の構成

 公的年金には、原則20歳以上~60歳未満の全ての人が加入する国民年金と、70歳未満の会社員・公務員が加入する厚生年金があります。

 国民年金は、40年(480ヶ月)の加入を上限として保険料は定額で、年金受給額も40年加入での満額を基準として、加入月数にのみ比例します。ただし、保険料、年金受給額の満額は、年度毎に物価や賃金の変動を反映して見直されます。

 一方、厚生年金の保険料は、給与収入(標準報酬月額)に対して定率の金額で、これを労使折半で負担します。厚生年金に加入すると、年齢にかかわらず同時に国民年金にも加入することになりますが、国民年金の保険料もこれに含まれます。厚生年金の年金受給額は、国民年金に相当する基礎年金部分(満額が上限)と、厚生年金に加入している期間の平均標準報酬月額に比例した報酬比例部分を合算した額となります。

年金受給額の概算を求める計算式

(1) 国民年金(基礎年金部分)の受給額(年額)

 国民年金受給額満額×国民年金加入月数/480ヶ月

([注] 国民年金受給額満額は毎年度見直されるものです。将来にわたって、この計算結果の受給額が保証されるものではありません。また、保険料の一部あるいは全部を免除された加入期間がある場合は、免除額やその期間に応じて受給額が減額されます。)

 令和6年度の国民年金の受給額満額は、物価上昇を反映して令和5年度から2.7%引上げられ、816,000円です。なお、昭和31年4月1日以前の生まれの方は、813,696円です。年度ごとの満額は、厚生労働省、日本年金機構のホームページや、各自治体のホームページで確認できます。概算を求める場合は、約80万円としてもよいでしょう。

 また、就職以前(20歳以上の学生の時)に国民年金に加入して保険料を納付していた場合は、国民年金の加入月数にこの期間も含めてください。60歳以降に任意加入する場合は、その期間も含めてください。ただし、トータル480ヶ月を超えて加入することはできません。

 なお、付加保険料を収めることで上乗せされる付加年金は、計算に含んでおりません。

【計算例】国民年金加入期間38年(456ヶ月)の場合
 81.6万円×456ヶ月/480ヶ月=77.52万円

(2) 厚生年金(報酬比例部分)の受給額(年額)

 厚生年金加入期間の平均年収/12ヶ月×0.55%×厚生年金加入月数

([注] 本計算式は、あくまでも簡易的に受給額を求めることを目的としており、結果は概算を示すものです。また、将来の加入期間を含む場合、平均年収も加入月数も増減する可能性があるため、将来にわたって、この計算結果の受給額が保証されるものではありません。)

 就職から退職するまでの全期間の平均年収(賞与を含む)を求める必要があります。将来分を含めた平均年収が分からない方は、一般的に38歳の年収額に一致しますので、その金額が分かればそれを用いてください。

 実際の計算には、毎年の標準報酬月額が用いられ、過去の賃金を現在価値に換算する再評価率が掛けられます。年収がおよそ2,000万円以上の期間を含むケースや、賞与の比率が極端に高いケースなどは、平均年収を用いた簡易的な式では、実際と大きなずれが生じる可能性があります。

 なお、家族構成によっては、一定期間、加給年金を受給できる場合などがありますが、ここでは加給年金などの付加的な年金は一切含んでおりません。

【計算例】厚生年金加入期間38年(456ヶ月)、38歳の年収600万円の場合
 600万円/12ヶ月×0.55%×456ヶ月=125.4万円(報酬比例部分)
 基礎年金部分+報酬比例部分=77.52万円+125.4万円=202.92万円

年収の壁を超える場合や雇用延長で年金がどれだけもらえるか

 年収の壁を越えて社会保険料を負担しながら働く場合や、定年退職後に雇用延長などで働く場合、厚生年金がいくらもらえるかの計算も、上記の計算式で求められます。どちらの場合でも、加入月数とその期間の平均年収が分かれば年金受給額が計算でき、他の加入期間から求めた受給額と合算することができます。ただし、厚生年金の基礎年金部分のトータル加入月数は480ヶ月が上限で、受給額も満額が上限となります。

【計算例】年収300万円で5年間(60ヶ月)雇用延長した場合
 基礎年金部分=81.6万円×(480ヶ月-456ヶ月)/480ヶ月=81.6万円×24/480=4.08万円
 報酬比例部分=300万円/12ヶ月×0.55%×60ヶ月=8.25万円
 年金受給額=(77.52万円+4.08万円)+(125.4万円+8.25万円)=81.6万円+133.65万円=215.25万円

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「国民年金の任意加入」

「厚生年金の加入期間」

もっと詳しい年金シミュレーション

①当サイトの「ライフプランシミュレーション」
 無料の会員登録をして、年齢、現在の年収、退職年齢、家族構成などを入力すれば、加給年金を含めた年金受給額の概算が求められます。

②「厚労省公的年金シミュレーター」 https://www.mhlw.go.jp/stf/kouteki_nenkin_simulator.html
 登録など不要で、年齢と現在の年収(990万円以下)を入力すれば、年金受給額の概算が求められます。

③「ねんきんネット」 https://www.nenkin.go.jp/n_net/
 マイナンバーカードもしくは基礎年金番号を使ってアカウント登録すれば、あなたの年金受給額を試算できます。

(出典:「[年金制度の仕組みと考え方]第3 公的年金制度の体系(年金給付)」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/stf/nenkin_shikumi_003.html)を元にライフプラン・シム作成)


外貨建保険の注意点
拡大可

 インフレを背景にして上昇した米ドルの長期金利は、2023年11月をピークに下降基調にあるものの、年が明けても4%を超える高い水準にあります。それを背景に米ドル建の生命保険の予定利率が高く設定され、終身保険などの保険商品に注目が集まっています。しかし、外貨建保険ならではの仕組みもあり、損失が発生するリスクがありますので、自分の目的に合った金融商品であるか、その仕組みやリスクをしっかり確認しましょう。

1. 為替変動リスク

 外貨建金融商品ならではのよく知られたリスクの一つです。ご存じのように、外貨と日本円の相対的な価値(為替レート)は日々変動しており、主にそれぞれの長期金利の差により影響を受けます。保険契約時の外貨円レート(ドル円レートなど)よりも解約時や満期時の外貨円レートが低ければ、すなわち円高になれば、外貨ベースでは解約返戻金や満期保険金が増えたとしても、円で受け取った際に為替差損が生じ、結果として元本割れになる可能性があります。

 契約時に極端な円安になっていないか、いくらまで円高になったら元本割れになるか(損益分岐売却レート)を確認します。そして、将来、その為替レートになる可能性が高いか低いか、すなわちリスク度合いを、過去の為替レートや今後の経済見通しなどから、自ら判断する必要があります。

2. 為替手数料

 例えば円をドルに交換する際と、ドルを円に交換する際に、一般的にそれぞれ0.5円/ドル前後の為替手数料がかかります。保険会社によって為替手数料は異なりますので、契約時によく確認する必要があります。特約などで為替手数料が低く抑えられる場合もあります。

3. 保険契約費用

 保険契約のための初期費用がかかり、保険料から一定の割合を差し引かれる場合があります。保険契約によってその割合は異なりますが、特に外貨建保険の場合は初期費用が割高なことが多く、例えば一時払いの終身保険の場合、保険料の5%前後が契約時に差し引かれますので、短期間で解約すると元本割れになることがあります。初期費用がどの程度かかるのかも、必ず確認してください。

 また、保険期間中にかかる費用や死亡保障に必要な費用は、予定利率や積立利率の算出の仮定で控除されている場合もあります。

4. 解約返戻金

 保険期間中は、保険料から初期費用を差し引いた原資をもとに、予定利率や積立利率で運用されます。中途で解約する場合には、解約手数料が差し引かれた解約返戻金が契約者に支払われます。この解約手数料の料率を、解約控除率と言います。契約から解約までの期間が短いほど、この解約控除率が大きく設定されています。保険契約により異なりますが、為替変動がない仮定で、契約から数年程度は元本割れとなることが多いため、これも必ず確認してください。

 なお、保険によっては、予定利率、初期費用、解約控除率などの具体的な数値は示さず、契約からの経過年ごとの解約返戻金額のみを示し、保険料に対する返戻率で表している場合もあります。

5. 市場価格調整

 債券をベースにした外貨建保険では、保険期間開始時の市場金利を基にした積立利率が適用されますが、中途解約時の市場金利が変動した場合、解約返戻金を調整することがあります。これを市場価格調整、もしくは市場金利調整と言い、最も分かりにくい仕組みの一つです。

 すでに発行されている債券(既発債)は、市場で売買することができますが、市場金利が上昇すると債券の価値が下がり、市場金利が低下すると債券の価値が上がります。債券の残存期間が長いほど、すなわち債券発行直後ほど影響を受けやすくなります。この債券の特性を、中途解約時の解約返戻金の計算に取り入れ、保険期間の積立利率よりも解約時の積立利率が上昇すると、市場価格調整により解約返戻金が減少します。その逆の場合は、市場価格調整により解約返戻金が増加します。

 市場価格調整率は、保険契約に計算式や値が記載されていますが、1-{(1+保険期間の積立利率)/(1+解約時の積立利率+調整率)}^(残存月数/12)で計算されます(^はべき乗を表す)。ここで、調整率は保険会社ごとに設定している値で、残存月数は保険期間の残りの月数です。解約時の残存月数が大きいほど、すなわち早期に解約するほど、解約時の市場金利が高いほど、調整率が大きいほど、市場価格調整率が大きくなり、解約返戻金は減少します。注意して確認したいポイントです。

 グラフは、保険料1万ドル、保険期間の積立利率が4%、満期が10年の保険契約において、解約時の積立利率が変動した場合の、市場価格調整後の解約返戻金額の計算例を示しています。分かりやすくするために、解約控除率は0%、保険会社が設定する調整率は0%としました。解約時の積立利率が上昇すると、早期に解約するほど元本割れになるリスクがあることがよくわかります。

 一般的に、円の市場金利に対して外貨の市場金利が高いと円安になり、為替差益が期待できますが、市場価格調整により解約返戻金が減少しますので、早期に解約すると期待ほど利益が出ないこともあります。逆に、円高になると為替差損が発生しますが、市場価格調整により解約返戻金が増加しますので、思ったほど損が出ないこともあります。解約時期が遅いほど市場価格調整は減少しますので、為替変動に結果が左右されやすくなります。

 なお、解約返戻金は一時所得として扱われますが、5年以内に解約して利益が出た場合は、金融類似商品と見なされて源泉分離課税が適用され、20.315%の税率がかかりますので、その点も注意してください。

6. 目標金額の設定

 さらに、債券をベースにした外貨建保険では、保険期間中に積立金額の目標金額を設定できる保険があります。支払った円ベースでの保険料総額の120%や150%のように目標金額を設定し、円換算で目標金額に到達すると、円建の保険に自動的に移行したりします。

 目標金額を必ずしも設定しなければならないことはありませんが、注意しなければならないことは、目標金額を低く設定すると、予想外に早く目標に到達し、所望の金利での長期運用のメリットが得られない可能性があることです。解約ではないため、解約控除や市場価格調整などはありませんが、売り手側が新たな保険への切り換えなどを目的として、目標金額を低く誘導する懸念も指摘されていますので、注意が必要です。

7. 資産運用計算ツールで試算を

 当サイトでは、どなたでも無料で「資産運用計算ツール」 を利用することができ、その中に「外貨建て金融商品での損益を求める計算」があります。この計算では、購入金額、購入時の為替レート、売却時の為替レート、それぞれの為替手数料、運用期間、外貨利率に加え、購入手数料率、売却手数料率も入力することができます。購入手数料率に初期費用の控除率を、売却手数料率に解約控除率を入力すれば、売却金額、損益、実質利回り、実質年利、損益分岐売却レートを求めることができます。

 また、市場価格調整がある場合は、保険契約や保険会社のホームページなどで市場価格調整率を確認して、解約控除率に加えて売却手数料率に入力してください。

8. 最後に

 外貨建保険は、長期運用が前提であり、流動性が低く、初期費用や解約費用などのコスト高である点、為替リスク(金利リスクを含む)がある点をよく理解する必要があります。その上で、高い予定利率や積立利率が長期に約束されれば、為替変動に打ち勝ったリターンが期待できます。また、保険本来の死亡保障や相続対策の役割を担うこともできます。したがって、純粋な投資目的として外貨建保険をメインに考えることはお勧めしません。外貨建保険の特性が、あなたの目的に合っているのであれば、保険会社によって積立利率や解約返戻金、初期費用などが異なることから、保険契約の内容をよく比較して選ぶとよいでしょう。


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