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    役立つコラムに新しい記事「男女別年金受給額の分布」を投稿しました。 あくまでも事実を客観的に示したものですが、ご自分の将来の年金額やライフプランに目を向けるきっかけになれば幸いです。

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後期高齢者医療制度の保険料の推移


 2023/05/26

 [保険・医療]

91

リフォームで活用できる減税制度


 2023/05/23

 [不動産]

90

新NISA(ニーサ)の改正点


 2023/03/29

 [資産運用]

89

相続税の控除、評価額と節税


 2023/03/10

 [税金]

88

配偶者の年収の壁


 2023/03/01

 [ライフプラン]

87

リスキリングを支援する給付金


 2023/02/24

 [ライフプラン]

86

確定拠出年金の賢い受け取り方


 2023/02/17

 [年金・退職金]

8件/全117件

教育訓練給付講座の受講は求職活動実績として認定される
拡大可

 リスキリングにより新たな資格を取得して、転職などを考えている方も増えていると思いますが、リスキリングを支援する教育訓練給付制度という金銭面での強い味方があります。詳しくは、記事「リスキリングを支援する給付金」 をお読みください。ここでは、教育訓練給付講座を受講していれば、雇用保険の基本手当(失業給付)も受給しやすいことについて紹介します。

 就業中に雇用保険に一定期間(離職前2年間に12ヶ月以上)加入していれば、自己都合退職や定年退職で離職したとしても、ハローワークで申請することにより、離職から1年の受給期間内であれば雇用保険の基本手当を受給することができます。雇用保険の加入期間によって基本手当の給付日数は異なりますが、自己都合、定年退職の場合は90~150日間受給することができます。なお、会社都合や正当な理由のある自己都合などの場合は90~330日間、障害者などの就職困難者の場合は150~360日間受給でき、離職前の雇用保険への加入期間の条件も緩和されます。基本手当の金額は年齢、賃金によって異なりますが、離職直前6ヶ月間の平均賃金日額の50%~80%(60歳~64歳は45%~80%)で、賃金が低いほど率が高く、年齢によって上限額が決められています。

 ただし、申請後7日間の待機期間があり、その間は受給できず、自己都合の場合はさらに2ヶ月間(ただし5年間に2回まで、それ以上は3ヶ月間)の給付制限期間が設けられています。また、受給条件として、失業認定(就職する意思と能力を有していること)が必要で、原則28日間の認定期間ごとに2回以上の求職活動をしたことを、ハローワークに申請して認定される必要があります。ここでの求職活動は、ハローワークでの職業相談、キャリアカウンセリングでの相談や、ハローワーク、地方公共団体、民間職業紹介事業者などが主催する職業紹介や求職活動支援セミナー、求人への応募、再就職のための資格試験の受験などの一定の活動のみが認められています。具体的には、ハローワークで最初に渡される「雇用保険受給資格者のしおり」に記載されています。

 確認した範囲でですが、しおりには書かれていなくても、再就職のための教育訓練給付講座の受講についても実績として認められます。教育訓練給付講座をいつ受講し始めたかは関係なく、離職前から受講していても、基本手当の認定期間中に受講していれば求職活動実績として認定されます。「失業認定申請書」に、いついつに受講したと記載をするだけで、対面であろうがリモートであろうが関係ありません。(正確には、「就職活動ができなかった」を選択して、理由として「教育訓練給付金の対象講座〇〇〇を受講中」などと書くようです。詳細はハローワークで確認してください。また、その上で「就職相談」をするように指示されることもあるようです(2023/12/14 加筆修正)。)最初の認定時に受講内容の確認があった場合には、受講コースや受講スケジュール、領収証などを見せればよいでしょう。新たな資格を取得してから求職活動を、と考えている方には大きなメリットになります。

 ネットでは、都道府県によって認められなかったり、修了時に1回だけ認められるなどの情報もありますので、受講する前にお近くのハローワークに詳細を確認することをお勧めします。誰にでも丁寧に教えてくれますので、遠慮なく聞いてみると良いでしょう。また、自己都合退職での給付制限期間として、現在は2ヶ月間もしくは3ヶ月間が設けられていますが、リスキリングを推進する狙いから、自己都合であっても一定の条件のもと、給付制限期間を短縮する案が政府で検討されています。給付金額や制度は年々変わる可能性がありますので、動き出す前に確認することをお勧めします。

(出典:「基本手当について」(ハローワークインターネットサービス)(https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_basicbenefit.html)を元にライフプラン・シム作成)


後期高齢者医療制度の保険料の推移
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 グラフには、後期高齢者医療制度の保険料に関する3つの全国平均値の推移を示しています。1つ目は、収入に寄らず誰にもかかる均等割額の年額で、2つ目は所得に応じて徴収される所得割の保険料率、3つ目は全国平均保険料の年額です。2008年(平成20年)から制度化された後期高齢者医療制度ですが、都道府県ごとに均等割額、保険料率が定められ、2年に一度改定されます。

 グラフにおいて、2018年度には保険料率が若干下がっていますが、それを除けば、後期高齢者の増加に伴って数値は増加し続けており、平均保険料は2008年比で約25%増加しています。なお、平均保険料は均等割額との積み上げグラフで表しており、2022年で均等割額が47,777円で、平均保険料は77,663円となっています。また、保険料率のみ右軸の目盛りを参照してください。参考までに、国民健康保険の全国平均保険料(介護保険料は除く)は2021年時点で91,310円となっています。

 それでも、1割~3割の窓口(本人)負担を除いた残りの50%を公費(国と地方自治体)で負担し、40%を75歳未満の医療保険で支え、残りの10%を後期高齢者医療制度の保険料で賄っている状況を理解すれば、保険料の上昇もある程度やむを得ないと感じざるを得ません。一方で、現実に負担する側にとっては、保険料の値上りは厳しいのも事実です。

 また、保険料の計算においては、所得割の計算のもととなる賦課所得は、国民健康保険と同様、前年の所得から住民税の基礎控除額(高額所得者を除き43万円)を差し引いた金額となります。また、均等割額と所得割額を合計した額には、賦課限度額すなわち保険料の上限額が設定されています。2022年の賦課限度額は66万円で、収入金額ベースでは1,000万円前後になります。

 この賦課限度額も、2008年当初は50万円でしたが、2012年に55万円、2014年に57万円、2018年に62万円、2020年に64万円と引き上げられてきました。そして、2023年(令和5年)の厚生労働省の医療保険制度改革において、出産一時金を42万円から50万円に引き上げるにあたり、後期高齢者医療制度の保険料からも一部を支援する方針が示され、2024年から73万円、2025年からは80万円に、段階的に引き上げられる見通しです。

 なお、2024年からの均等割額も50,500円程度に、保険料率も10.7%程度に、平均保険料も87,200円程度になる見通しで、ますます保険料が上がりそうです。ただし、後期高齢者医療制度でも国民健康保険制度と同様に、住民税非課税世帯やこれに準じる世帯に属する被保険者には、世帯所得に応じて均等割額の7割、5割、2割が軽減されたり、本人の賦課所得により、所得割額の50%、25%が軽減される措置がありますので、該当の可能性がある方はご確認ください。

 特に均等割については、本人の賦課所得ではなく、本人が属する世帯の所得(世帯内の後期高齢者の被保険者全員と世帯主の総所得の合計)で判定されますので、親子同居世帯などは注意が必要です。かといって、安易に世帯分離を行うと、世帯主側の扶養控除が受けられなくなるケースなどもありますので、メリット、デメリットをよくお調べください。

(出典:「医療保険制度改革について」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001037866.pdf)を元にライフプラン・シム作成)


リフォームで活用できる減税制度
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 住宅をリフォームする際に、少しでも負担を軽くしたいと考えると思いますが、税制面で大きく2つの特別減税制度があります。ひとつは、リフォーム促進税制(住宅特定改修特別税額控除)で令和5年12月末までの時限措置、もうひとつは住宅ローン減税制度(住宅借入金等特別控除)で令和7年12月末までの時限措置です。リフォーム促進税制は、住宅ローン利用の有無に関係なく、要件を満たせば申請できます。なお、これらの控除を受けるためには、建築士等が発行した増改築等工事証明書などを用意する必要があります。

1. リフォーム促進税制

 リフォーム促進税制の対象となるリフォーム内容には、耐震化、バリアフリー化、省エネ化、同居対応、長期優良住宅化があり、それと併せて実施されるその他の改修が対象となります。改修工事が完了して居住を開始した年の所得税、改修工事が完了した翌年の固定資産税のそれぞれ一部が控除される制度です。ただし、耐震化のみ、居住開始の要件は除外されている一方、同居対応は固定資産税控除の対象外です。また、自己が所有する居住用家屋で(耐震化は除く)、工事後の床面積が50m2以上、かつ1/2以上が自己の居住用であること、控除を受ける年の所得が3,000万円以下であること、などの要件を満たす必要があります。

 所得税の控除としては、2段階の控除率が設けられており、1段階目は、メインのリフォーム対象工事費の10%に相当する額が所得税から税額控除されます。ただし、対象工事費は実際にかかった費用ではなく、国が定めた標準工事費が適用され、他に補助金を受け取る場合は補助金を差し引いた費用になります。また、対象工事費のうち控除される上限がリフォーム内容に応じて定められており、200万円、もしくは250万円となっています。また、耐震化を除き、50万円以上の工事が対象となります。

 2段階目は、メインの対象工事で控除上限を超過した分と、同時に行うその他の改修工事について、工事費の5%相当分が減税になります。このとき、その他の改修工事費は、対象工事費と同額まで(ただし、控除上限まで)、かつ、対象工事費と合わせた総工事費1,000万円までが対象となります。また、耐震化、バリアフリー化、省エネ化、同居対応のリフォームは併用することが可能です。さらに、省エネ化と併せて、太陽光発電設備を設置する工事を行う場合は、対象工事費の上限が100万円増額されます。

 固定資産税の控除としては、同居対応は対象外ですが、耐震化が1/2、バリアフリー化、省エネ化がそれぞれ1/3、長期優良住宅化が2/3を控除され、バリアフリー化、省エネ化は併用が可能です。なお、控除される家屋面積に上限があり、バリアフリー化が100m2まで、それ以外が120m2までとなっています。

2. 住宅ローン減税制度

 リフォームの工事費に、返済期間10年以上の住宅ローンを利用する場合で、改修工事費が100万円以上の場合には、住宅ローン残高2,000万円を上限として住宅ローン控除が受けられます。年末の住宅ローン残高の0.7%相当を所得税から控除でき、最大10年間控除できます。リフォーム促進税制の耐震化の控除と、住宅ローン控除は併用することができますが、それ以外のリフォーム内容では併用できません。

 なお、リフォーム促進税制との要件の違いは、控除を受ける年の所得が2,000万円以下であること、対象に増築、改築(取り壊して既存と同じ規模の家屋を建てる)および、壁、床、階段、屋根などの過半以上の修繕または模様替え、一定規模(一室の床または壁の全部など)以上の修繕または模様替えなどが含まれ、対象範囲が広いことです。

 リフォーム促進税制の対象となっている省エネ化や耐久化(長寿命化)に関するリフォームについては、国や地方自治体による補助金もありますが、施工業者が申請を行うなど手続きが異なったり、適用条件もあります。無理して想定を超える費用になることなどが無いように、事前によく確認しておくとよいでしょう。

(出典:「住宅のリフォームに利用可能な税制特例」(国土交通省)(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_fr2_000011.html)を元に、ライフプラン・シム作成)


新NISA(ニーサ)の改正点
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 2020年度の税制改正により、2024年以降のNISA(ニーサ)制度の延長と改正(詳細は「NISAの延長と改正」 を参照)が国会で決議されていましたが、政府の資産所得倍増に向けた投資活性化方針により、2024年からの新NISAが、さらに投資促進方向に見直される見込みですました。現行制度からの主な改正点は以下の通りです。

①NISA制度の恒久化
②非課税期間の無期限化
③年間投資枠の拡大(一般NISA改め「成長投資枠」は240万円、つみたてNISA改め「つみたて投資枠」は120万円)
④成長投資枠とつみたて投資枠の併用可
⑤非課税保有限度額(総枠)の設定と拡大(成長投資枠は1,200万円、つみたて投資枠と成長投資枠の合計1,800万円)
⑥売却後の総枠の再利用可
⑦成長投資枠の対象商品の絞り込み

 それぞれについて、詳しく見ていきましょう。ただし、決議前ですので、詳細は変わる可能性があります。(2023/12/8 加筆修正)

①NISA制度の恒久化
 現行NISAによる投資利益の非課税優遇は時限措置で、期限を迎える毎に延長か打ち切りかが議論されてきましたが、新NISAでは恒久化されます。

②非課税期間の無期限化
 現行NISAでは、一般NISAの非課税期間が5年、つみたてNISAの非課税期間が20年と区切られており、一般NISAについては非課税期間の終了時に、翌年の投資枠を使ってロールオーバー(詳細は「NISAのロールオーバー」 を参照)するかしないかを決めていましたが、新NISAでは非課税期間が無期限となり、ロールオーバーも不要となります。

③年間投資枠の拡大
 現行NISAでは、一般NISAの年間投資枠は120万円でしたが、新NISAでは名前を「成長投資枠」と改め、年間投資枠は2倍の240万円に引き上げられます。また、つみたてNISAの年間投資枠は40万円でしたが、名前を「つみたて投資枠」と改め、3倍の120万円に引き上げられます。

④成長投資枠とつみたて投資枠の併用可
 現行NISAでは、一般NISAとつみたてNISAで口座が分かれており、どちらか一方のみしか選択できませんでしたが、新NISAでは成長投資枠とつみたて投資枠は一つの口座で併用することができます。また、すでに一般NISAもしくはつみたてNISA口座を保有の方は、自動的に新NISAが利用可能になると思われます。これまで、積立てもしたいが株式投資もしたいと思われていた方は、一般NISAで5年の縛りを受けながら運用するしかありませんでしたが、新NISAで併用できるようになることは大きいと思います。

⑤非課税保有限度額(総枠)の設定と拡大
 現行NISAでは、年間投資枠と非課税期間から、買付け残高(簿価残高)での非課税保有限度額は一般NISAが600万円、つみたてNISAが800万円でしたが、新NISAでは非課税期間が無期限になるものの、口座(生涯)の非課税保有限度額が総枠1,800万円に拡大されて保持されます。なお、成長投資枠についてはその内数として総枠が1,200万円になります。

⑥売却後の総枠の再利用可
 現行NISAでは、保有する商品を売却しても、売却分を新たな年間投資枠として再利用することはできません。新NISAでも、年間投資枠については同様であるものの、非課税保有限度額(総枠)については、売却分を総枠として再利用することができます。どの時点で再利用できるのかなど詳細は分かりませんが、売却後に、年間投資枠の範囲であっても、別の銘柄を購入できれば、損益確定による銘柄の入れ替えや、リバランスなどが比較的容易にできるようになるため、より長期に運用することが容易になるでしょう。

⑦成長投資枠の対象商品の絞り込み
 つみたて投資枠の対象商品は、現行のつみたてNISAと同様に、一定の要件を満たして金融庁に届出された投資信託に限られます。一方、成長投資枠の対象商品は、上場株式や投資信託など幅広く投資できますが、より安定的な資産形成の趣旨にそぐわない、整理・監督株式銘柄および、信託期間20年未満や、高レバレッジ型、毎月分配型の投資信託は除外され、一般NISAよりも対象商品が絞られます。このため、これまで非課税運用できていた投資信託でも、見直さなければならない可能性があり、注意が必要です。

 最後に、現行の一般NISA、つみたてNISAで投資した商品については、新NISAの外枠として扱われ、2024年以降に、新NISAにロールオーバーすることも、新たな投資をすることもできませんが、現行NISAでの非課税期間までは、そのまま非課税で保有できます。また、ジュニアNISAにつていは、2023年末をもって終了となりますが、5年間の非課税期間が終了しても、18歳になるまでは手続き不要で非課税措置が継続されます。

 概ね、非課税投資枠が拡大、無期限化や、成長投資枠とつみたて投資枠の併用可、総枠の再利用など、長期運用の安心感と自由度が増し、投資意欲を高める内容になっています。対象商品が絞られることに、現行の一般NISA利用者は注意が必要ですが、20%の税金が非課税になる効果は絶大ですので、大いに資産形成の味方になってくれるものと思われます。

過去のNISA関連記事

「NISAのロールオーバー」

「NISAの延長と改正」

「個人年金保険とiDeCo、つみたてNISAの比較」

「NISAとつみたてNISA」

(出典:「新しいNISA」(金融庁)(https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/about/nisa2024/index.html)を元にライフプラン・シム作成)


相続税の控除、評価額と節税
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 国税庁によると、令和3年の被相続人の数(死亡者数)は約150万人、そのうちの9.3%において相続税の申告がなされ、納税した相続人は約30万人とのことです。相続財産が一定以上ある場合には、10ヶ月以内に相続税の申告を終えて、相続税を納めなければなりません。ここでは、そんな時に備えて相続税の課税遺産総額(課税対象額)の求め方と、それを踏まえてどのような節税の方法があるかを簡単に説明します。親の相続のみならず、自分の死後に配偶者や子どもが相続する場合に、財産をどう残すかを考えるきっかけになれば幸いです。

(1)法定相続人の定義

 まず、課税遺産総額の計算に大きくかかわる、法定相続人について整理しておきます。遺言や遺産分割協議などにより、実際に相続する人と法定相続人が必ずしも一致しない場合もありますが、法定相続人は法的に相続が認められた人で、その人数は、ここでは相続税を計算する上で用いられる数と認識しておいてください。

 法定相続人は、相続の優先順位によって決定されます。配偶者は常に相続人であり、それに加えて、①子、②直系尊属(父母、直系の血族)、③兄弟姉妹、の優先順位で、順位が上位の相続人がいない場合に次の順位が相続人となります。ただし、①③で子、兄弟姉妹が死亡などで相続時にいない場合には、孫(死亡などで相続時にいない場合はさらにその子孫)、甥、姪が代襲相続します。また、②で父母が死亡などで相続時にいない場合に限り、祖父母(さらにその直系の父母・・)が法定相続人となります。

 なお、非行などにより、民法上の相続の資格を欠格した相続人と、被相続人が予め家庭裁判所に排除の請求をした相続人は、法定相続人にカウントしませんが、欠格、排除された相続人に子がいる場合は代襲相続人としてカウントされます。逆に、相続を放棄した相続人は、放棄が無かったものとカウントされますが、代襲相続はありません。胎児や非嫡出子(婚姻外の子)も相続の権利を有し、カウントされます。また、養子も実子と同等の権利を有しますが、法定相続人としては、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までカウントされます。その他の例についてはここでは割愛します。

(2)相続財産への加算対象と減算対象

 相続財産の対象としては、被相続人が相続時点で所有していた、金銭に見積もることのできる全ての財産と、死亡により相続人が受け取ることのできる死亡保険金、死亡退職金などがありますが、相続時清算課税による贈与があった財産についても相続財産とみなされます。また、相続開始前3年以内に行われた贈与についても同様で、どちらも贈与時点での価格(評価額)が加算され、納税済みの贈与税があれば、相続税から控除、還付されます。

 一方、相続財産から減らせるものとして、債務と葬儀費用があります。債務については、借入金や未払金の金額を、債務を相続する人の相続財産から減算することができます。もし、相続財産を合計して債務超過が確定しているのであれば、相続放棄をすることができ、債務超過が懸念される場合には、相続人全員一致の選択として、相続財産の範囲で債務を弁済する限定承認を選ぶこともできます。なお、相続放棄、限定承認は、相続から3ヶ月以内に家庭裁判所へ届け出る必要があります。

(3)死亡保険金控除、死亡退職金控除

 相続税には、遺族の生活を一定程度保障するための非課税控除があります。死亡保険金と死亡退職金にはこの控除があり、法定相続人の数をn人とすると、それぞれから最大で500万円×nを控除することができます。死亡保険金の受取人が複数の場合は、死亡保険金額の比率で控除を按分します。死亡退職金も同様です。

 なお、死亡保険金、死亡退職金は、遺言で受遺者(遺産を受け取る人)を指定していなくても、保険契約や雇用契約などで指定された受取人に全額を相続することができ、遺言の代わりにもなります。したがって、遺産分割協議の対象ではない相続財産ということになり、みなし相続財産と呼ばれます。それぞれの相続人が受け取る死亡保険金、死亡退職金から、按分した控除をそれぞれ差し引いて残った額を課税価格と言い、相続人ごとの課税価格の合計が、相続税を求める基礎となります。

(4)相続税評価額と特例

 (3)の控除以外で課税価格を時価よりも減らせるものとしては、不動産の相続税評価額があります。土地については、相続税評価額が公示価格(取引の指標)の80%を目安に定められています。また、家屋を建てて賃貸をしている土地(貸家建付地)では、自用地評価額から賃貸部分の評価額を減らすことができます。この評価減は、借地権割合(貸家が建つ土地の割合)×借家権割合(一律30%)×賃貸割合(課税時期に賃貸されている床面積の割合)になります。建物については、居住用でも賃貸用でも固定資産税評価額で評価されますが、居住用家屋の一部を賃貸している場合は、借家権割合×賃貸割合分の評価減を受けられます。

 さらに、課税価格を計算する際に、小規模宅地等の特例として、被相続人の居住用宅地の330m2までと、事業用宅地の400m2までについては、配偶者や要件を満たす親族などが相続する場合には、相続税評価額の80%を減額することができます。同様に、賃貸アパートなどの貸付事業用宅地については、200m2までが50%を減額することができます。

(5)基礎控除と特例

 最後に、課税価格の合計から、基礎控除として3,000万円+600万円×nを控除することができます。控除後の課税遺産総額を、法定相続割合で按分して、それぞれに相続税率を掛けて相続税額を求め、合算します。さらに、合算した相続税額を、実際にそれぞれの相続人が相続する財産に相当する課税価格の比率で按分したものが、相続人それぞれが納税すべき相続税額となります。

 ここで、配偶者が相続する財産については、法定相続分か1億6,000万円のどちらか多い金額まで、相続税を非課税とする税額軽減の特例があります。また、未成年の法定相続人が課税される場合には、未成年者控除として10万円×(18歳-年齢)が税額から控除されます。一方で、配偶者と子(代襲相続人を含む)、父母以外の相続人、例えば兄弟姉妹や孫などが相続人の場合は、税額が2割加算されます。

 なお、先の小規模宅地の特例、配偶者の特例を利用する場合は、適用することで税額がゼロになったとしても、申告は必要ですので注意してください。また、遺産分割が成立して、相続分が確定していることも適用の要件となっています。

(6)相続対策

 以上より、純粋に節税の観点での相続対策としては、控除額を増やす、相続財産そのものを減らす、課税価格(評価額)を減らす、税額を減らすなどがあることが判ります。

 最も取り組みやすい方法としては、資産を分割して早めに生前贈与を行い、相続財産を減らすことです。住宅取得等資金、教育資金、結婚・子育て資金について、直系尊属からの一括贈与の一定額が非課税になる特例や、暦年贈与での110万円の基礎控除がありますので、最大限利用して世代間の資産移転を進めるとよいでしょう。

 課税価格を減らすには、資産を不動産として所有することも効果があります。ただし、小規模宅地の特例を適用したいのか、できるのかはよく確認してください。また、税額を減らすには、(5)で述べた配偶者の税額軽減を利用する方法があります。ただし、配偶者に相続財産を集めると、配偶者の相続の際に、逆に課税価格が大きくなったり、法定相続人の人数が減って控除や遺産分割のメリットが薄くなるため、トータルでお考え下さい。

 控除額を増やす方法として、法定相続人ではない孫などを養子にする対策もよく言われますが、法定相続人としてカウントできる人数に制限があったり、代襲相続人でない孫が養子になった場合には、税額が2割加算されるなどのデメリットもあるため、こちらも事前によくお確かめください。

関連記事

「相続における配偶者居住権の評価額と節税」

「過剰な保障を防ぐ収入保障保険」

「贈与税の暦年課税と相続時精算課税」

「贈与税の特例」

「配偶者の相続税の減額」

(出典:「相続税のあらまし」(国税庁)(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/sozoku-tokushu/souzoku-aramashih30.pdf)、
「令和3年分相続税の申告事績の概要」(国税庁)(https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2022/sozoku_shinkoku/pdf/sozoku_shinkoku.pdf)を元にライフプラン・シム作成)


配偶者の年収の壁
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 グラフは、本サイトのライフプランシミュレーションで実際に求めた、「配偶者の給与収入と世帯の手取り」の関係を示しており、配偶者の年収100万円を基準として、そこからの差分で表しています。条件として、世帯主が主たる給与収入者で、配偶者の生計を維持しているものとします。

 配偶者の給与収入には大きく3つの壁があります。1つ目の壁は年収100万円(所得45万円)と年収103万円(所得48万円)で、「税金の壁」です。住民税には均等割と所得割があり、自治体によって均等割は低所得者でも課税される場合がありますが、所得割部分は年収100万円(所得45万円)まで非課税で、これを超過すると課税され始めます。一方、所得税は年収103万円(所得48万円)まで非課税で、これを超えると課税され始めます。

 2つ目の壁は年収106万円と130万円で、「社会保険料の壁」です。配偶者が働く条件として、①週所定労働時間および月所定労働日数がフルタイムの3/4以上の場合、もしくは、②週所定労働時間が20時間以上、月額賃金が88,000円(年収105.6万円相当)以上、2ヶ月を超える雇用の見込み、学生ではない、従業員数101人以上(2024年10月からは51人以上)の企業で働いている、などの条件を全て満たす場合には、社会保険に加入しなければなりません。本サイトのライフプランシミュレーションでは、①や②の労働時間などの条件はすべて満たすものとして、賃金だけで判定しているため、年収106万円以上では手取りが大きく減少します。なお、他の年収の壁は、給与収入以外の年金収入や事業収入、不動産収入なども含まれますが(判定は所得金額)、106万円だけが給与収入に限られます。

 一方、①②のどちらも満たさないケースで、年収130万円未満(かつ、世帯主の収入の1/2未満)であれば世帯主の扶養家族となり、健康保険、厚生年金保険などの社会保険料がかかりません。しかし、130万円以上になると扶養家族でなくなり、配偶者が自ら社会保険料を支払わなければならなくなります。したがって、年収106万円では手取りが減らなかったケースでも、年収130万円で大きく減少することになります。106万円ではなく130万円で壁が現れるケースは、配偶者が自営業者やフリーランスなどのケースも含まれます。ただし、この場合は収入から必要経費を除いた所得が130万円です。

 3つ目の壁は年収150万円(所得95万円)と年収202万円(所得133万円)で、「配偶者控除の壁」です。世帯主の所得と配偶者の所得の組合せで配偶者控除額が決定されており、世帯主の所得900万円以下、配偶者の年収103万円(所得48万円)以下で配偶者控除38万円を満額として、世帯主の所得1,000万円超、配偶者の年収202万円(所得133万円)超では、配偶者控除はゼロとなります。その間では、世帯主の所得が50万円増えるごと、配偶者の年収(所得)が5万円増えるごとに、配偶者控除が満額から徐々に減額されます(これを配偶者特別控除と言う)。世帯主の所得が900万円以下の場合、配偶者の年収が150万円までは配偶者特別控除が38万円ですが、年収が5万円増える毎に配偶者特別控除額が段階的に減額され、年収202万円(所得133万円)を超過すると控除はゼロになります。グラフでは、この段階的に減少する効果により、なだらかに手取りが減っていき(傾きが徐々に減っていく)、心理的な壁は感じにくいと思われます。

 3つの壁の中では、2つ目の「社会保険料の壁」が最も大きく、いわゆる「年収の壁」にあたります。少子高齢化対策として、社会保険の加入要件を緩和して、多くの事業所、多くの被雇用者から広く保険料を徴収する方向で、年収106万円を超えると加入となるケースが今後益々増えると思われます。年収の壁を意識して労働時間を抑えることが労働力不足に繋がりかねないことから、政府は2023年10月から「年収の壁・支援強化パッケージ」の適用を開始しました。社会保険料の壁を越えて手取りが減少する分を、事業者を通して3年間で最大50万円支援したり、一時的な収入増であれば最大2年間は扶養家族から外れない、などの対策です。時限措置ですが、2年の間に根本的な対策を検討することとしています。国会でも議論になっていますが、今後、どのような対策が打たれるのか、注目していきましょう。

 なお、ライフプランシミュレーションでは、社会保険への加入要件の細かな判定までしておらず、時限的な支援強化パッケージにも対応していませんが、グラフにあるように詳細に計算することができますので、短期的な視点にとらわれず、長期的な視点で何がベストなのか、ライフプランシミュレーションを通して納得できる働き方を検討してみるとよいでしょう。
(2024/2/28 下線部加筆修正)

(出典:「家族と税」(国税庁)(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/02_2.htm)、
「パート・アルバイトの皆さんへ 社会保険の加入により手厚い保障が受けられます。」(政府広報オンライン)(https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201607/2.html)、
「年収の壁・支援強化パッケージ」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/stf/taiou_001_00002.html)を元にライフプラン・シム作成)


リスキリングを支援する給付金
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 国会では政府が、5年間で1兆円の人材投資を行い、リスキリングによる産業構造の変革と、それに伴う賃金の改善を促すことが議論になっています。今後の具体的な施策(「リスキリングによる転職の支援」 参照)が気になりますが、現在、雇用保険で行われている、キャリアアップ、キャリアチェンジのための教育訓練の受講(以降「リスキリング」と言い換えます)を支援する「教育訓練給付制度」が強化され、受講が促進されると思われますので、この制度について整理しておきましょう。

 「教育訓練給付制度」は、一定の要件を満たす雇用保険の被保険者もしくは離職者がリスキリングをする際に、受講費用の20%~最大70%の給付金が受けられる制度です。教育訓練は、それによって取得できる資格の求人率、専門性の高さなどにより、一般教育訓練(”一般”)、特定一般教育訓練(”特定”)、専門実践教育訓練(”専門”)の3つに区分されており、それぞれ厚生労働大臣の指定を受けた教育訓練講座が給付の対象となります。なお、雇用保険の要件を満たさない離職者や、フリーランス、自営業の人、パートタイムなどで収入や資産が一定以下の人が、再就職や正社員などを目指す際に、10万円の給付と無料の職業訓練が受けられる「求職者支援制度」もありますが、ここでは説明を省略します。

 ”特定”は、主に業務独占資格などの取得を目標とする講座が対象で、社労士、税理士、FP技能検定、宅建などの専門的サービスの資格、輸送・建設機械などの運転資格の講座が含まれます。”専門”は、同様に業務独占資格などの取得を目標とする講座が対象で、看護士、介護福祉士、保育士、美容師、理学療法士などの医療・社会福祉・保険衛生関係の資格の講座が含まれます。それ以外にはIoTやAI、データサイエンスなどのIT関係の資格の講座が対象になっています。”一般”には、語学力、事務能力、ITなどの検定、大学院課程などが含まれます。詳細は「教育訓練給付の講座指定の対象となる主な資格・試験など」(厚生労働省) https://www.mhlw.go.jp/content/001214214.pdf をご覧ください。(2024/2/27 参照先修正)

 図は、「教育訓練給付制度」の全体像を示したもので、給付金が受給できる雇用保険の要件と、それぞれの区分での受講費用に対する給付割合や上限額を示しています。雇用保険の要件では、過去に給付金を受給したことがある人は、その後の雇用保険の加入期間が3年以上(空白期間が1年未満であれば、複数事業所の雇用期間の通算可能)必要ですが、初めて給付を受ける人は、”専門”が2年以上、それ以外は1年以上の加入期間があれば給付を受けられます。また、要件を満たす被保険者が離職した場合、1年以内に受講すれば給付を受けられます。年齢で見ると、65歳以上の高年齢被保険者および被保険者だった人で、要件を満たす人も対象になります。一方、失業中の45歳未満の人が、通学制の”専門”を受講する場合には、基本手当の支給期間終了後、受講中は基本手当の80%が支給される「教育訓練支援給付金」があります。これは、2022年度末までの受講開始が条件の時限措置でしたが、2025年度末まで延長されています。

 給付割合とその上限額では、”一般”が20%(上限10万円/年)、”特別”が40%(上限20万円/年)、”専門”が50%(上限40万円/年×最長3年)となっています。また、”専門”については、就業中であれば資格取得後、離職中であれば資格取得後1年以内に就職した場合に、20%(上限16万円×最長3年分)の追加給付が受けらることから、併せて最大で70%の給付が受けられます。なお、”専門”は、10年間での総給付額にも上限があり168万円ですが、法令上4年以上の教育訓練についてのみ最長4年、上限224万円まで引き上げられています。

 対象の講座は、「厚生労働大臣指定教育訓練講座 検索システム」 (https://www.kyufu.mhlw.go.jp/kensaku/) で検索でき、手続きはハローワークで行います。手続きの詳細は、ハローワーク インターネットサービス(URLは出典を参照)で確認してください。適性や興味は大事ですが、職種転換する場合は、その職種の求人は多いか、賃金水準は希望通りかなども良く調べて、希望に合った教育訓練を探してください。

(出典:「教育訓練給付制度」(厚生労働省) (https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/kyouiku.html) 、
「教育訓練給付制度」(ハローワーク インターネットサービス) (https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_education.html)を元にライフプラン・シム作成)


確定拠出年金の賢い受け取り方
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 確定拠出年金には、企業型(DC年金)と個人型(iDeCo)がありますが、どちらの場合でも一時金として受け取る方法と、年金で受け取る方法があります。その受け取り方によって、税金や社会保険料が変わってきますので、それを知った上で判断されると後悔が無いと思います。

 一時金として受け取る場合は、退職所得として他の所得と分離されて扱われ、退職所得控除を受けられます。さらに控除後の1/2の金額に対して所得税、住民税が課税され、社会保険料は課せられません。退職所得控除は、勤続年数(端数切上げ、確定拠出年金の場合は加入(掛金の拠出)年数)に比例して増え、勤続年数が20年を超えると傾きが大きくなりますので、勤続年数が長いほど、一括で受け取ることで税額を抑えられる可能性があります。

 さらに、一時金の場合、退職金の受取り時期によって控除が異なります。退職金と同時に一時金を受け取る場合には、退職金と一時金を合算した額が退職所得となり、勤続年数と加入年数のどちらか長い方が適用されます。例えば、勤続年数の方が長く40年の場合は、40万円×20年+70万円×(40年-20年)=2,200万円が退職所得から控除されます。なお、退職金と確定拠出年金が控除額以下であれば同時に受け取るのが良いと言えますが、控除額を超えて課税される場合には、退職金を受け取った翌年以降に確定拠出年金の一時金を受け取ると、同時に受け取るよりも節税になる場合があります。確定拠出年金は受け取った年の退職所得として税額計算されるため、退職所得控除は受けられなくても、退職所得が2年に分割されることで税率が低く抑えられる場合があります。なお、確定給付企業年金(DB年金)の場合は、翌年以降に受け取っても退職金と同じ年の所得として見なされるため、そのような効果はありません。

 一方、退職金を受け取った後に、何年かして確定拠出年金を一時金で受け取る場合で、一時金を受け取った年の「前年以前19年以内」※に退職金を受け取っている場合には、退職所得控除から重複期間(端数切捨て)に相当する控除額を差し引かなければなりません。例えば、確定拠出年金の加入年数がトータル20年とすると退職所得控除は40万円×20年=800万円ですが、その5年前に退職金を受け取っていて、退職後も一時金を受け取るまで確定拠出年金に加入していたとすると、15年間の勤続年数が重複していることになり、15年の勤続年数に相当する控除40万円×15年=600万円を差し引いた800万円-600万円=200万円が実際の控除額になります。控除額を増やしたい場合は、退職後も少額でも掛金を拠出し続けることです。運用期間が増えただけでは控除されません。

 ただし、前年以前19年以内に退職金を受取った場合でも、退職金が退職所得控除よりも少ない場合には、受取った退職金から逆算してみなし勤続年数を求め、重複期間を短縮することができます。具体的には、退職金が800万円以下の場合は退職金÷40万円で、800万円を超過する場合は(退職金-800万円)÷70万円+20年(端数は切り捨て)でみなし勤続年数を求めます。就職の日からみなし勤続年数までの期間と確定拠出年金の加入期間の重複期間を、確定拠出年金の所得控除の計算に用いることができます。(2023/7/18 追記)

 年金として受け取る場合には、公的年金と同様に扱われますので、雑所得に合算されて公的年金控除が受けられ、それを超える分は、他の事業所得、不動産所得などと合算して所得税、住民税が課税されます。また、社会保険料も課せられます。どちらの受け取り方法を選ぶかは、まとまったお金がすぐに必要か必要でないかと、他の退職金や年金との兼ね合いでどれが最も節税になるかが焦点になります。

 以上、節税の観点からは、退職金と確定拠出年金を合計して、退職所得控除額以下であれば、退職金と一緒に一時金で受け取るのがよいと言えるでしょう。退職所得控除を超えている場合は、退職金と一時金を別の年に受け取った方がよく、資金に余裕があれば、公的年金受給までのつなぎとして年金で受け取るとさらに節税になる場合もあります。また、確定拠出年金額が多ければ、つなぎの期間を増やし、老齢年金を繰下げ受給して増やしてもよいでしょうし、公的年金が少ないのであれば、退職後も加入期間をできるだけ増やして運用し、公的年金を補ってもよいでしょう。いずれにしても、個々のケースでどのような受け取り方が最適か、ライフプランシミュレーションで確認するとより安心です。

※令和4年3月31日以前は「前年以前14年」が適用された。また、退職金を続けて受け取る場合は「前年以前4年」が適用される。先に確定拠出年金の一時金を受け取り、後に退職金を受け取る場合は「前年以前4年」が適用される。

(出典:「No.2735 同じ年に2か所以上から退職手当等が支払われるとき」(国税庁)(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2735.htm)、
「No.5231 確定給付企業年金等に係る課税関係」(国税庁)(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5231.htm)を元にライフプラン・シム作成)


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