役立つコラムに新しい記事「男女別年金受給額の分布」を投稿しました。 あくまでも事実を客観的に示したものですが、ご自分の将来の年金額やライフプランに目を向けるきっかけになれば幸いです。
役立つコラムに新しい記事「男女別年金受給額の分布」を投稿しました。 あくまでも事実を客観的に示したものですが、ご自分の将来の年金額やライフプランに目を向けるきっかけになれば幸いです。
ライフプランの検討に役立つ金融知識や、シミュレーションの結果を見て、どこを改善したらよいかわからない、そんな時のヒント になる有益な情報をご提供します。年金、保険、投資、税金、ローンなど、幅広い情報をお届けします。
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世帯の主たる収入者(ここでは世帯主とします)に万一のことがあった場合、残された家族の生計を維持するために、生命保険を検討されるでしょうし、すでに加入されている方も多いと思います。若い人ほど、そのような確率は低くなるものの、子どもの養育費や配偶者の長い人生を支援するためには、多額の生命保険に入らなければならないのが現実です。最も一般的な生命保険としては、一定期間、一定の保険金を保障する掛け捨ての”定期保険”がありますが、保険金額が高くなるほど保険料も高くなるため、家計と相談して保険金額を減らしたりしているのではないでしょうか。
実際には、世帯主の年齢が高くなるにつれて、残された家族が生涯で不足する総額は減少していきます。実際の例は「ライフプランシミュレーションの活用事例」~世帯主に万一のことがあった時の遺族年金はいくらもらえるか~ をご覧ください。そのような傾向に合わせて、年々保障額が一定に減少していくのが”収入保障保険”の特長です(上段のイメージ図)。”収入保障保険”は被保険者が死亡した時点から毎年一定の年金額を保険期間の満了時まで受取るため、死亡年齢が高くなるほど保障金額が減少します(ただし、1年、2年、5年などの最低保証期間あり)。また、死亡保険金を分割して受取ることもあり、一般的に、同等の”定期保険”よりも保険料を抑えることができます。終身保険に付加される特約と、単独の保険商品があり、なかには、非喫煙者やBMI値、血圧値などが良好で健康な方には保険料が割引かれる保険もあります。通常は、被保険者が死亡または高度障害時に支払われますが、身体障害状態や要介護状態で支払われる保険などもあります。
ただし、若い時の支出の状況を細かく見ると、子供の成長に従って支出が増えるため、毎年一定の年金受給では一時的に赤字になる場合がありますので注意が必要です。他にも思わぬ出費があるかもしれませんので、そのようなことが危惧される場合は、総額は90%前後に減少するものの、保険金を一時金として一括で受取ることも検討されるとよいでしょう。また、子どもが独立した後は、万一の場合でも貯蓄と遺族年金などの収入で賄えるようになることもあります。実際にそのようになれば、途中で保険を解約して保険料を節約してもよいでしょう。なお、一般的に”収入保障保険”は掛け捨てで、解約返戻金はありません。
次に、”収入保障保険”を受取る場合の税金についても触れておきます。死亡保険金を一時金として一括で受取る場合は、一時金に対して相続税がかかります。また、年金で受取る場合は、”年金受給権”を年金受取人が相続することになり、相続税がかかります。ここで、”年金受給権”の相続評価額は、(1)解約返戻金の額、(2)一時金として一括で受取る場合の額、(3)年金総額を予定利率の複利で現在価格に割戻した額、のうち最も大きい額となります。イメージ図の例において(2)が該当したと仮定して、世帯主が35歳時点の一時金が年金総額の90%だとすると、”年金受給権”は5,400万円となります。相続人が配偶者と子ども1人のケースでは、死亡保険金については法定相続人の数2×500万円=1,000万円が控除されるため、他に受け取る死亡保険金が無ければ、控除後の”年金受給権”は4,400万円となります。
また、基礎控除として3,000万円+法定相続人の数2×600万円=4,200万円が控除されます。したがって、”年金受給権”4,400万円と他に相続財産があれば合算し、そこから基礎控除4,200万円を差し引いた残り(課税遺産総額)に相続税が課せられます。課税遺産総額がゼロでない場合は、一旦、法定相続人で課税遺産総額を按分してからそれぞれの相続税額を個別計算した後に合算します。死亡保険金の場合は受取人が全て相続するため、実際の相続額の比率に従って合算した相続税額が割り振られます。その上で、配偶者については相続額が(1)法定相続分の金額、(2)1億6,000万円、のどちらか大きい方まで相続税が非課税となる税額軽減特例があります。未成年者については(18歳-相続時の年齢)×10万円を税額から控除でき、例えば、子どもに割り振られた課税遺産額が1,000万円の場合の相続税は100万円ですが、相続時の子どもの年齢が8歳未満であれば、子どもにも相続税はかかりません。
ただし、年金を受取る際には、相続税を課せられなかった部分については、2年目から雑所得と見なされて他の所得と合算され、所得税、住民税が課せられます。上の例では相続税評価割合が90%でしたが、このときの課税対象は年金総額の8%と定められています。下段のイメージ図に示すように、受給回数をn回とすると、8%の金額をn-1回で均等に按分するのではなく、2年目は最終年の1/n-1、3年目は2/n-1・・・となるように段階的に按分されます。つまり、保険契約期間の満了に近づくにつれ雑所得と見なされる額が増えていきます。また、支払った保険料総額のうち年金受給権に相当しない分(この例では10%)についても、それぞれの受給回の所得額に応じて按分して、経費として所得額から控除することができます。
(出典:「相続等により取得した年金受給権に係る生命保険契約等に基づく年金の課税関係」(国税庁)(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1620.htm)を元に、課税の説明部分について、ライフプラン・シム作成)
家庭の経済状況に関係なく、子どもが大学や専門学校などの高等教育を等しく受けることができるように、令和2年度から住民税非課税世帯などを対象として、新しい修学支援制度が開始されています。支援の柱は、返還する必要のない”給付型奨学金”と、入学金や授業料が免除、もしくは減額となる”授業料等減免”の2つです。
”給付型奨学金”は学生生活を送るための生活費として、日本学生支援機構から毎月一定額が学生に給付されます。表の金額は年額ですが、住民税非課税世帯(第1区分)の給付額は、進学先が大学・短期大学・専門学校か高等専門学校(4年次・5年次)か、国公立か私立か、自宅通学か自宅外通学かによって異なります。さらには世帯所得(第2,3区分)によって、給付額が第1区分の2/3、1/3に減額されます。また、給付型奨学金の給付対象者は、”授業料等減免”を受けることができ、進学先が大学、短期大学、高等専門学校(4年次・5年次)、専門学校のいずれか、国公立か私立かによって減免額の上限が異なります。さらには給付型奨学金と同様に世帯所得(第2,3区分)によって、減免額が第1区分の2/3、1/3に減額されます。
(注)世帯所得区分については、市区町村民税の課税標準額×6%-調整控除額が次の場合、第1区分:100円未満、第2区分:100円以上25,600円未満、第3区分:25,600円以上51,300円未満(課税標準額などは、マイナポータルなどで確認できます)
なお、世帯の資産基準としては、生計維持者1人の場合は金融資産1,250万円未満、2人の場合は2,000万円未満となっています。また、支援制度の対象となる教育機関は、一定の要件を満たすことを文科省が確認した教育機関に限られますが、多くの教育機関が認定されており、文科省のホームページで確認できます。
支援を受けるための手続きは、入学後(在学採用)であれば春と秋の年に2回申請する機会があります。春申し込みの場合は遡って4月分から、秋申し込みの場合は遡って10月分から支援が受けられます。ただし、入学金の減免は入学直後の申請に限られます。なお、給付型奨学金については、高校3年生もしくは高校卒業後2年以内であれば、進学前年の春に予約採用の申請をすることができます。
給付や減免の対象者は、世帯の収入や資産による制限の他に、進学先で学ぶ意欲がある学生でなければならず、申請時には一定の学力基準を満たしていることが求められます。また、修学中に一定の出席率を満たさない場合や、単位修得数が標準に対して一定割合以下の場合や、修業年限(大学の場合は4年など)で卒業できないことが確定した場合などには支援が打ち切られ、退学や停学になった場合などには返還を求められることもあります。
申請手続きや申込資格、学力基準などの詳細は、日本学生支援機構のホームページ(https://www.jasso.go.jp)で確認してください。
(出典:「高等教育の修学支援新制度」(文部科学省)(https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/hutankeigen/index.htm)を元に、ライフプラン・シム作成)
グラフは、我が国の流通市場における10年物の固定利付国債の、実勢価格に基づいて算出した半年複利金利(半年複利ベースの最終利回り)を表しており(ここでは以後、これを「長期金利」と言う)、上のグラフは1986年7月~約37年間の推移を、下のグラフは最近10年間の推移を拡大して表しています。
長期金利は、市場の取引ベースの金利(市場金利)であることから、経済活動の状態を表すと言われています。景気が良ければ消費が活発になり、物価が上昇してお金の価値が下がり(インフレ)、多くの利息を払わなければお金が借りられないため金利が上昇します。逆に景気が悪くなると消費が停滞し、物価が下落してお金の価値が上がり(デフレ)、金利が低下します。また、長期金利は、固定金利の住宅ローンの基準金利として用いられたり、個人向け国債を始めとした債券の基準金利に用いられており、借りるにしても投資するにしても、非常に重要な指標となります。
2013年以来、日銀の金融緩和政策により長期金利は下がり続け、2016年には国債を買い増して、市場金利である長期金利をゼロ金利誘導(イールドカーブ・コントロール)し始めたことで、実質ゼロからマイナス金利となります。しかし、その後も物価上昇率は目標の2%に達しない状態が長く続き、2022年のエネルギー価格の高騰からの世界同時インフレ、日米金利差による円安などの外的要因により、ついに長期金利が上昇し始めています。さらに、2022年末の日銀によるイールドカーブ・コントロールの目標金利の拡大(±0.25%→±0.5%)により、長期金利が目標金利の上限付近まで上昇しました。その後、上限は1%まで引上げられ、ついに、2024年3月にマイナス金利政策の解除、イールドカーブ・コントロールの撤廃を決め、長期金利は1%を超えるに至りました。(2024/5/31 追加)
長期金利が上昇すると、借りる側からすれば、新たに借りる固定金利型の住宅ローンの金利が上昇し、仮に政策金利(短期金利)も見直されれば、既に借りている変動金利型の住宅ローンの金利も上昇する可能性があります。これまで、政策金利は長くゼロまたはマイナス金利が継続していたため、変動金利型住宅ローンを利用される方が圧倒的でしたが、金利の上昇局面においては、固定金利型の住宅ローンが有利となってくるため、今後の政策金利の動向によっては固定金利型を選択する人が増えてくる可能性があります。さらに、金利の上昇がピークを迎え、下降局面に転じれば、変動金利型が再び有利になってきます。
預ける側、投資する側からすれば、個人向け国債や長期債券の金利が上昇する可能性がある一方で、借入金利が上昇することで、住宅の購入や、企業の新規事業投資や設備投資などが控えられ、業績が停滞、悪化し、株価が下落する可能性があります。金利上昇局面では、「変動10年」個人向け国債などが、さらに、金利の上昇がピークを迎え、下降局面に転じれば、固定金利の長期債券などが有利になってきます。
一方、経済の状況は各国で異なるため、2022年の米国での急激なインフレにより米国債の長期金利が上昇し、日米での長期金利の差により、円が売られドルが買われたことで、30年振りのレベルの円安が進行しました。米国債の長期金利は、2022年10月~11月にピークを付けたかのように見えています。米ドル建ての高い固定金利の債券や貯蓄型の保険で長期に運用できれば、満期・償還時の円高による為替差損を超える収益も見込める可能性があります。ただし、手数料などのコストや信用リスクなどを含めてしっかり確認することが必要です。
このように、長期金利を見ることでその国の経済状態が分かり、投資も一般的には、金利の下降から上昇局面では株式やREITが、上昇から下降局面では債券が高いパフォーマンスを得やすくなります。このような反対の動きをするポートフォリオを組むことで、景気変動による投資リスクを減らす効果があることもお分かりいただけるでしょう。
長期金利は、金融機関などでも日々の値を公表しており、もう一つの経済指標である消費者物価指数(CPI)よりも早く、簡単に確認することができます。長期金利の動きに目を向けることが、経済を読み解く、言い換えれば金融リテラシー向上の一歩となります。
(出典:「国債金利情報」(財務省)(https://www.mof.go.jp/jgbs/reference/interest_rate/index.htm)のデータを引用してライフプラン・シム作成)
グラフは、金融広報中央委員会による「金融リテラシー調査(2022年)」のデータを引用して作成したものです。調査結果は、委員会が作成した金融知識を問う質問の正答率により、金融リテラシーの高低が0~20点、21~40点、41~60点、61~80点、81~100点の5つの階層に分類されており、それぞれの階層の収入、資産と、行動特性に関するアンケート調査の結果を抽出してグラフにまとめたものです。
上段のグラフは、金融リテラシーの高低と収入や資産がどう関係しているかを見たもので、金融リテラシーが高いほど、収入、資産共に多い傾向にあることが分かります。なお、ここでは示していませんが、年齢階層別の正答率をみると、年齢層が高いほど正答率も高い傾向にあり、一般的に高齢者の方が保有資産は多いことから、そのような傾向が見えているとも考えられます。
下段のグラフは、横軸に10のアンケート項目があり、項目ごとに正答率の階層別棒グラフで示しています。10の項目は以下の通りです。
1.損失回避傾向が強い人の割合
2.横並び行動バイアスが強い人の割合
3.借入れ時に他の商品と比較しない人の割合
4.金融・経済情報を月1回も見ていない人の割合
5.商品性を理解せずに外貨預金を購入した人の割合
6.老後の生活費の資金計画が無い人の割合
7.金融商品選択時にウェブサイトを見ている人の割合
8.金融商品選択時に金融機関窓口で相談している人の割合
9.期日に遅れずに支払いをする人の割合
10.緊急時に備えた資金を確保している人の割合
項目1,2は、行動経済学的に人間が取りやすい行動の傾向を示したものです。項目1の損失回避については、人間は利得よりも損失の方を大きく感じる傾向があるため、損失をできるだけ回避しようと行動するというもので、その傾向が強いとリスクのある投資には消極的になると言われています。項目2の横並びバイアスについては、人間は社会規範に従う傾向があり、周囲の人の意見や行動に影響を受け、自分もそれに従おうと行動するもので、この傾向が強いと、自分で調査するよりも周囲の勧めに従ってしまう危うさがあります。項目1,2共に、金融リテラシーが低いほど、これらの傾向が強まっていることが分かり、このあと見ていく項目3以降の行動の傾向と一致していることが分かります。
次に、項目3~6は、金融に関する行動が消極的な傾向を示すもので、金融リテラシーの低い階層ほど、その傾向が強いことが分かります。逆に、項目7~10は、金融に関する行動が積極的な傾向を示すもので、金融リテラシーの高い階層ほど、その傾向が強いことが分かります。
このように、金融リテラシーと行動には関係性があることから、金融リテラシーを高めることの重要性、メリットを理解して頂けると思います。みなさんも、各項目についてご自分の行動を照らし合わせて、どのような傾向があるかを確認してみてください。また、「役立つコラム」 には、年金・税金・給付金などの制度を説明した記事や、資産運用のポイント、節約や節税などの情報も掲載しておりますので、金融知識に触れるきっかけになれば幸いです。
なお、調査の母体は30,000人で、アンケート結果の割合は、それぞれの正答率の階層の人数、もしくはそれぞれの階層の人数のうち商品を購入するなどした人数に対する割合を示しています。また、実際に実施した調査票の内容や他の質問の結果については、出典をご覧ください。
(出典:「金融リテラシー調査(2022年)」(金融広報中央委員会「知るぽると」)(https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/literacy_chosa/2022/)のデータを元にライフプラン・シム作成)
年金生活者支援給付金は、公的年金等の収入とその他の所得の合計が一定金額以下の年金生活者を支援するために、年金に上乗せして支給されます。給付の対象要件は、以下の3点です。
・65歳以上の老齢基礎年金の受給者である
・同一世帯の全員が市区町村民税非課税である
・前年の公的年金等の収入金額と、その他の所得の合計額が881,200円以下である
(注1)所得要件などの支給要件を満たさなくなった場合には、給付金は支給されなくなります。老齢基礎年金を繰下げ受給した場合には、繰下げ期間中は支給されません。また、所得制限の金額は、令和4年10月時点の老齢基礎年金の満額(781,200円)+100,000円で、毎年の老齢基礎年金(満額)の改定に従って見直されます。遺族年金、障害年金などの非課税収入は、公的年金等の収入金額には含まれません。
給付月額は、以下の①②の合計金額となります。
①5,020円 5,140円×基礎年金保険料納付済月数/480ヶ月
②10,802円 11,041円×保険料免除月数/480ヶ月
(注2)給付額は、毎年、物価の変動による改定があります。②の10,802円 11,041円は老齢基礎年金の満額(月額)の1/6で、保険料が全額免除、3/4免除、半額免除の場合に適用され、1/4免除の場合は老齢基礎年金の満額(月額)の1/12の5,401円 5,520円が適用されます。また、分母の被保険者期間である480ヶ月は、昭和15年4月2日~昭和16年4月1日までに生まれた方については12ヶ月減じられ、大正6年4月1日以前に生まれた方を180ヶ月(下限)とするまで、生年月日が1年違うごとに被保険者期間が12ヶ月づつ減じる調整がなされます。
(注3)年金収入とその他の所得の合計が老齢基礎年金の満額を超える場合、①の給付額が、所得上限額との差額/100,000を乗じた金額に減額されます。
障害基礎年金、遺族基礎年金を受給されていて、前年の所得が4,721,000円以下である方は、それぞれ障害年金生活者支援給付金、遺族年金生活者給付金が支給されます。給付月額は、障害年金生活者支援給付金で、障害等級が2級の方が5,020円 5,140円、1級の方が6,275円 6,425円で、遺族年金生活者支援給付金は5,020円 5,140円となります。
(注4)所得には、障害年金、遺族年金などの非課税収入は含まれません。また、所得上限額は、扶養親族等の数に応じて、所得税の扶養控除額の合計だけ増額されます。
(2023/4/27 2023年度の金額に修正)
(出典:「年金生活者支援給付金制度について」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/nenkinkyuufukin/system.html)を元にライフプラン・シム作成)
私が在籍していた会社でも、50歳になると”セカンドキャリア研修”なるものがありました。60歳で退職するか、60歳以降も雇用延長するか、退職して別の会社で働くか、早期退職して転職するか、などを考えるきっかけを与える研修です。定年退職後に向けての準備などが書かれた書籍もたくさん出版されており、こうした本を読んでセカンドライフを考えるきっかけにもなりました。
振り返って見ると、一番最初にやるべきことは、何歳までどれくらい稼ぐ必要があるかを確認することです。そのためには、ライフプランシミュレーションが欠かせません。50歳になると、退職金や年金がいくらくらいもらえるかの確度も上がってきます。一般的には、教育費や住宅ローンの返済なども、あとどれくらいかが見通せる頃でしょう。会社によっては退職金を一括でもらうか、年金でもらうか、併用するかを選択できる場合もあります。どのもらいかたが自分のライフプランに合っているか、あるいは手取り額が多くなるか、などもライフプランシミュレーションで確認すると良いでしょう。
公的年金についても、国民年金または厚生年金の加入期間が480ヶ月に満たないのであれば、60歳以降65歳に達するまでか、480ヶ月に達するまで任意加入することで、基礎年金額を増額することもできます。60歳以降も雇用されれば、厚生年金の報酬比例部分を増やすこともできます。また、いずれ公的年金の受給開始年齢を決めることも必要になります。受給額は5年繰上げると24%減少し、5年繰下げると42%、10年繰下げると84%増加します。これらも、ライフプランシミュレーションで確認ができます。キャッシュフローを改善するための1つの選択肢です。
そして、住宅ローン、生命保険などの大きな支出を減らせないかを検討しましょう。昔の住宅ローンは金利が高く、金利の低いローンへの借換えによって返済額が減る可能性があります。既に金利が低ければ、退職金で、あるいは退職金がほぼ確実に見込めるのであれば退職金をもらう前に、繰上返済を検討しましょう。早い時期に繰上返済するほど返済額が軽減されます。逆に昔の保険は保険料率が低いので、そのようなお宝保険は残して、保険金額の減額や特約部分を見直すと良いでしょう。また、退職後はどういうレベルの生活をしたいか、それによっても何歳までどう働くかが変わってきます。キャッシュフローを見ながら、折り合いを考えるとよいでしょう。
その上で、セカンドキャリアは何を選択すべきか、自由度があるなら何がやりたいかを考えます。ただし、何がやりたいかがなかなか見つからないことがほとんどだと思います。したがって、できるだけ早くから考えることです。また、何がやりたいかが見つかっても、実際に何ができるかは必ずしも一致しません。そのため、プランBを考えておくことです。そして、それを実現するには、いつ動き始めるか、どう動くかなど、具体的な計画に落とし込みます。ただし、60歳で定年退職して再就職先を探そうとしても、自分で思い描いたような職はなかなか見つかりません。60歳以降の再就職の実体をつかんでおくと共に、知人や友人のつてがあれば活用することも考えましょう。そうでなければ、雇用延長を選ぶことになるでしょう。
起業にチャレンジする場合は、一筋縄ではいかないことも事実です。最悪のリスクを考え、失敗したら辞める撤退ラインを家族と合意しておくことです。また、新たな資格が必要であれば在職中に取得し、ホームページで集客する個人事業を考えているのであれば、在職中から情報を発信するブログを始めるなどして、早くからファンを獲得するための種を撒いておくことをお勧めします。どういう準備が必要か、早くから調べて実行することがリスク軽減に繋がります。
次に手を付けるべきは資産形成です。老後の貯蓄がインフレなどにより目減りするリスクを減らすために、貯蓄の一定の割合を目標にして積立て投資を検討することをお勧めします。ただし、退職金をもらったらどう増やそうと考えるのではなく、これはできるだけ早いうちから実行した方がよいでしょう。過去の実績からすれば、積立て投資は長期であるほど時間分散効果によりリスクが下がります。退職金を一括で運用するとリスクは高まります。大事な退職金を大きく減らさないよう気を付けてください。
その次に、年を取ると健康であることが重要になります。老化は避けられません。男女とも数えで61歳が厄年ですが、厄年はその前後で身体の変化が起きる年齢だと実感します。毎年健康診断(できれば人間ドック)を受診し、早期発見、早期対策をすることが、満足のいくセカンドライフを送るための最低ラインです。そして、どうしても運動不足、代謝不足になり、大抵の人はいろいろな数値が悪化します。ずぼらであっても、何かしらの運動制限があっても、何か体を動かせる興味、趣味を見つけて、早くから習慣付けるのが一番です。これが見つからないと、あっという間に数値は悪化します。何年か先には重大な疾患に至ることもあり得ます。口腔ケア、嚥下機能の維持も、長く生きる上でとても重要です。全身の筋力が低下すると嚥下機能、認知機能も低下すると言われています。また、今までと同じ食事をしていても代謝量は減って行きます。徐々に食事の内容や量を見直すことも必要です。
もう一つ考えておかなければならないことは、親の介護です。すでに直面されている方もおられると思いますが、離れて暮らしている場合は突然その時が訪れたりします。様々な事情により、どうしても施設に頼らざるを得ないこともあります。親が自ら考えていれば別ですが、親がまだ動けるうちから、介護が必要になったらどうするか、親の収入や財産はどれくらいあるかなどを含めて、親や親族と話しができることが最も望ましいと言えるでしょう。
50歳になっても、まだまだ定年退職は先の話だと思って、なかなか考えられない、どこから手を付けたらいいか分からない、そう感じる方が多いと思います。しかし、実際には早くから手を打つことが、良い結果につながることは間違いありません。少しでも早く一歩を踏み出せる、そんなお役に立てれば幸いです。
グラフは、金融庁が2018年から毎年公表している「投資信託の共通KPIに関する分析」のひとつである「投資信託の運用損益別の顧客比率」を基に、現在までどのように推移しているかをまとめて示したものです。
運用損益別の顧客比率とは、運用損益率が0%以上の(利益が出ている)顧客と、0%未満の(損失が出ている)顧客が、それぞれ全体の何パーセントを占めているかを、各金融事業者が調査集計して金融庁に報告している指標です。年度末の3月末を基準日として、基準日に投資信託を保有している各顧客について、購入時以降の累積の運用損益(手数料控除後)を算出して、各年度の損益率を平均化したものになります。したがって、年度末に保有している銘柄に限らず、途中で売却、もしくは償還した銘柄なども含まれます。
グラフでは、利益と損失が対比しやすいように、利益が出ている顧客の比率をプラス側、損失が出ている顧客の比率をマイナス側として、積み上げ棒グラフで表しています。また、3月末が基準日であるため、横軸は年度で表しています。例えば2017年度(2018年3月末が基準日)では、利益が出ている顧客が54%で、損失が出ている顧客が46%ということになります。
グラフから、2019年度を除いて利益を出している顧客の比率の方が多く、約5割~8割にのぼることが分かります。2019年度に損失の顧客比率が高いのは、2020年2月から3月にかけて世界的に流行し始めた、新型コロナウィルスの影響による株価の大幅な下落によるものです。2020年度、2021年度は、いったん下落したところからの回復により、利益を出している顧客の比率が8割程度に戻っています。しかし、ロシアの軍事侵攻に端を発した世界的なインフレを抑制する、欧米の利上げの影響による株価の下落もあって、2022年度は約7割に低下しています(2023/11/14 加筆修正)。とはいうものの、不測の事態による一時的な損失の時期を経ても、長期に保有することでリスクを減らせるであろうことが期待されます。
なお、2019年度の報告では、顧客比率の詳細も報告されており、2018年度からの変化は以下のようになっています。2018年度では0~+10%にあったピークが、2019年度では-30~-10%にシフトしたことが分かります。
利益率範囲:2018年度、2019年度
-50 % ~ : 0.8%、 4.0%
-50~ -30%: 1.1%、 6.9%
-30~ -10%: 7.6%、34.6%
-10~ 0%:24.2%、24.2%
0~+10%:32.6%、10.3%
+10~ 30%:20.8%、11.4%
+30~ 50%: 8.2%、 5.0%
+50 % ~ : 4.6%、 3.6%
また、2022年9月からは、2022年3月末基準日の「外貨建保険の共通KPIに関する分析」も報告されており、それによると利益が出ている顧客比率は71%で、損失が出ている顧客比率は29%となっています。全事業者の顧客の平均コストは約0.8%、平均リターンは約1.5%で、投資信託の全事業者の顧客の平均コストが約1.8%、平均リターンが約8%と比較すると、低コスト、低リターンであることが分かります。
これに対して2023年3月末基準日では、利益が出ている顧客比率は45%、損失が出ている顧客比率は55%と大きく変化しており、平均コストは約0.8%でほぼ横ばいながら、平均リターンは約1.0%に低下しています。これは、2022年3月下旬ごろからの円安ドル高による解約の増加、海外金利の上昇による市場価格調整、新規契約の増加などによるものです(2023/11/14 加筆修正)。
金融庁のこれらの報告は、そもそも「顧客本位の業務運営に関する原則」に基づいて金融機関が取り組みを進めているかを、共通の指標で公表することで、各金融機関の顧客本位の業務運営を推進しようとするものです。金融事業者別に運用損益別顧客比率も報告されていますので、興味のある方は出典の資料をご覧ください。
(出典:「投資信託の共通KPIに関する分析」(金融庁)(https://www.fsa.go.jp/news/r5/kokyakuhoni/20230908/kpi_toushin_230908.pdf)、
「外貨建保険の共通KPIに関する分析」(金融庁)(https://www.fsa.go.jp/news/r5/kokyakuhoni/20230908/kpi_hoken_230908.pdf)を元にライフプラン・シム作成)
「加給年金」 とは、夫婦の一方が65歳以降に老齢厚生年金を受給し始めた時に、厚生年金の被保険者期間が20年以上あって、配偶者の生計を維持している場合には、配偶者が年金を受給できる65歳になるまでの間、年金に上乗せして受給することができる家族手当のような位置づけです。また、18歳未満の子がいる場合には、その子が18歳を迎えた年度末まで、さらに加算されます。
ただし、年金受給者が配偶者の生計を維持していることを判定する要件があります。それは、年金を受給開始する時点で、配偶者が、「850万円以上の収入、もしくは655万5千円以上の所得を将来に渡って有しないと認められること」、ということです。収入は給与収入など、何らかの対価として相手からもらう金額のことで、所得は収入から必要経費を差し引いた金額のことです。給与であれば収入から給与所得控除額を差し引いた金額が所得になります。これにより、年金を受給開始する時点で、配偶者の収入が850万円未満もしくは所得が655万5千円未満であるか、おおむね5年以内に、配偶者の定年退職などにより、収入が850万円未満もしくは所得が655万5千円未満となることが認められる(客観的にみて確認できる)こと、が要件となっています。なお、ここでの収入、所得には、退職金などの一時的な収入、所得は含みません。逆に、受給開始時は配偶者の収入要件を満たしていても、その後収入が増えて要件を満たさなくなった場合は、加給年金の加算が終了します。
年金を受給するための手続き時に(これを「年金請求」と言う)、配偶者の前年の収入または所得が要件を満たすか、あるいは請求時点で満たしていないものの、おおむね5年以内に収入または所得が要件を満たす見込み(ただし、定年退職など客観的に収入が減ることが明確である場合に限られます)があるかを確認する項目(生計維持申立)があります。ここで、見込み「なし」と申告してしまうと、おおむね5年以内に定年退職などして収入が減ったとしても、要件を満たさないと判定される可能性がありますので、今後収入が減る可能性がある場合には「あり」としておくことです。なお、「あり」とした場合には、配偶者を含めた世帯全員の戸籍謄本、住民票の写し、配偶者の退職年齢が分かる勤務先の就業規則の写しや、配偶者の収入が分かる源泉徴収票などの添付資料、あるいは配偶者のマイナンバーなどが必要になります。また、退職後に雇用延長などがある場合は、その賃金が客観的に判断できるものが求められます。
特別支給の老齢厚生年金を受給開始する場合にも年金請求手続きがあり、報酬比例部分のみの受給の場合には、その時点では加給年金はもらえませんが、配偶者や子に関する同様の確認事項がありますので、おおむね5年以内に配偶者の収入が減る場合も含めて、上記と同様の対応が必要になります。但し、特別支給の年金請求時に要件を満たしていなくても、その後の状況が変わって満たせば、老齢年金の年金請求時に、加給年金額加算開始事由該当届を提出して、生計維持申立を行うことができます。(2023/8/8 下線部加筆修正)
一方、遺族厚生年金についても配偶者、親族の収入要件があり、本人死亡時の前年の収入が850万円未満、もしくは所得が655万5千円未満、あるいは、おおむね5年以内に定年退職等により、収入もしくは所得が基準額未満となることが認められること、となっています。しかし、死亡時にのみ判定が行われるため、老齢厚生年金の要件にある「将来に渡って」という文言が無いため、死亡時の前年の収入または所得が要件を満たさない場合には、以後一切の遺族年金を受取ることはできず、逆に、要件を満たしていれば、その後収入や所得が増えても遺族年金を継続して受け取ることができます。(2024/9/12 下線部を追加するとともに、誤りを訂正)
(出典:「生計維持関係の認定基準及び認定の取り扱い」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12500000-Nenkinkyoku/0000088038.pdf)を元にライフプラン・シム作成)
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