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89

相続税の控除、評価額と節税


 2023/03/10

 [税金]

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配偶者の年収の壁


 2023/03/01

 [ライフプラン]

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リスキリングを支援する給付金


 2023/02/24

 [ライフプラン]

86

確定拠出年金の賢い受け取り方


 2023/02/17

 [年金・退職金]

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過剰な保障を防ぐ収入保障保険


 2023/02/10

 [保険・医療]

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大学などの修学支援新制度


 2023/02/03

 [子育て・教育費]

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10年国債金利(長期金利)の推移


 2023/01/06

 [資産運用]

7件/全110件

相続税の控除、評価額と節税
拡大可

 国税庁によると、令和3年の被相続人の数(死亡者数)は約150万人、そのうちの9.3%において相続税の申告がなされ、納税した相続人は約30万人とのことです。相続財産が一定以上ある場合には、10ヶ月以内に相続税の申告を終えて、相続税を納めなければなりません。ここでは、そんな時に備えて相続税の課税遺産総額(課税対象額)の求め方と、それを踏まえてどのような節税の方法があるかを簡単に説明します。親の相続のみならず、自分の死後に配偶者や子どもが相続する場合に、財産をどう残すかを考えるきっかけになれば幸いです。

(1)法定相続人の定義

 まず、課税遺産総額の計算に大きくかかわる、法定相続人について整理しておきます。遺言や遺産分割協議などにより、実際に相続する人と法定相続人が必ずしも一致しない場合もありますが、法定相続人は法的に相続が認められた人で、その人数は、ここでは相続税を計算する上で用いられる数と認識しておいてください。

 法定相続人は、相続の優先順位によって決定されます。配偶者は常に相続人であり、それに加えて、①子、②直系尊属(父母、直系の血族)、③兄弟姉妹、の優先順位で、順位が上位の相続人がいない場合に次の順位が相続人となります。ただし、①③で子、兄弟姉妹が死亡などで相続時にいない場合には、孫(死亡などで相続時にいない場合はさらにその子孫)、甥、姪が代襲相続します。また、②で父母が死亡などで相続時にいない場合に限り、祖父母(さらにその直系の父母・・)が法定相続人となります。

 なお、非行などにより、民法上の相続の資格を欠格した相続人と、被相続人が予め家庭裁判所に排除の請求をした相続人は、法定相続人にカウントしませんが、欠格、排除された相続人に子がいる場合は代襲相続人としてカウントされます。逆に、相続を放棄した相続人は、放棄が無かったものとカウントされますが、代襲相続はありません。胎児や非嫡出子(婚姻外の子)も相続の権利を有し、カウントされます。また、養子も実子と同等の権利を有しますが、法定相続人としては、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までカウントされます。その他の例についてはここでは割愛します。

(2)相続財産への加算対象と減算対象

 相続財産の対象としては、被相続人が相続時点で所有していた、金銭に見積もることのできる全ての財産と、死亡により相続人が受け取ることのできる死亡保険金、死亡退職金などがありますが、相続時清算課税による贈与があった財産についても相続財産とみなされます。また、相続開始前3年以内に行われた贈与についても同様で、どちらも贈与時点での価格(評価額)が加算され、納税済みの贈与税があれば、相続税から控除、還付されます。

 一方、相続財産から減らせるものとして、債務と葬儀費用があります。債務については、借入金や未払金の金額を、債務を相続する人の相続財産から減算することができます。もし、相続財産を合計して債務超過が確定しているのであれば、相続放棄をすることができ、債務超過が懸念される場合には、相続人全員一致の選択として、相続財産の範囲で債務を弁済する限定承認を選ぶこともできます。なお、相続放棄、限定承認は、相続から3ヶ月以内に家庭裁判所へ届け出る必要があります。

(3)死亡保険金控除、死亡退職金控除

 相続税には、遺族の生活を一定程度保障するための非課税控除があります。死亡保険金と死亡退職金にはこの控除があり、法定相続人の数をn人とすると、それぞれから最大で500万円×nを控除することができます。死亡保険金の受取人が複数の場合は、死亡保険金額の比率で控除を按分します。死亡退職金も同様です。

 なお、死亡保険金、死亡退職金は、遺言で受遺者(遺産を受け取る人)を指定していなくても、保険契約や雇用契約などで指定された受取人に全額を相続することができ、遺言の代わりにもなります。したがって、遺産分割協議の対象ではない相続財産ということになり、みなし相続財産と呼ばれます。それぞれの相続人が受け取る死亡保険金、死亡退職金から、按分した控除をそれぞれ差し引いて残った額を課税価格と言い、相続人ごとの課税価格の合計が、相続税を求める基礎となります。

(4)相続税評価額と特例

 (3)の控除以外で課税価格を時価よりも減らせるものとしては、不動産の相続税評価額があります。土地については、相続税評価額が公示価格(取引の指標)の80%を目安に定められています。また、家屋を建てて賃貸をしている土地(貸家建付地)では、自用地評価額から賃貸部分の評価額を減らすことができます。この評価減は、借地権割合(貸家が建つ土地の割合)×借家権割合(一律30%)×賃貸割合(課税時期に賃貸されている床面積の割合)になります。建物については、居住用でも賃貸用でも固定資産税評価額で評価されますが、居住用家屋の一部を賃貸している場合は、借家権割合×賃貸割合分の評価減を受けられます。

 さらに、課税価格を計算する際に、小規模宅地等の特例として、被相続人の居住用宅地の330m2までと、事業用宅地の400m2までについては、配偶者や要件を満たす親族などが相続する場合には、相続税評価額の80%を減額することができます。同様に、賃貸アパートなどの貸付事業用宅地については、200m2までが50%を減額することができます。

(5)基礎控除と特例

 最後に、課税価格の合計から、基礎控除として3,000万円+600万円×nを控除することができます。控除後の課税遺産総額を、法定相続割合で按分して、それぞれに相続税率を掛けて相続税額を求め、合算します。さらに、合算した相続税額を、実際にそれぞれの相続人が相続する財産に相当する課税価格の比率で按分したものが、相続人それぞれが納税すべき相続税額となります。

 ここで、配偶者が相続する財産については、法定相続分か1億6,000万円のどちらか多い金額まで、相続税を非課税とする税額軽減の特例があります。また、未成年の法定相続人が課税される場合には、未成年者控除として10万円×(18歳-年齢)が税額から控除されます。一方で、配偶者と子(代襲相続人を含む)、父母以外の相続人、例えば兄弟姉妹や孫などが相続人の場合は、税額が2割加算されます。

 なお、先の小規模宅地の特例、配偶者の特例を利用する場合は、適用することで税額がゼロになったとしても、申告は必要ですので注意してください。また、遺産分割が成立して、相続分が確定していることも適用の要件となっています。

(6)相続対策

 以上より、純粋に節税の観点での相続対策としては、控除額を増やす、相続財産そのものを減らす、課税価格(評価額)を減らす、税額を減らすなどがあることが判ります。

 最も取り組みやすい方法としては、資産を分割して早めに生前贈与を行い、相続財産を減らすことです。住宅取得等資金、教育資金、結婚・子育て資金について、直系尊属からの一括贈与の一定額が非課税になる特例や、暦年贈与での110万円の基礎控除がありますので、最大限利用して世代間の資産移転を進めるとよいでしょう。

 課税価格を減らすには、資産を不動産として所有することも効果があります。ただし、小規模宅地の特例を適用したいのか、できるのかはよく確認してください。また、税額を減らすには、(5)で述べた配偶者の税額軽減を利用する方法があります。ただし、配偶者に相続財産を集めると、配偶者の相続の際に、逆に課税価格が大きくなったり、法定相続人の人数が減って控除や遺産分割のメリットが薄くなるため、トータルでお考え下さい。

 控除額を増やす方法として、法定相続人ではない孫などを養子にする対策もよく言われますが、法定相続人としてカウントできる人数に制限があったり、代襲相続人でない孫が養子になった場合には、税額が2割加算されるなどのデメリットもあるため、こちらも事前によくお確かめください。

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「過剰な保障を防ぐ収入保障保険」

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「配偶者の相続税の減額」

(出典:「相続税のあらまし」(国税庁)(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/sozoku-tokushu/souzoku-aramashih30.pdf)、
「令和3年分相続税の申告事績の概要」(国税庁)(https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2022/sozoku_shinkoku/pdf/sozoku_shinkoku.pdf)を元にライフプラン・シム作成)


配偶者の年収の壁
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 グラフは、本サイトのライフプランシミュレーションで実際に求めた、「配偶者の給与収入と世帯の手取り」の関係を示しており、配偶者の年収100万円を基準として、そこからの差分で表しています。条件として、世帯主が主たる給与収入者で、配偶者の生計を維持しているものとします。

 配偶者の給与収入には大きく3つの壁があります。1つ目の壁は年収100万円(所得45万円)と年収103万円(所得48万円)で、「税金の壁」です。住民税には均等割と所得割があり、自治体によって均等割は低所得者でも課税される場合がありますが、所得割部分は年収100万円(所得45万円)まで非課税で、これを超過すると課税され始めます。一方、所得税は年収103万円(所得48万円)まで非課税で、これを超えると課税され始めます。

 2つ目の壁は年収106万円と130万円で、「社会保険料の壁」です。配偶者が働く条件として、①週所定労働時間および月所定労働日数がフルタイムの3/4以上の場合、もしくは、②週所定労働時間が20時間以上、月額賃金が88,000円(年収105.6万円相当)以上、2ヶ月を超える雇用の見込み、学生ではない、従業員数101人以上(2024年10月からは51人以上)の企業で働いている、などの条件を全て満たす場合には、社会保険に加入しなければなりません。本サイトのライフプランシミュレーションでは、①や②の労働時間などの条件はすべて満たすものとして、賃金だけで判定しているため、年収106万円以上では手取りが大きく減少します。なお、他の年収の壁は、給与収入以外の年金収入や事業収入、不動産収入なども含まれますが(判定は所得金額)、106万円だけが給与収入に限られます。

 一方、①②のどちらも満たさないケースで、年収130万円未満(かつ、世帯主の収入の1/2未満)であれば世帯主の扶養家族となり、健康保険、厚生年金保険などの社会保険料がかかりません。しかし、130万円以上になると扶養家族でなくなり、配偶者が自ら社会保険料を支払わなければならなくなります。したがって、年収106万円では手取りが減らなかったケースでも、年収130万円で大きく減少することになります。106万円ではなく130万円で壁が現れるケースは、配偶者が自営業者やフリーランスなどのケースも含まれます。ただし、この場合は収入から必要経費を除いた所得が130万円です。

 3つ目の壁は年収150万円(所得95万円)と年収202万円(所得133万円)で、「配偶者控除の壁」です。世帯主の所得と配偶者の所得の組合せで配偶者控除額が決定されており、世帯主の所得900万円以下、配偶者の年収103万円(所得48万円)以下で配偶者控除38万円を満額として、世帯主の所得1,000万円超、配偶者の年収202万円(所得133万円)超では、配偶者控除はゼロとなります。その間では、世帯主の所得が50万円増えるごと、配偶者の年収(所得)が5万円増えるごとに、配偶者控除が満額から徐々に減額されます(これを配偶者特別控除と言う)。世帯主の所得が900万円以下の場合、配偶者の年収が150万円までは配偶者特別控除が38万円ですが、年収が5万円増える毎に配偶者特別控除額が段階的に減額され、年収202万円(所得133万円)を超過すると控除はゼロになります。グラフでは、この段階的に減少する効果により、なだらかに手取りが減っていき(傾きが徐々に減っていく)、心理的な壁は感じにくいと思われます。

 3つの壁の中では、2つ目の「社会保険料の壁」が最も大きく、いわゆる「年収の壁」にあたります。少子高齢化対策として、社会保険の加入要件を緩和して、多くの事業所、多くの被雇用者から広く保険料を徴収する方向で、年収106万円を超えると加入となるケースが今後益々増えると思われます。年収の壁を意識して労働時間を抑えることが労働力不足に繋がりかねないことから、政府は2023年10月から「年収の壁・支援強化パッケージ」の適用を開始しました。社会保険料の壁を越えて手取りが減少する分を、事業者を通して3年間で最大50万円支援したり、一時的な収入増であれば最大2年間は扶養家族から外れない、などの対策です。時限措置ですが、2年の間に根本的な対策を検討することとしています。国会でも議論になっていますが、今後、どのような対策が打たれるのか、注目していきましょう。

 なお、ライフプランシミュレーションでは、社会保険への加入要件の細かな判定までしておらず、時限的な支援強化パッケージにも対応していませんが、グラフにあるように詳細に計算することができますので、短期的な視点にとらわれず、長期的な視点で何がベストなのか、ライフプランシミュレーションを通して納得できる働き方を検討してみるとよいでしょう。
(2024/2/28 下線部加筆修正)

(出典:「家族と税」(国税庁)(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/02_2.htm)、
「パート・アルバイトの皆さんへ 社会保険の加入により手厚い保障が受けられます。」(政府広報オンライン)(https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201607/2.html)、
「年収の壁・支援強化パッケージ」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/stf/taiou_001_00002.html)を元にライフプラン・シム作成)


リスキリングを支援する給付金
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 国会では政府が、5年間で1兆円の人材投資を行い、リスキリングによる産業構造の変革と、それに伴う賃金の改善を促すことが議論になっています。今後の具体的な施策(「リスキリングによる転職の支援」 参照)が気になりますが、現在、雇用保険で行われている、キャリアアップ、キャリアチェンジのための教育訓練の受講(以降「リスキリング」と言い換えます)を支援する「教育訓練給付制度」が強化され、受講が促進されると思われますので、この制度について整理しておきましょう。

 「教育訓練給付制度」は、一定の要件を満たす雇用保険の被保険者もしくは離職者がリスキリングをする際に、受講費用の20%~最大70%の給付金が受けられる制度です。教育訓練は、それによって取得できる資格の求人率、専門性の高さなどにより、一般教育訓練(”一般”)、特定一般教育訓練(”特定”)、専門実践教育訓練(”専門”)の3つに区分されており、それぞれ厚生労働大臣の指定を受けた教育訓練講座が給付の対象となります。なお、雇用保険の要件を満たさない離職者や、フリーランス、自営業の人、パートタイムなどで収入や資産が一定以下の人が、再就職や正社員などを目指す際に、10万円の給付と無料の職業訓練が受けられる「求職者支援制度」もありますが、ここでは説明を省略します。

 ”特定”は、主に業務独占資格などの取得を目標とする講座が対象で、社労士、税理士、FP技能検定、宅建などの専門的サービスの資格、輸送・建設機械などの運転資格の講座が含まれます。”専門”は、同様に業務独占資格などの取得を目標とする講座が対象で、看護士、介護福祉士、保育士、美容師、理学療法士などの医療・社会福祉・保険衛生関係の資格の講座が含まれます。それ以外にはIoTやAI、データサイエンスなどのIT関係の資格の講座が対象になっています。”一般”には、語学力、事務能力、ITなどの検定、大学院課程などが含まれます。詳細は「教育訓練給付の講座指定の対象となる主な資格・試験など」(厚生労働省) https://www.mhlw.go.jp/content/001214214.pdf をご覧ください。(2024/2/27 参照先修正)

 図は、「教育訓練給付制度」の全体像を示したもので、給付金が受給できる雇用保険の要件と、それぞれの区分での受講費用に対する給付割合や上限額を示しています。雇用保険の要件では、過去に給付金を受給したことがある人は、その後の雇用保険の加入期間が3年以上(空白期間が1年未満であれば、複数事業所の雇用期間の通算可能)必要ですが、初めて給付を受ける人は、”専門”が2年以上、それ以外は1年以上の加入期間があれば給付を受けられます。また、要件を満たす被保険者が離職した場合、1年以内に受講すれば給付を受けられます。年齢で見ると、65歳以上の高年齢被保険者および被保険者だった人で、要件を満たす人も対象になります。一方、失業中の45歳未満の人が、通学制の”専門”を受講する場合には、基本手当の支給期間終了後、受講中は基本手当の80%が支給される「教育訓練支援給付金」があります。これは、2022年度末までの受講開始が条件の時限措置でしたが、2025年度末まで延長されています。

 給付割合とその上限額では、”一般”が20%(上限10万円/年)、”特別”が40%(上限20万円/年)、”専門”が50%(上限40万円/年×最長3年)となっています。また、”専門”については、就業中であれば資格取得後、離職中であれば資格取得後1年以内に就職した場合に、20%(上限16万円×最長3年分)の追加給付が受けらることから、併せて最大で70%の給付が受けられます。なお、”専門”は、10年間での総給付額にも上限があり168万円ですが、法令上4年以上の教育訓練についてのみ最長4年、上限224万円まで引き上げられています。

 対象の講座は、「厚生労働大臣指定教育訓練講座 検索システム」 (https://www.kyufu.mhlw.go.jp/kensaku/) で検索でき、手続きはハローワークで行います。手続きの詳細は、ハローワーク インターネットサービス(URLは出典を参照)で確認してください。適性や興味は大事ですが、職種転換する場合は、その職種の求人は多いか、賃金水準は希望通りかなども良く調べて、希望に合った教育訓練を探してください。

(出典:「教育訓練給付制度」(厚生労働省) (https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/kyouiku.html) 、
「教育訓練給付制度」(ハローワーク インターネットサービス) (https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_education.html)を元にライフプラン・シム作成)


確定拠出年金の賢い受け取り方
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 確定拠出年金には、企業型(DC年金)と個人型(iDeCo)がありますが、どちらの場合でも一時金として受け取る方法と、年金で受け取る方法があります。その受け取り方によって、税金や社会保険料が変わってきますので、それを知った上で判断されると後悔が無いと思います。

 一時金として受け取る場合は、退職所得として他の所得と分離されて扱われ、退職所得控除を受けられます。さらに控除後の1/2の金額に対して所得税、住民税が課税され、社会保険料は課せられません。退職所得控除は、勤続年数(端数切上げ、確定拠出年金の場合は加入(掛金の拠出)年数)に比例して増え、勤続年数が20年を超えると傾きが大きくなりますので、勤続年数が長いほど、一括で受け取ることで税額を抑えられる可能性があります。

 さらに、一時金の場合、退職金の受取り時期によって控除が異なります。退職金と同時に一時金を受け取る場合には、退職金と一時金を合算した額が退職所得となり、勤続年数と加入年数のどちらか長い方が適用されます。例えば、勤続年数の方が長く40年の場合は、40万円×20年+70万円×(40年-20年)=2,200万円が退職所得から控除されます。なお、退職金と確定拠出年金が控除額以下であれば同時に受け取るのが良いと言えますが、控除額を超えて課税される場合には、退職金を受け取った翌年以降に確定拠出年金の一時金を受け取ると、同時に受け取るよりも節税になる場合があります。確定拠出年金は受け取った年の退職所得として税額計算されるため、退職所得控除は受けられなくても、退職所得が2年に分割されることで税率が低く抑えられる場合があります。なお、確定給付企業年金(DB年金)の場合は、翌年以降に受け取っても退職金と同じ年の所得として見なされるため、そのような効果はありません。

 一方、退職金を受け取った後に、何年かして確定拠出年金を一時金で受け取る場合で、一時金を受け取った年の「前年以前19年以内」※に退職金を受け取っている場合には、退職所得控除から重複期間(端数切捨て)に相当する控除額を差し引かなければなりません。例えば、確定拠出年金の加入年数がトータル20年とすると退職所得控除は40万円×20年=800万円ですが、その5年前に退職金を受け取っていて、退職後も一時金を受け取るまで確定拠出年金に加入していたとすると、15年間の勤続年数が重複していることになり、15年の勤続年数に相当する控除40万円×15年=600万円を差し引いた800万円-600万円=200万円が実際の控除額になります。控除額を増やしたい場合は、退職後も少額でも掛金を拠出し続けることです。運用期間が増えただけでは控除されません。

 ただし、前年以前19年以内に退職金を受取った場合でも、退職金が退職所得控除よりも少ない場合には、受取った退職金から逆算してみなし勤続年数を求め、重複期間を短縮することができます。具体的には、退職金が800万円以下の場合は退職金÷40万円で、800万円を超過する場合は(退職金-800万円)÷70万円+20年(端数は切り捨て)でみなし勤続年数を求めます。就職の日からみなし勤続年数までの期間と確定拠出年金の加入期間の重複期間を、確定拠出年金の所得控除の計算に用いることができます。(2023/7/18 追記)

 年金として受け取る場合には、公的年金と同様に扱われますので、雑所得に合算されて公的年金控除が受けられ、それを超える分は、他の事業所得、不動産所得などと合算して所得税、住民税が課税されます。また、社会保険料も課せられます。どちらの受け取り方法を選ぶかは、まとまったお金がすぐに必要か必要でないかと、他の退職金や年金との兼ね合いでどれが最も節税になるかが焦点になります。

 以上、節税の観点からは、退職金と確定拠出年金を合計して、退職所得控除額以下であれば、退職金と一緒に一時金で受け取るのがよいと言えるでしょう。退職所得控除を超えている場合は、退職金と一時金を別の年に受け取った方がよく、資金に余裕があれば、公的年金受給までのつなぎとして年金で受け取るとさらに節税になる場合もあります。また、確定拠出年金額が多ければ、つなぎの期間を増やし、老齢年金を繰下げ受給して増やしてもよいでしょうし、公的年金が少ないのであれば、退職後も加入期間をできるだけ増やして運用し、公的年金を補ってもよいでしょう。いずれにしても、個々のケースでどのような受け取り方が最適か、ライフプランシミュレーションで確認するとより安心です。

※令和4年3月31日以前は「前年以前14年」が適用された。また、退職金を続けて受け取る場合は「前年以前4年」が適用される。先に確定拠出年金の一時金を受け取り、後に退職金を受け取る場合は「前年以前4年」が適用される。

(出典:「No.2735 同じ年に2か所以上から退職手当等が支払われるとき」(国税庁)(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2735.htm)、
「No.5231 確定給付企業年金等に係る課税関係」(国税庁)(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5231.htm)を元にライフプラン・シム作成)


過剰な保障を防ぐ収入保障保険
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 世帯の主たる収入者(ここでは世帯主とします)に万一のことがあった場合、残された家族の生計を維持するために、生命保険を検討されるでしょうし、すでに加入されている方も多いと思います。若い人ほど、そのような確率は低くなるものの、子どもの養育費や配偶者の長い人生を支援するためには、多額の生命保険に入らなければならないのが現実です。最も一般的な生命保険としては、一定期間、一定の保険金を保障する掛け捨ての”定期保険”がありますが、保険金額が高くなるほど保険料も高くなるため、家計と相談して保険金額を減らしたりしているのではないでしょうか。

 実際には、世帯主の年齢が高くなるにつれて、残された家族が生涯で不足する総額は減少していきます。実際の例は「ライフプランシミュレーションの活用事例」~世帯主に万一のことがあった時の遺族年金はいくらもらえるか~ をご覧ください。そのような傾向に合わせて、年々保障額が一定に減少していくのが”収入保障保険”の特長です(上段のイメージ図)。”収入保障保険”は被保険者が死亡した時点から毎年一定の年金額を保険期間の満了時まで受取るため、死亡年齢が高くなるほど保障金額が減少します(ただし、1年、2年、5年などの最低保証期間あり)。また、死亡保険金を分割して受取ることもあり、一般的に、同等の”定期保険”よりも保険料を抑えることができます。終身保険に付加される特約と、単独の保険商品があり、なかには、非喫煙者やBMI値、血圧値などが良好で健康な方には保険料が割引かれる保険もあります。通常は、被保険者が死亡または高度障害時に支払われますが、身体障害状態や要介護状態で支払われる保険などもあります。

 ただし、若い時の支出の状況を細かく見ると、子供の成長に従って支出が増えるため、毎年一定の年金受給では一時的に赤字になる場合がありますので注意が必要です。他にも思わぬ出費があるかもしれませんので、そのようなことが危惧される場合は、総額は90%前後に減少するものの、保険金を一時金として一括で受取ることも検討されるとよいでしょう。また、子どもが独立した後は、万一の場合でも貯蓄と遺族年金などの収入で賄えるようになることもあります。実際にそのようになれば、途中で保険を解約して保険料を節約してもよいでしょう。なお、一般的に”収入保障保険”は掛け捨てで、解約返戻金はありません。

 次に、”収入保障保険”を受取る場合の税金についても触れておきます。死亡保険金を一時金として一括で受取る場合は、一時金に対して相続税がかかります。また、年金で受取る場合は、”年金受給権”を年金受取人が相続することになり、相続税がかかります。ここで、”年金受給権”の相続評価額は、(1)解約返戻金の額、(2)一時金として一括で受取る場合の額、(3)年金総額を予定利率の複利で現在価格に割戻した額、のうち最も大きい額となります。イメージ図の例において(2)が該当したと仮定して、世帯主が35歳時点の一時金が年金総額の90%だとすると、”年金受給権”は5,400万円となります。相続人が配偶者と子ども1人のケースでは、死亡保険金については法定相続人の数2×500万円=1,000万円が控除されるため、他に受け取る死亡保険金が無ければ、控除後の”年金受給権”は4,400万円となります。

 また、基礎控除として3,000万円+法定相続人の数2×600万円=4,200万円が控除されます。したがって、”年金受給権”4,400万円と他に相続財産があれば合算し、そこから基礎控除4,200万円を差し引いた残り(課税遺産総額)に相続税が課せられます。課税遺産総額がゼロでない場合は、一旦、法定相続人で課税遺産総額を按分してからそれぞれの相続税額を個別計算した後に合算します。死亡保険金の場合は受取人が全て相続するため、実際の相続額の比率に従って合算した相続税額が割り振られます。その上で、配偶者については相続額が(1)法定相続分の金額、(2)1億6,000万円、のどちらか大きい方まで相続税が非課税となる税額軽減特例があります。未成年者については(18歳-相続時の年齢)×10万円を税額から控除でき、例えば、子どもに割り振られた課税遺産額が1,000万円の場合の相続税は100万円ですが、相続時の子どもの年齢が8歳未満であれば、子どもにも相続税はかかりません。

 ただし、年金を受取る際には、相続税を課せられなかった部分については、2年目から雑所得と見なされて他の所得と合算され、所得税、住民税が課せられます。上の例では相続税評価割合が90%でしたが、このときの課税対象は年金総額の8%と定められています。下段のイメージ図に示すように、受給回数をn回とすると、8%の金額をn-1回で均等に按分するのではなく、2年目は最終年の1/n-1、3年目は2/n-1・・・となるように段階的に按分されます。つまり、保険契約期間の満了に近づくにつれ雑所得と見なされる額が増えていきます。また、支払った保険料総額のうち年金受給権に相当しない分(この例では10%)についても、それぞれの受給回の所得額に応じて按分して、経費として所得額から控除することができます。

(出典:「相続等により取得した年金受給権に係る生命保険契約等に基づく年金の課税関係」(国税庁)(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1620.htm)を元に、課税の説明部分について、ライフプラン・シム作成)


大学などの修学支援新制度
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 家庭の経済状況に関係なく、子どもが大学や専門学校などの高等教育を等しく受けることができるように、令和2年度から住民税非課税世帯などを対象として、新しい修学支援制度が開始されています。支援の柱は、返還する必要のない”給付型奨学金”と、入学金や授業料が免除、もしくは減額となる”授業料等減免”の2つです。

 ”給付型奨学金”は学生生活を送るための生活費として、日本学生支援機構から毎月一定額が学生に給付されます。表の金額は年額ですが、住民税非課税世帯(第1区分)の給付額は、進学先が大学・短期大学・専門学校か高等専門学校(4年次・5年次)か、国公立か私立か、自宅通学か自宅外通学かによって異なります。さらには世帯所得(第2,3区分)によって、給付額が第1区分の2/3、1/3に減額されます。また、給付型奨学金の給付対象者は、”授業料等減免”を受けることができ、進学先が大学、短期大学、高等専門学校(4年次・5年次)、専門学校のいずれか、国公立か私立かによって減免額の上限が異なります。さらには給付型奨学金と同様に世帯所得(第2,3区分)によって、減免額が第1区分の2/3、1/3に減額されます。

(注)世帯所得区分については、市区町村民税の課税標準額×6%-調整控除額が次の場合、第1区分:100円未満、第2区分:100円以上25,600円未満、第3区分:25,600円以上51,300円未満(課税標準額などは、マイナポータルなどで確認できます)

 なお、世帯の資産基準としては、生計維持者1人の場合は金融資産1,250万円未満、2人の場合は2,000万円未満となっています。また、支援制度の対象となる教育機関は、一定の要件を満たすことを文科省が確認した教育機関に限られますが、多くの教育機関が認定されており、文科省のホームページで確認できます。

 支援を受けるための手続きは、入学後(在学採用)であれば春と秋の年に2回申請する機会があります。春申し込みの場合は遡って4月分から、秋申し込みの場合は遡って10月分から支援が受けられます。ただし、入学金の減免は入学直後の申請に限られます。なお、給付型奨学金については、高校3年生もしくは高校卒業後2年以内であれば、進学前年の春に予約採用の申請をすることができます。

 給付や減免の対象者は、世帯の収入や資産による制限の他に、進学先で学ぶ意欲がある学生でなければならず、申請時には一定の学力基準を満たしていることが求められます。また、修学中に一定の出席率を満たさない場合や、単位修得数が標準に対して一定割合以下の場合や、修業年限(大学の場合は4年など)で卒業できないことが確定した場合などには支援が打ち切られ、退学や停学になった場合などには返還を求められることもあります。

 申請手続きや申込資格、学力基準などの詳細は、日本学生支援機構のホームページ(https://www.jasso.go.jp)で確認してください。

(出典:「高等教育の修学支援新制度」(文部科学省)(https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/hutankeigen/index.htm)を元に、ライフプラン・シム作成)


10年国債金利(長期金利)の推移
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 グラフは、我が国の流通市場における10年物の固定利付国債の、実勢価格に基づいて算出した半年複利金利(半年複利ベースの最終利回り)を表しており(ここでは以後、これを「長期金利」と言う)、上のグラフは1986年7月~約37年間の推移を、下のグラフは最近10年間の推移を拡大して表しています。

 長期金利は、市場の取引ベースの金利(市場金利)であることから、経済活動の状態を表すと言われています。景気が良ければ消費が活発になり、物価が上昇してお金の価値が下がり(インフレ)、多くの利息を払わなければお金が借りられないため金利が上昇します。逆に景気が悪くなると消費が停滞し、物価が下落してお金の価値が上がり(デフレ)、金利が低下します。また、長期金利は、固定金利の住宅ローンの基準金利として用いられたり、個人向け国債を始めとした債券の基準金利に用いられており、借りるにしても投資するにしても、非常に重要な指標となります。

 2013年以来、日銀の金融緩和政策により長期金利は下がり続け、2016年には国債を買い増して、市場金利である長期金利をゼロ金利誘導(イールドカーブ・コントロール)し始めたことで、実質ゼロからマイナス金利となります。しかし、その後も物価上昇率は目標の2%に達しない状態が長く続き、2022年のエネルギー価格の高騰からの世界同時インフレ、日米金利差による円安などの外的要因により、ついに長期金利が上昇し始めています。さらに、2022年末の日銀によるイールドカーブ・コントロールの目標金利の拡大(±0.25%→±0.5%)により、長期金利が目標金利の上限付近まで上昇しました。その後、上限は1%まで引上げられ、ついに、2024年3月にマイナス金利政策の解除、イールドカーブ・コントロールの撤廃を決め、長期金利は1%を超えるに至りました。(2024/5/31 追加)

 長期金利が上昇すると、借りる側からすれば、新たに借りる固定金利型の住宅ローンの金利が上昇し、仮に政策金利(短期金利)も見直されれば、既に借りている変動金利型の住宅ローンの金利も上昇する可能性があります。これまで、政策金利は長くゼロまたはマイナス金利が継続していたため、変動金利型住宅ローンを利用される方が圧倒的でしたが、金利の上昇局面においては、固定金利型の住宅ローンが有利となってくるため、今後の政策金利の動向によっては固定金利型を選択する人が増えてくる可能性があります。さらに、金利の上昇がピークを迎え、下降局面に転じれば、変動金利型が再び有利になってきます。

 預ける側、投資する側からすれば、個人向け国債や長期債券の金利が上昇する可能性がある一方で、借入金利が上昇することで、住宅の購入や、企業の新規事業投資や設備投資などが控えられ、業績が停滞、悪化し、株価が下落する可能性があります。金利上昇局面では、「変動10年」個人向け国債などが、さらに、金利の上昇がピークを迎え、下降局面に転じれば、固定金利の長期債券などが有利になってきます。

 一方、経済の状況は各国で異なるため、2022年の米国での急激なインフレにより米国債の長期金利が上昇し、日米での長期金利の差により、円が売られドルが買われたことで、30年振りのレベルの円安が進行しました。米国債の長期金利は、2022年10月~11月にピークを付けたかのように見えています。米ドル建ての高い固定金利の債券や貯蓄型の保険で長期に運用できれば、満期・償還時の円高による為替差損を超える収益も見込める可能性があります。ただし、手数料などのコストや信用リスクなどを含めてしっかり確認することが必要です。

 このように、長期金利を見ることでその国の経済状態が分かり、投資も一般的には、金利の下降から上昇局面では株式やREITが、上昇から下降局面では債券が高いパフォーマンスを得やすくなります。このような反対の動きをするポートフォリオを組むことで、景気変動による投資リスクを減らす効果があることもお分かりいただけるでしょう。

 長期金利は、金融機関などでも日々の値を公表しており、もう一つの経済指標である消費者物価指数(CPI)よりも早く、簡単に確認することができます。長期金利の動きに目を向けることが、経済を読み解く、言い換えれば金融リテラシー向上の一歩となります。

(出典:「国債金利情報」(財務省)(https://www.mof.go.jp/jgbs/reference/interest_rate/index.htm)のデータを引用してライフプラン・シム作成)


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