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    役立つコラムに新しい記事「相続財産の売却益にかかる税金と特例」を投稿しました。相続税を納めた場合であっても、相続財産を売却すると、売却益に所得税・住民税が課されます。ただし、一定の要件を満たせば、節税できる特例があります。詳しくは記事をお読みください。

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64

資産を売却した時の税金


 2022/03/24

 [税金]

63

住宅ローン減税の改正見込


 2021/12/28

 [不動産]

62

医療費控除


 2021/12/21

 [税金]

61

生命保険料控除


 2021/12/15

 [税金]

60

世帯と世帯主


 2021/12/07

 [ライフプラン]

59

高額療養費・高額介護サービス費制度


 2021/11/30

 [保険・医療]

58

介護サービス費等の負担限度額の改正


 2021/11/24

 [保険・医療]

7件/全113件

資産を売却した時の税金
StockSnapによるPixabayからの画像

 一般的に、土地や建物、株式や投資信託、貴金属・宝石や書画・骨董、ゴルフ会員権や著作権などの資産を売却した場合に、認められた経費や決められた控除額を差し引いて残った譲渡所得に対して所得税、住民税が課せられます。つまり、譲渡所得は以下の計算式となります。
 譲渡所得 = 収入金額 - (取得費 + 譲渡費用 + 特別控除)
 具体的に、どのような資産に対して譲渡所得が課せられるのか、認められる取得費、譲渡費用は何か、資産の種類などによって異なる特別控除の金額はいくらか、税率はいくらかなどについて順に見て行きます。ただし、ここでは一般的な事例についてのみ触れることとしますので、詳細は出典の国税庁ホームページでご確認ください。

(1)譲渡所得の対象
 まず、譲渡所得の対象ですが、最初に挙げたような一定の資産性が認められるものが対象であり、家具、衣服、自家用車両などの生活に必要な動産に関しては、オークションやフリマなどで購入価額よりも高く売却できたとしても譲渡所得にはなりません。ただし、貴金属・宝石や書画・骨董などで1個または1組の価額が30万円を超えるものを譲渡して得た所得は対象となります。例えば時計は生活用動産ですが、素材によっては貴金属や宝石に該当する場合もありますので、注意が必要です。

(2)取得費と譲渡費用
 譲渡所得の計算式では、取得費と譲渡費用を差し引けることが分かります。取得費には、購入代金以外に、土地・建物であれば、不動産取得税、登録免許税、印紙税などの税金や、借入金の利子のうち実際に使用し始めるまでの期間に相当する部分や、購入後に改良を加えた改良費など、株式などであれば購入手数料などが含まれます。なお、取得費が不明な場合や、実際の取得費が売却代金の5%を下回る場合には、取得費を売却代金の5%相当額とすることができます。一方、建物や事業用車両などの場合は、期間の経過により価値が減少するため、その間の減価償却費を差し引く必要があります。戸建てやマンションなどの建物を含む不動産を売った際に、売却価額が購入価額を下回ったから譲渡所得は無い、とは一概に言えませんので注意してください。

 譲渡費用として認められるものとしては、土地や建物の場合には、仲介手数料、売主負担の印紙税、建物の取り壊し費用など、株式などの場合には売却手数料など、売却するために直接かかった費用です。

(3)特別控除の額
 マイホームを、住まなくなって3年が経過した日を含む年末までに譲渡した場合は、特別控除として最高3,000万円が特例で控除できます。ただし、譲渡した年、その前年、前々年にこの特例の適用が無いこと、親族以外への譲渡の場合に限られますが、所有期間によりません。なお、仮住まい、一時的な住まいや、別荘などの趣味、娯楽、保養のための住まいには適用されません。

 貴金属・宝石、書画・骨董、事業用車両などを譲渡した場合は、特別控除として最高50万円が控除できます。したがって、売却益があったとしても50万円を超えない限り課税されません。なお、株式等については、特別控除はありません。

(4)税率
 株式などを譲渡した場合は、他の所得と分離されて課税され、税率は所有期間にかかわらず一律15%の所得税、5%の住民税が課せられます。土地・建物などを譲渡した場合も、他の所得と分離して課税されますが、所有期間(1月1日時点での所有)が5年以下の場合は短期譲渡所得となり一律30%の所得税、9%の住民税が課せられ、5年超の場合は長期譲渡所得となり一律15%の所得税、5%の住民税が課せられます。

 一方、貴金属・宝石、書画・骨董、ゴルフ会員権・著作権などは、給与所得などと合算されて超過累進課税の所得税、一律10%の住民税が課せられますが、所有期間が5年超の場合は長期譲渡所得として、特別控除後の譲渡所得が1/2されて他の所得に合算されます。

 なお、所得税にはこれらの税率に復興特別所得税率が上乗せされます。

(5)確定申告
 譲渡所得がある場合は、確定申告を行った上で納税が必要です。なお、収入金額が2,000万円以下で1ヵ所から給与の支給を受け、源泉徴収される給与所得者や、収入金額が400万円以下で源泉徴収される公的年金受給者で、譲渡所得を含めたその他の所得(退職所得を除く)が20万円以下であるときは、確定申告は不要とできます。ただし、マイホームの税金の特例による特別控除などを適用する場合は、適用した結果、譲渡所得がゼロになる場合でも確定申告が必要になります。

 マイホームを譲渡した場合や、買い換えた場合の税金の特例や、損が出た場合の他の所得との損益通算や繰り越しについては、「マイホームを売った時、買い換えた時の税金の特例」 に記載していますので、そちらもご覧ください。

(出典:「譲渡所得のあらまし」(国税庁)(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/code/index.htm#code03-01)を元にライフプラン・シム作成)


住宅ローン減税の改正見込
拡大可

 令和4年の税制改正大綱が閣議決定され、新型コロナによる経済の落ち込みへの対策として、住宅ローン減税も2022年から4年間延長となる見込ですが、合わせて控除率、控除限度額などが引き下げられる見込みです。住宅ローン控除は、入居した年の年末のローン残高に対して翌年に行う確定申告で申告するものであることから、2022年以降にマイホームへの入居やマイホームの購入を予定されている方は、改正による影響をよく確認された方がよいでしょう。なお、医療費控除や生命保険料控除は所得から控除することで間接的に節税になる制度であるのに対して、住宅ローン控除は徴収される税額から直接控除する制度であるため、大きな節税効果がある制度です(2022年1月4日一文追加)。

 図は、財務省が作成した、これまでの住宅ローン減税の経緯が分かる資料をベースに、国土交通省が公表した今回の改正見込を加えたものです。改正の主な内容は以下の通りです。但し、今後の国会で関連税制法が成立することが前提となります。

・制度は2025年(令和7年)まで4年間延長。
・住宅ローン残高からの控除率をこれまでの1%から0.7%に引き下げ。
・控除期間を新築13年、中古10年とする。但し、新築一般住宅は2024年以降の入居の場合10年とする。
・一般住宅の借入金限度額を、これまでの新築4,000万円から3,000万円に減額。但し、新築一般住宅は2024年以降の入居の場合2,000万円(但し、2023年末までの建築確認が必要(2023/9/6 下線部追加))。また、中古住宅はこれまでと同様2,000万円。
・環境性能等に応じた借入限度額の上乗せ措置(以下の(1)(2))を講じる。
(1)新築・買取再販の場合の借入限度額
①長期優良住宅・低炭素住宅に対して、2023年までの入居で5,000万円、2025年までの入居で4,500万円。
②ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)水準省エネ住宅に対して、2023年までの入居で4,500万円、2025年までの入居で3,500万円。
③省エネ基準適合住宅に対して、2023年までの入居で4,000万円。
(2)中古住宅の場合の借入限度額
①~③の省エネ住宅に対して、3,000万円。
・ローン控除が受けられる所得要件を3,000万円以下から2,000万円以下に引き下げ。
・既存住宅の築年数要件(耐火住宅25年以内、非耐火住宅20年以内)について、「昭和57年以降に建築された住宅」(新耐震基準適合住宅)に緩和。
・新築住宅の床面積要件については、2023年末までの建築確認の場合、40㎡以上に緩和(但し、所得要件1,000万円以下)。
・所得税額から控除しきれない額は、個人住民税から控除する制度について継続。

 なお、無料でご利用になれる「ローン計算ツール」 において、今回の改正内容を適用した場合の住宅ローン控除額も求められますので、お試しください(2022年3月23日一文追加)。

(出典:「住宅ローン減税について教えてください」(財務省)(https://www.mof.go.jp/tax_information/qanda013.html)、
「令和4年度 国土交通省税制改正概要」(国土交通省)(https://www.mlit.go.jp/page/content/001445195.pdf)を元にライフプラン・シム作成)


医療費控除
Gerd AltmannによるPixabayからの画像

 1年間に支払った医療費が10万円を超えた場合、所得税の確定申告をすることで医療費控除を受けることができます。正確には、医療費が10万円または年間総所得×5%のいずれか低い方を超えた場合に、超えた分を所得から控除することができ、控除できる上限は200万円です。ここでの医療費には、自己の医療費だけでなく、生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費も含めることができます。また、診療費以外に、医薬品代、病院までの公共交通機関での交通費なども含みますが、控除できる場合、できない場合がありますので、詳しく見ていきましょう。

 まず、医療費控除の適用条件を詳しく見てみると、年間総所得が200万円以上の場合は10万円超が適用され、200万円未満の場合は年間総所得×5%超が適用されることが分かります。一般的に、年金所得者は年金収入から公的年金控除、基礎控除、配偶者控除、社会保険料などが差し引かれますから、65歳以上の年金生活者で夫婦2人世帯の場合では、年金収入などの合計が約480万円以上にならないと所得は200万円を超えません
(上記部分について、本来、総所得の説明、計算値を記載すべきところ、課税所得の説明、計算値を記載してしまいました。お詫びして、以下の通り訂正いたします。2022/1/16)
年間総所得は、年金所得者の場合は年金収入から公的年金等控除額を、給与所得者の場合は給与収入から給与所得控除額を差し引いた金額に、その他の所得を合計した金額になります。65歳以上の年金生活者で、公的年金以外に所得無しの場合、年金収入が約303万円以上にならないと総所得は200万円を超えません。
株式の譲渡所得や配当所得があればその分所得は増えるので注意が必要ですが、医療費が10万円を超えていないからと言って医療費控除は受けられないと思い込んでいる方は、ぜひ所得額を確認してください。

 次に、医療費控除が受けられる対象ですが、基本的に医師の判断による治療にかかった自己負担費用です。健康維持、予防、疲労回復のためや、美容のための費用は対象外です。したがって、人間ドックの自己負担費用は対象外ですが、それによって病気が見つかって治療した場合は、人間ドックの費用も対象となります。また、病院までの公共機関での交通費や、歩けないなどや公共交通機関が無くてタクシーを利用した場合のタクシー代は対象ですが、便利だからと言ってマイカーで通院して駐車場代を払っても、ガソリン代や駐車場代は対象とはなりません。

 例えば、新型コロナ関連で言うと、PCR検査などを自己の判断で受けた場合は控除の対象とはなりませんが、それで陽性であることが判明して診断や治療を受けた場合は、PCR検査費用も控除の対象となります。新型コロナワクチンは現在、無料で接種できますが、インフルエンザワクチンの接種に支払った費用は予防にあたるため控除の対象外です。歯科医療は様々な自由診療もあって、美容の要素が含まれるのかなど判定が難しいところもありますが、国税庁によると、一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額は、医療費控除の対象となるとのことです。例えば、金やポーセレン(セラミック)を使用した治療は対象になります。インプラントも同様です。また、出産費用も対象ですが、今後は保険適用になって自己負担額が軽減される不妊治療の医療費も対象となります。

 なお、入院や通院をした際に、医療保険からの給付金や高額療養費制度による支給を受けた場合は、医療費から差し引かなければなりません。給付金などは、対象の疾病の入院や通院に対して支払われるものであるため、該当の疾病の医療費以外からは差し引けませんので、医療費の総合計から差し引かないよう注意してください。一方で、高額療養費制度の対象にならない入院時の食費などは医療費控除の対象となりますので、医療費に含めるのを忘れないよう注意してください。

 医療費控除の確定申告は、インターネットを利用したe-taxが便利です。医療費控除のエクセルの明細書に個々の医療費の詳細(医療を受けた人の名前、病院・薬局名、支払った医療費、日付)を入力して、合計金額を確定申告書に入力するだけです。医療保険者から交付を受けた医療費通知を添付すればこの明細の記入も省略できます。他は、源泉徴収票の内容を入力すれば完了です。領収書などの提出は不要ですが、求められた場合に必要になりますので、確定申告後5年間は保管しておく必要があります。e-taxの準備は少し面倒ですが、e-taxを使い始めれば還付など容易に受けることができるようになりますのでお勧めです。また、医療費控除は前述のように、自己の医療費だけでなく、生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費も合算することができます。明らかに独立した生活を営んでいる場合を除いて、別居であっても常に生活費などを支援している場合も合算することができます。また、生計を一にする場合の所得要件は無く、夫婦共働きでも、一方が医療費を支払えば、支払った方がまとめて医療費控除を申告することができます。

 控除の対象かどうか迷った時は、出典元である国税庁のホームページで確認してください。

(出典:「医療費を支払ったとき(医療費控除)」(国税庁)(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120.htm)を元にライフプラン・シム作成)


生命保険料控除
拡大可

 生命保険や医療保険、個人年金保険に加入して保険料を支払っている場合、所得税の課税所得を計算する際に、保険料の全額または一定の割合を課税所得から差し引く(控除する)ことができ、それによって所得税を軽減する生命保険料控除の税制があります。給与所得者でこれらの保険料を給与天引きにしている方は、年末調整の際に給与天引きの保険料については自動的に、そうでないものも申告すれば年末調整で納税額が調整され、確定申告せずに保険料が控除されます。一方、自営業者や年金所得者は確定申告が必要になりますし、申告漏れがあった給与所得者も確定申告すれば還付が受けられますので、年末を前に生命保険料控除について整理しておきましょう。なお、保険期間や受取人などによって控除の対象とならないものがありますので、詳しくは国税庁のホームページでご確認ください。

 まず、平成22年に税制改正がなされたことにより、保険契約の締結日が平成23年12月31日以前と、平成24年1月1日以降で保険料控除の扱いが異なります。平成23年までに締結した保険は、一般生命保険と個人年金保険の2つに区分され、それぞれ最高5万円までの控除で、合計で最高10万円までの控除が受けられました。しかし、平成24年以降に締結の保険では、一般生命保険が一般生命保険と介護医療保険に分割され、それぞれ4万円までの控除が受けられるようになりました。また、これに合わせて個人年金保険の控除も上限が4万円に改正になり、3つの区分の合計で最高12万円までの控除が受けられるようになりました。

 なお、保険料と控除額の関係は、単純に上限額まで保険料の全額が控除される訳ではなく、グラフに示すように、第一の一定額までは全額控除されるも、これを超過すると第二の一定額までは超過した保険料の半分が控除に加算され、さらに第二の一定額を超過すると上限額に達するまで、超過した保険料の1/4が控除に加算されます。また、新制度と旧制度の保険の両方に加入する場合には注意が必要です。①旧制度の保険料が6万円を超過する場合は、旧制度での保険料控除の計算を行った上で最高5万円までの控除を受けることができますが、②旧制度の保険料が6万円以下の場合は、新制度と旧制度それぞれの控除額の計算を行って合計した金額の上限が4万円に制限されます。これは、旧制度で6万円の保険料の場合、4万円の控除額となりますので、これが新制度での上限額に達するという意味です。そして、旧制度の控除額だけで4万円の上限を超える場合は、旧制度の計算のみを使用して5万円を上限にすることができるということになります。なお、いずれの場合も、全ての区分の控除額の合計は最高12万円に制限されます。

 これらの計算の仕方は分かりにくいですが、インターネットを利用したe-taxでの確定申告を行うと、新契約、旧契約の年間保険料を入力するだけで自動で控除額を計算してくれますので、e-taxによる確定申告をお勧めします。10月以降くらいから、契約の保険会社から保険料控除証明書が送られてきますので、それを集めておいて、保険の区分と保険料をe-taxに入力して行くだけです。控除証明書を電子データで受取ることもできます。なお、e-taxで確定申告書や確証などの電子データをインターネットで送信する場合には電子証明書(マイナンバーカードなど)などが必要になります。電子データの送信ではなく印刷して税務署に郵送することもでき、その場合、電子証明書は不要です。

 また、定期的に支払う保険料を一定年数分まとめて前納した場合などは、保険会社が前納保険料を一旦預かって、納付期間中はそこから毎年納めていることになりますので、その間保険料控除を毎年受けることができます。保険会社から毎年1年分の保険料に相当する保険料控除証明書が送られてきますので、忘れずに申告してください。一方、保険料が一括払いの終身保険や年金保険などの場合は、その年だけの保険料控除になります。

 年末調整や確定申告で生命保険料控除を行うと、翌年の住民税でも生命保険料が控除されます。住民税は、確定申告や年末調整の結果を受けて、自治体が計算して徴収します。ただし、所得税と住民税では保険料の控除額が異なり、新制度での控除額は区分毎に最高2万8千円、旧制度での控除額は最高3万5千円、全ての区分の合計では最高7万円に制限されます。

 なお、令和4年度の税制改正要望では、所得税における生命保険料控除の上限を12万円から15万円(保険区分毎の上限を5万円)に引き上げる要望が出されており、実現されると多少なりとも減税になる方も多いと思います。

(出典:「生命保険料控除」(国税庁)(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1140.htm)を元にライフプラン・シム作成)


世帯と世帯主
S. Hermann & F. RichterによるPixabayからの画像

 子育て世帯への新型コロナ臨時特別給付金をめぐって、世帯主の所得なのか、世帯の所得なのかという議論がありましたが、そもそも世帯主とは何なのか、また、さまざまな制度が誰の所得で判定するのかについて見ておきましょう。

 「世帯主」について定めた法律は無いようですが、厚生労働省の平成13年都道府県知事あての国民健康保険に関する通知によると、「世帯主」とは、通常「社会通念上、世帯を主宰する者」と定義されており、「世帯を主宰する者」とは、「主として世帯の生計を維持する者であって、その世帯を代表する者として社会通念上妥当とみとめられる者」と解されている、とあります。つまり世帯の中の主たる生計者ということになりますが、これについては、世帯主にはどんな役割があるかを知ることでその意味が分かると思います。そして、世帯主が誰であるかは住民票で示すことができ、厚労省の通知にあるように世帯の代表者ということになります。戸籍の筆頭者と同じ意味かと思われがちですが、それとは無関係で、同じである必要はありません。また、生計が独立しているなら、同一住所でも世帯分離が可能(二世帯住宅など)です。

①世帯主の主な役割
・世帯の代表として、選挙投票所入場券など行政からの通知受領。
・国民健康保険の世帯全員分の納付義務。
・国民年金の連帯納付義務(但し、配偶者も連帯納付義務者)。

 このように、世帯主になることは納付義務を伴うことでもあり、世帯主を選ぶ時の判断基準になるかと思います。一方で、支給や給付を受ける場合は、世帯主の所得で判定する場合、世帯の合計所得で判定する場合、世帯の他の方を含めた所得で判定する場合などにケースが分かれますので注意が必要です。これまで役立つコラムに投稿した記事などを中心に、それぞれの例を見ておきましょう。

②世帯主の所得で判定
・児童手当(正確には児童養育者、すなわち生計中心者)

③世帯の合計所得で判定
・生活保護(他に資産額や親族による援助可否などで判定)
・高等学校等就学支援金制度(正確には保護者等、すなわち親権者の合計所得)
・高額療養費制度(国民健康保険に加入の70歳未満の場合、世帯の定義は国民健康保険に加入の方)

④本人だけでなく世帯内の方の所得で判定
・65歳以上の介護保険料(本人が住民税非課税の場合、住民票の世帯)
・高額療養費制度(国民健康保険に加入の70歳未満の場合を除く)、高額介護合算療養費制度(世帯の定義は同じ医療保険に加入の方の場合と、住民票の世帯の場合あり)
・高額介護サービス費制度(住民票の世帯)

(注)医療保険での世帯の定義・・・同じ医療保険に加入している方

 特に医療費・介護費については、少子高齢化に伴い年々増加していることから、本人の所得だけでなく、扶養義務等を考慮して世帯主や世帯の中で所得のある方を含めて判定する傾向にあります。

 最後に世帯主の変更方法ですが、住民票で示すものであることから、住民票の変更届が必要になりますが、一旦決めてしまえば、あまり変更することは無いかと思います。

⑤世帯主の変更方法
・自治体への住民票の世帯主変更届(世帯主が亡くなった場合は、自治体により届け出不要の場合もあり)


高額療養費・高額介護サービス費制度
拡大可

 一つ前の記事 に、高所得者に対する高額介護サービス費の負担限度額(月額)が改正になったことについて説明しましたが、高額介護サービス費だけでなく、高額療養費(月額)、ならびに両方を合算した限度額(年額)もあります。それぞれ、年齢や所得に応じた限度額を超過した場合に、申告により超過分の支給が受けられる制度です(時効2年)。ただし、加入する医療保険や年齢で所得区分の定義が異なっていて複雑であるため、ここで横並びにして整理しておきたいと思います。

 高額療養費(入院時の食費や保険の対象とならない差額ベッド料、部屋代などは対象外)については、月額の負担額に上限が設けられており、加入している医療保険に申請すると超過分が支給されます。医療保険は被用者保険(雇用者向けの健康保険)、国民健康保険(自営業者、年金受給者など、以降「国保」と記載)、後期高齢者医療保険(全ての75歳以上の方、以降「後期高齢者」と記載)の3つに分かれており、被用者保険とそれ以外で、限度額の所得区分の判定の仕方が異なります。ただし、共通の考え方として、現役並み所得者(70歳以上で窓口負担3割など)かどうかと、低所得者(住民税非課税世帯)かどうかを判定し、それ以外を一般として区分しています。低所得者の限度額を引き下げて負担を軽くする一方で、少子高齢化による医療費対策として高所得者(現役並み所得者)の限度額を引き上げる傾向にあります。なお、療養費の合算範囲の世帯は通常の世帯とは定義が異なり、同じ医療保険に加入している方となります。また、70歳未満の方の場合、合算対象は1人1医療機関(レセプト=診療報酬の請求書)につき21,000円/月以上の自己負担の医療費に限られます。一方、所得区分においての世帯は、保険や所得区分により定義が異なりますので注意が必要です。

 高額介護サービス費(食費や居住費、利用限度額を超えた全額自己負担の介護サービス費などは対象外)についても、月額の負担額に上限が設けられており、加入している市区町村の介護保険に申請すると超過分が支給されます。高額療養費に合わせて、高所得者の負担限度額が引き上げられています。

 高額介護合算療養費については、高額療養費と高額介護サービス費の負担額の年間合計額に限度額が設けられており、加入している医療保険に申請すると、医療保険、介護保険の自己負担比率に応じて両方の制度から超過分が支給されます。

 それでは、所得区分、合算範囲について細かく見ていきましょう。
①被用者保険
所得区分:被保険者の標準報酬月額の等級によって判定。低所得者は被保険者および扶養者の所得で判定。
合算範囲:被保険者が扶養している範囲(扶養要件に合う方)。

②国民健康保険
所得区分:高所得者は、70歳未満の方は住民票の世帯内の国保加入者全員の所得※1の合計で判定し、70歳以上の方は同加入者の中で最も課税所得※2の多い方で判定。低所得者は同加入者全員のそれぞれの所得で判定。
合算範囲:同世帯内で国民健康保険に加入する方全員。
※1)所得:前年の総所得金額(一例として、年金収入から公的年金控除額を差し引き、配当所得などその他の所得を合計した金額)から住民税の基礎控除のみを差し引いた金額。
※2)課税所得:所得から基礎控除だけでなく、配偶者控除や社会保険料控除などの全ての控除を差し引いた、住民税が課税される所得金額。

③後期高齢者医療保険
所得区分:高所得者は住民票の世帯内の後期高齢者の中で最も課税所得の多い方で判定。低所得者は同世帯全員のそれぞれの所得で判定。
合算範囲:同世帯内で後期高齢者医療保険に加入する方全員。

④介護保険
所得区分:高所得者は住民票の世帯内で最も課税所得の多い方で判定。低所得者は同世帯全員のそれぞれの所得で判定。
合算対象:世帯内で介護サービスを受けている方全員。

⑤高額介護合算療養費制度
所得区分:それぞれ加入する医療保険の所得区分に準じる。
合算対象:住民票の世帯内で同じ医療保険に加入する方全員。

 なお、高額療養費ならびに高額介護合算療養費において、現役並み所得者であっても、70歳以上の方の収入金額が単身世帯で383万円未満、2人以上の世帯で520万円未満の場合などは、申請により一般(2割負担)になります。また、70歳未満の方と70歳以上の方が混在する場合、70歳以上の方の負担限度額から支給額を求め、残った自己負担額と70歳未満の方の自己負担額を合算して、70歳未満の方の負担限度額から支給額を求め、双方の支給額を合算します。

 高額療養費については、事前に「限度額適用認定証」などを申請すれば、窓口で限度額を超過する負担額を支払う必要がなくなります。また、大企業の被用者保険(健康保険組合)では高額療養費に独自の付加給付や、自治体によっては医療費助成の制度もあり、さらに自己負担額が軽くなる場合がありますのでお確かめください。

 これらの制度は複雑で分かりにくいため、高額な療養費、介護サービス費を支払った場合や支払う可能性がある場合は、ご加入の医療保険や、介護保険の場合は市区町村でお確かめください。

(出典:「高額介護合算療養費・高額医療合算介護サービス費の概要」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/content/000937919.pdf)および「高額療養費制度を利用される皆さまへ」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken13/dl/100714a.pdf)を元にライフプラン・シム作成)


介護サービス費等の負担限度額の改正
拡大可

 令和3年(2021年)8月から、高所得者に対する介護サービス費の自己負担限度額が引き上げられました。具体的には、これまで介護サービスの利用者または同一世帯の65歳以上の方に住民税が課税されている場合については、一律で月額44,000円が自己負担の上限額として設定されていました。しかし、令和3年8月からは、課税所得が380万円(収入では約770万円)以上、690万円(収入では約1,160万円)未満の方は、自己負担の上限額が月額93,000円に、課税所得が690万円(収入では約1,160万円)以上の方は、自己負担の上限額が月額140,100円に引き上げられました。これらの上限額は、同一世帯に介護サービスを利用される方が複数人いらっしゃる場合はその合計額(世帯合計)に対する上限となります。なお、課税所得とは、所得(例えば公的年金収入から公的年金等控除額を差し引いた金額や、配当所得などの合計金額)から基礎控除や配偶者控除、社会保険料などの所得控除を差し引いた、住民税が課税される対象の金額のことを言います。

 また、介護保険施設(介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、介護医療院)を利用される方の食費や住居費については、介護サービス費用に含まれませんが、低所得の方への助成(補足給付)があります。今回、助成が受けられる要件の預貯金基準額が見直されると共に、食費の負担限度額が見直されました。具体的には表に示すように、収入金額に応じて助成が受けられる預貯金の基準額が引き下げられ、これまでより厳しくなりました。また、住民税非課税対象者で、老齢福祉年金を受給されている方や生活保護を受給されている方を除き、収入金額に応じて食費の負担限度額(日額)が引き上げられました。補足給付の対象でない方は、施設と利用者の間の契約により定められており、今回の改定で、平均的な費用の額(基準費用額)は、日額1,392円から1,445円に見直されていることから、契約金額が見直しされる可能性があります。

(出典:「介護保険施設における食費・居住費と高額介護サービス費の負担限度額が令和3年8月1日から変わります」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/content/000778218.pdf) を元にライフプラン・シム作成)


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